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第62話 3回目の向上

 コットッコットッコットッコットッコットッ……




 天井と床から軽快(けいかい)な音が連続して聞こえる。




 ヒュゥゥゥゥ……




 部屋の一方から発せられた風が布を舞い上がらせる。




 ネズミを無事(ぶじ)討伐した日の日没前……


 俺は夕食を食べ終わると、日課の持久力検証と瞬発力検証を行っていた。




「102と……1、か……」


 俺は二つの検証を終えると、両者の結果を振り返っていた。


 その結果は……


 持久力が1865回の往復で、前回向上した時の1763回から102回の向上であった。


 瞬発力が前回向上した時は1度にも満たない角度の変化という向上であったが、今回は確実に1度以上の上昇をしていることが見て取れた。


 この検証結果と今朝(けさ)のネズミの討伐から考えれば、生物の殺害(また)はそれに起因(きいん)する俺の精神面の変化などが能力向上の原因である可能性がより高まる。


 俺は、クソデカ黒い奴を殺した後に能力が向上した時、奴との遭遇(そうぐう)も能力向上の可能性として予想した。


 しかし、その場合は奴との遭遇による俺の精神面の変化は可能性として残るが、遭遇それ自体の可能性が低くなることが今回の事で分かった。


 今回、ネズミとの間に起きた何かしらの出来事が能力向上の原因であるとすれば、黒い奴……つまり虫だけでなく、ネズミという哺乳類も能力向上の原因になる可能性が高いことになる。


 それは生物であれば能力向上の対象になり()るということにも繋がり、それ(すなわ)ち人間や植物との遭遇も能力向上の原因に当てはまることになる。


 つまり、これまでに俺は村長や両親といった他の人間、植物に会っているのに、その時に能力が向上していないことから、生物との遭遇は能力向上の原因になる可能性が低いと考えた。


(まあ、人間や植物は駄目だけど、他の生物は能力向上の原因に該当(がいとう)する、という可能性もゼロでは無いがな)


 ちなみに、生きている植物を殺害して能力が向上するかどうかについて試したことがある。


雑草(ざっそう)を引っこ抜く程度(ていど)のことだったがな)


 その結果は、変化無しであった。


(まあ、これに関しては特段(とくだん)気にすることでも無い。それどころか、能力向上の証明になる可能性がある)




 そして、今回と前回の能力向上について考慮(こうりょ)しなければならないことがある。


 それは成長期という可能性だ。


 前回のクソデカ黒い奴の後の能力向上と今回のネズミの後の能力向上、両者の(あいだ)は、たった数日しか()いていない。


 つまりは、前回と今回、能力向上が時期的に続くように起きたのは成長期的なものであったからという可能性があるということだ。


 なので、俺はこの可能性を否定するために1週間ほど、生物を殺害しない期間を(もう)ける。


(だが、成長期が原因だった場合は、半年ほど前に起きた最初の能力向上を説明しづらいから、おそらく……)






 そして、1週間が経過した。


 その間に持久力検証と瞬発力検証を引き続き(おこな)っていたが、やはり変化は見られなかった。


 俺はこの結果から、全ての可能性を(はい)した訳ではないが、成長期という可能性は考えから除外(じょがい)して、生物の殺害が直接的()しくは間接的な能力向上の原因になっていると考えることにする。


 そして、殺害が原因であると考えることにはしたが、色々と確認して確実にしたいことがまだまだある。


 なので、俺は離乳餌(りにゅうじ)作戦を継続(けいぞく)することにした。


 そして、作戦のための(えさ)は既に用意してある。


 ヒュゥゥゥ……


 俺は前回と同じ手順を()んで、作戦を開始した。




 今回の作戦は昼食から夕食までの4時間ほどである。


 そして、今回は1時間もかからずに獲物(えもの)()られて来た。


 カサカサ……カサカサ……


 獲物は、俺が能力を初めて使えるようになった時と初めて能力向上の時に現れた黒い奴と同じ大きさ同じ種類の黒い奴であった。


(今回もネズミが掛かった時と同じ餌を仕掛(しか)けたから、ネズミが掛かる可能性もある……というより前回黒い奴が掛からなかったのは餌が黒い奴の好みじゃなかったから、という可能性も考えたんだが、どうやら前回のネズミは本当に大物だったらしい)


 カサカサ……カサッ


 俺は奴が餌の置かれている部屋の隅まで到達(とうたつ)し、餌を食べ始めるためにその(あし)を止めたのを見ると……


 ビヒュンッッ!


 攻撃準備をしていた木の枝を()(はな)ち……


 コッッッ!!!


 黒い奴へと()()した。


 カ、サ……カササ……


 木の枝に突き刺された黒い奴は、木の枝が床の建材(けんざい)を強く貫通(かんつう)するほどの威力(いりょく)には届かなかったため、まだ生きていた。


 ただし、木の枝に刺されて身動きが一切(いっさい)取れていないが。


 ちなみに、今回フォークではなく木の枝を使っているのは、この部屋のフォークはあまり使われていない箪笥(たんす)()やしになっているものではあるのだが、それでも何本も消えたら不自然だし、そもそもフォークが何十本もある訳ではないので、その代わりとして、村長の家から帰る時に突き刺せそうな形の木の枝を拾っておいて、それを使ったのだ。


 ジジジュ……カサ、ジュジッ……


 そして、俺は奴へと突き刺さった木の枝を、奴の体をかき回す様に動かした。


 数秒ほど続けると、奴はその体の動きを止めてしまった。


 フワッ


 そして、俺は奴へと能力が使えるようになった。




(…………)


 俺は黒い奴の身体を観察していた。


 その身体は既に俺の能力によって、傷の見えない元の状態に近い形へと直されていた。


(……こいつ)


 そして、俺はその観察の中で、思い出すようにして奴の身体に異変を(おぼ)える。




(やっぱり、こいつの尾肢(びし)……4つだ)




 俺は黒い奴の一つの部位から異変を感じ取っていた。

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