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第44話 規則正しい傷

「ここが台所~」


 村長が一つの扉を開けた部屋には、石窯(いしがま)や木製の大きな箱、(まき)の束、木桶(きおけ)、数十個の木製の小物があった。


 この部屋は村長が言うように、台所であるらしく、石窯は炊事場、木製の大きな箱は水洗い場、木桶や小物も何かしらの調理に使われているようだ。




「ここが物置~」


 次に村長と訪れた部屋には、様々な家具や道具、何のか良く分からない物があり、それらは粗雑に置かれている物もあれば、整理されて置かれている物もあった。


 その様子は、正に物置であった。




「ここが寝室~」


 次の部屋は、一つのベッドと、棚と椅子が一つずつの、簡素で、寝るためだけの部屋であった。


(俺の部屋よりは断然広いが、大体似たような感じだな)




「ここが空き部屋~」


 次の部屋は、先ほどの物置と同じく人が居ない部屋だが、物はほとんど置かれておらず、あるのはベッドと棚だけであり、一つ前に見た村長の寝室と同じような機能を持つ部屋であった。


「ここは前村長の寝室なんだ」


 どうやら、この部屋は空き部屋となっているが、元寝室であるらしい。


「まあ~前村長が死んだから空き部屋になってるんだけどね~」


 この部屋の主は既に()っているらしい。


(前村長とか、その死とか、今の村長の年齢とか……普通ではなさそうな情報なんだが……)


 俺は、村長の事も無げな態度に戸惑っていた。




「ここがトイレ~」


 次の部屋は、トイレだった。


 ()み取り式のボットントイレだった……相変わらず、文明レベルが低い。以上。




「よしじゃあ、次に行こう~」


 そう言いながら、トイレの扉の前を去り、廊下を進む村長。


 俺はその後を追いかけた。


 ここまで、村長は自分の家の中をかなりテンポ良く紹介してくれた。


 テンポが良いのは村長の気質に()るところもあると思うが……


 俺も村長の説明を聞くだけで、質問とか部屋の中を注意深く観察とかせずに、部屋の中で留まることがないからでもある。


 そして、俺が村長を引き留めて各部屋に留まらなかったのには、理由がある。


(目的のやつがここに無かったら、どうするかなぁ……)


 それは村長の家に来た目的が、今までの場所には見当たらなかった上、なさそうな場所だったからだ。


 俺は未だに見つからない目的に、不安を抱いていた。






「ここが仕事部屋~」


 次に、村長に案内されて訪れた部屋は仕事部屋であるらしい。


(…………)


 仕事部屋には机が一つ置かれているだけであり、俺がそれを見つめる中、村長はその机へと歩いていった。


「この机はね、畑仕事が無い時に家で仕事をする時の仕事場所なんだ」


 村長は机の(そば)にまで行くと、それを見下ろしながら、その紹介をしてくれる。


 タッ……タッ……


 俺も村長と同じく、机の近くへと歩いていき、見ることにした。


 しかし……


「見えない」


 1歳児の俺の身長では、机を下から(なが)めることしかできず、机の上は見ることなど到底叶わなかった。


(見えねえな……んん……能力を使って、体ごと服を浮かせれば余裕で見えるんだけど……村長の目の前でできるわけないからな……)


 俺が机の上を見れないことに頭を悩ませていると……


「ん?ああ、そうだね……よいせっ。…………どう?ほら見えるでしょ?」


 村長が俺の(わき)に手を入れると、俺の(どう)を挟むようにして、俺の体を持ち上げた。


 それによって、俺の視界には机の上が映りこめるようになった。


(おう……見えるようになったな。とりあえず、村長に礼を言っておくか)


「あ……」


 俺は、机の上が見えるように持ち上げてくれた村長に礼を言おうとしたが、その行動と思考は止まった。


 俺の思考が、目の前に映ったものに、奪われたからである。


 俺の視界には、机上(きじょう)とそこに置かれた、十数枚の木の板が映っていた。


 ただ木の板が置かれているだけであれば、俺の思考が奪われた上、ここまで活発になることにはならなかった。


 その板には、細かな傷が(いく)つも付いており、それは……とても規則正しい傷だったからだ。




 俺は机上に置かれた十数枚の木の板の中で、自分に近い数枚の木の板を見ていた。


(これは……)


 俺は、これらの木の板……否、木の板に付けられた傷が、自分の求めていた目的に限りなく近いものであることを察した。


(規則性……連続……)


 木の板に付けられた傷は、規則正しく整然とした並びをしており、さらには同じような形の傷が多く付けられていることも分かる。


(これをアートと断言するには……)


 あまりにも、度の過ぎた綺麗さだ。


(これは、俺が求めていた物とほとんど同じものだと言っていい)


 俺はそれまで見ていた手前側の木の板だけではなく、奥の木の板も見ようと視線を伸ばしていった。


(でもまさか、ここまで文明レベルが低いとは……正直驚きだ……アレの代わりに木の板を使ってい……る、と……は……)


 机上の奥にある木の板まで見ながら、それらのことについて考えていた俺であったが……不意に視界に入ってきた物によって、俺の思考はまたもや劇的に移ろうことになった。


 この部屋に入ってきた時から村長に持ち上げられる前まで、この部屋では机しか見ることができなかった。


 それは、俺の身長では机に(さえぎ)られて見えなかったからだ。


 この部屋の扉と机を結ぶ線の延長上には、三段カラーボックスのような棚が一つ、置かれていた。


 棚の中には……




 紙の(たば)を革で()じたものが、1"冊"置かれていた。

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