表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/149

第60話 こじ開ける獣

 ギギギギギギギギ……




 どんどんと拡大しているのに、そこから入ってくる光が弱まっていく隙間(すきま)


 ガキッ!


 その現象(げんしょう)を引き起こしている存在が、(つい)にこの部屋へと侵入(しんにゅう)してきた。


 それは、作戦前から想像していた黒い奴らのような虫……


 ではなく……


「ヂュッ」


 "(けもの)"であった。




 ギギッ……ギギッ……


 自身の頭部(とうぶ)をこの部屋へと侵入させることに成功した獣は、一声(ひとこえ)鳴くと、頭部だけでなく、首から後ろの方も部屋へと入れようとし始めた。


(こいつは……)


 俺は部屋へと侵入してきた獣の頭を見ただけで、何であるのかを(さっ)した。


(……ネズミ)


 ネズミであった。


 しかし、このネズミは創作物などでデフォルメされて登場する、可愛(かわい)らしいネズミ……などではなかった。


 その目は真っ黒で白目が一切存在しないせいで表情を読み取ることができず、何を考えているのか分からない。


 その毛は繊細(せんさい)清潔(せいけつ)なものではなく(ざつ)で汚いものであり、前世では即害獣(がいじゅう)認定(にんてい)されるような見た目であった。


 俺はとんでもない大物が掛かったことを理解した。




 ギギギ……ギギギ……


 俺がそのネズミを観察している間にも、そいつは(すで)に自身の頭部(とうぶ)だけでなく、首と前足、胴体(どうたい)の一部をこの部屋の中へと侵入させることに成功していた。


(結構大きいな……25~30センチメートル(cm)くらいはあるんじゃないか?)


 俺は(あら)たに入ってきたそいつの部位の大きさから、そいつの体長を予測した。


(ドブネズミの最大サイズ、以上だな……)


 野良で生きているネズミの中で有名なドブネズミ、その最大級の体長は25センチメートル(cm)ほどであり、今この部屋へと入ろうとしているネズミの体長は、それと同等(どうとう)以上であると予測できた。




(これは難しい……というか、無理かもな)


 俺は今まさに侵入してきているネズミの討伐(とうばつ)へと思考を切り替えていたが、あいつの討伐には考慮(こうりょ)すべきことがあった。


(まず、あいつ……虫じゃないからな……)


 あのネズミはその大きさ以前に、虫ではなく獣であった……すなわち、体の構造(こうぞう)外骨格(がいこっかく)ではなく内骨格(ないこっかく)なのだ。


 もし、今まで通りフォークで討伐するのであれば、虫ならそいつの外骨格さえ(つらぬ)いてしまえば、後は外骨格よりも(やわ)らかい肉を貫くだけでいいが、獣の場合は皮膚(ひふ)を貫いたとしても、その体の中に無数に存在する内骨格を貫く必要がある、それに皮膚が柔らかいとも(かぎ)らない。


 つまり、もしフォークで貫けたとしても虫よりも衝撃(しょうげき)が弱まるし、最悪貫けない可能性もあるということだ。


 さらに、あいつの大きさまで考慮するのであれば、その肉厚(にくあつ)な体がフォークで貫くまでの障害(しょうがい)になってしまうため、貫通(かんつう)は少々無理がある……というより、おそらく能力の威力(いりょく)自体は奴を貫くに(あたい)するが、問題なのは能力の威力ではなく、フォークの耐久性(たいきゅうせい)だ。


 おそらく、能力の威力とあいつの体の耐久性で板挟(いたばさ)みになったフォークが奴を貫くよりも先に折れてしまう可能性があった。




 ギギギギッ……ギギギギッ……


 俺がフォークでは討伐できないかもしれないと考えている間にも、あいつはその体のほとんどを部屋の中へと入れ終えており、残すは臀部(でんぶ)のみとなっていた。


 そして……


 ギギギギギ…………ギカッ!


 (つい)にあいつはその体の全てを部屋の中へと侵入させた。


 この部屋への侵入を()たしたネズミ……一体何をするのか?


 カタッ…………カタカタカタカタ


 あいつはこの部屋の(すみ)……俺が用意した(えさ)が置かれている場所へと一目散(いちもくさん)()けだした。


 あいつの侵入目的など、俺が用意した餌に決まっている。


 カタカタカタカタカタ


 ネズミは餌へと素直(すなお)(おび)()せられる。


 カタカタカタカタ……


 そして、餌は目の前、もう直ぐありつける……


 その瞬間……


「まあ別にお前が来たから、どうということは無いがな」




 ドヂュバッッ!




 ネズミは忽然(こつぜん)とその姿(すがた)を消した。


 消える瞬間にあいつがいた場所から(にぶ)い音と甲高(かんだか)い音が同時に(ひび)いた。


 その場所には"(たな)"が置かれていた。

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「この作品を応援している!」


と思ったら


下にある【☆☆☆☆☆】から作品への応援をしていただけるとうれしいです!


あなたのお好きな☆の数で大丈夫です!


ブックマークもいただけると幸いです。


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ