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第63話 二対で4 四対で8

(やっぱり4つあるな……)




 俺は黒い奴の身体の後ろに存在する尾肢(びし)という部位に異変を感じていた。


 この尾肢という部位は、黒い奴には原則(げんそく)一対(いっつい)で2つしか存在していない。


 それなのに、この黒い奴の身体には、二対(につい)で4つの尾肢(びし)が存在していた。


 これは(はね)(あし)の見間違えではなく、確かに4つの尾肢が、この黒い奴には付いていた。


 この黒い奴がこのような身体になっているのはこの黒い奴に突然変異が起きたから、という可能性を俺は思いついた。


 しかし、俺はその可能性をあまり受け入れられなかった。


 そもそも、俺がこの黒い奴の身体をじっくり観察しようと思ったのは、この前のクソデカ黒い奴を観察した時にもそいつの尾肢(びし)に違和感を(おぼ)えたのに、母親が来たことで観察を中断させられたので、それを確認するためにこいつを観察しようと思ったのだ。


 あの時のクソデカ黒い奴にも尾肢に違和感があった……つまり、尾肢の数が通常よりも多かったということであり、それ(すなわ)ち尾肢の数の異常は今観察しているこの個体だけでは無いということになる。


 つまり、そんな突然変異体(とつぜんへんいたい)が俺の元に偶然(ぐうぜん)2匹現れるとは考えにくく、そこに"何かしらの理由"が存在するのではないか?と考えたから、単一(たんいつ)個体の自然発生的な突然変異は可能性として受け入れられなかったのだ。


 そして、俺が"何かしらの理由"として考えるのは、この黒い奴の種類の通常が尾肢4つである可能性と、黒い奴の遺伝子を変異させてしまうような高濃度放射線を(はっ)するような場所がここら辺にある可能性の2つだと考える。


 後者(こうしゃ)の可能性であれば、そういった場所があるというデメリットがあったりするのだが……今考えたいのは後者ではなく、前者(ぜんしゃ)の可能性である。


 もし、この黒い奴の尾肢(びし)の数が4つであることが通常の形態(けいたい)であるとすれば、それはこの黒い奴の……否、この黒い奴の(しゅ)の特徴ということであり、こんなにも特徴的な容姿(ようし)を持った黒い奴であれば、その生息域(せいそくいき)が非常に限定的である可能性が生まれてくる。


 さらに言えば、クソデカ黒い奴にも同じように尾肢(びし)が3つ以上、おそらく4つ付いていたはずであり、そうなると、今観察している常識的なサイズの黒い奴とクソデカ黒い奴が近縁種(きんえんしゅ)()しくは同種(どうしゅ)である可能性が生まれてくる。


 つまり、ここら辺に生息(せいそく)する黒い奴には、巨大な身体と4つの尾肢という顕著(けんちょ)な特徴があることを意味している。


(同種だとしたら、この黒い奴って……もしかして、この大きさで幼体(ようたい)なのか?)


 俺は怖気(おぞけ)を感じた。


(いや、それよりも……)


 俺は怖気から思考を通常に戻す。


(もし、これらの予想が合っているのだとすれば、俺が今いる地域を特定できる手掛(てが)かりになるはず……なんだけど……)


 俺は急激(きゅうげき)(いきお)いを無くす。


(別に俺は昆虫博士じゃないから、そもそもこんな黒い奴の種類なんか知らないんだよな……)


 俺は自分の考えが机上(きじょう)空論(くうろん)であったことに思い(いた)ってしまった。




 俺は落胆(らくたん)する気持ちのまま、一応(いちおう)黒い奴の身体の観察を続けていると……


(ん?これ…………)


 俺は黒い奴の背中側ではなく、(あし)の付いている腹側の方を観察していたのだが……


 俺はその中で、尾肢(びし)よりも重大な異変を発見した。


四対(よんつい)……8……)


 奴の腹側には、6本の(あし)があった。


 しかし、その6本の脚を(かく)(みの)にするようにして、もう一対の小さな、それでもしっかりと脚としての役割を果たせるであろう大きさの2本の脚があった。


(これはっ……足が8本!?)


 俺は能力を初めて使った時に近いレベルの(おどろ)きをしてしまった。




 昆虫(こんちゅう)(あし)は6本である。


 これは生物の分類学上(ぶんるいがくじょう)原則(げんそく)だ。


 そして、8本の脚を持つのは、蜘蛛(くも)などの仲間である。


 ということは、こいつは昆虫ではなく、蜘蛛の仲間なのか?


 だが……




(蜘蛛って……(はね)無くね?)




 目の前の黒い奴にはしっかりと(はね)が付いていた。

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