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第41話 深い願いには軽い答え

「よし、じゃあ帰るよ」




 村長は立ち上がり、服を手で払いながら直し、帰り支度をするほどの荷物を持っていないようなので、直ぐに帰る準備が整う。


(早い……)


「……よし」


 村長は扉へと向かって帰ろうとした。


(帰るのが早い……今帰られるのは困る)


 俺は村長が扉を開けようと、手を掛けようとした時……


「あなたの家に連れて行って」


 俺は村長を引き留めた。




「…………?」


 俺の願いを聞いた村長は俺の方へと振り返ると、その顔を疑問に染めながら、固まっていた。


(今帰られるのは困るんだ、あなたが次いつ来るのか分からないからな……目的に今一番近づいている、だろうしな……)


 村長は固まった全身を少しずつ解きほぐすように、口を開いた。


「……私の家に連れて行って?」


 村長はその顔に怪訝(けげん)なものを浮かべながら、俺の言葉をオウム返しするように聞き返してきた。


(やば……いきなり帰るもんだから、少し願いの言い方が直球になってしまった……変に思われると面倒だな)


 俺は村長からの聞き返しを聞きつつも、その心は少し不安に染まっていた。


「なんで行きたいの?」


 そして、先ほどのオウム返しの聞き返しから続けるように、村長は俺に理由を(たず)ねてきた。


「今まで……あの部屋以外のところを、見たこと無いから……」


「あの部屋?」


 俺が理由を答えると、村長にはあの部屋という言葉が伝わらなかった。


「あの部屋っていうのは、俺がいつも寝て食べて住んでいる部屋のこと」


「ああ……君の部屋のことか」


 説明したら、直ぐに伝わったらしい。


 そして、俺は理由を続ける。


「さっきはあなたの家、って言ったけど……あの部屋とかこの家以外の場所を、いっぱい見てみたい」


 と、俺は理由を告げる。


 俺からの理由を聞き終えた村長は黙り込んでいた。


 すると……


「そういえば、スイが自分の部屋から出たのは初めてだったか?」


 俺の発言を聞いた父親が口を開いて、質問を投げた。


「ええ~初めてよ~」


 父親のその質問に母親が答えた。


「ああ、なるほど」


 母親からの答えを聞いた父親は、俺の願いの理由を理解できたらしい。


「あなた達の子……スイは勝手に部屋の外に出ないの?」


 先ほどまで黙り込んでいた村長が両親へと質問を投げかける。


「ん~……勝手にお部屋の外に出たのを見たことないし~スイも部屋の外に出たことは無いって言ってたし~……そもそも、あの部屋の扉の取っ手はスイじゃ届かない高さにあるから出られないわよ~」


 その質問に母親が否定で答えた。


(まあ、届かないけど……能力使えばほとんど距離関係ないから、普通に開けられるがな)


 俺は開けられない訳では無いことを、脳内で補足した。


「なるほど……」


 母親の答えを聞いてか、村長は黙り込むことをやめ、納得の表情を見せ始める。


「つまり……今まで、部屋に(こも)りきりにされてたから、色んな場所を見てみたい……そういうことでしょ?」


 納得の表情のまま、村長は俺に真意を問うてくる。


「そうなのか?」


 その質問に便乗するように父親も俺へと質問を投げかけてきた。


 俺は二人からの質問と、同じことを聞きたそうな母親からの視線を受けつつ……


「うん」


 一言、肯定で示す。


「なるほど、私の家に連れて行って欲しい、ってのはその好奇心や興味から少し飛躍(ひやく)した話だったんだね」


「うん」


 俺は新たに村長から投げられた言葉にも肯定でもって答えた。


「なるほどね……そうじゃなきゃ女性の家に行きたい、だなんて一歳にしてはませ過ぎだしね、アハハハハ!」


 村長は笑いながら、冗談交じりの発言をした。


 そんな村長のジョークに……


「はは……」


「あは~……」


 両親は苦笑い。


「…………」


 俺は無表情であった。


 そんな俺と両親の様子を見て、村長は、


「ハハハ!…………あれ?あんまり面白くなかった?」


 村長は笑いをやめて、ジョークの是非(ぜひ)を聞いてきた。


「……スイは良く喋るけど、まだ一歳だぞ」


 ジョークの是非については言うまでもなく、父親は俺の年齢を引き合いにした。


「ま、そりゃそうか、アハハハ!」


 父親の答えを受けて、何が面白いのか村長は笑った。




(で……結局連れて行ってくれるのかどうか、早く教えてくれよ)


 俺は笑っている村長を、内心で()かした。


「うん。いいよ、じゃあ早速行こうか」


 内心で急かしたことが伝わったのか、村長は笑うことをやめ、あっさりと連れていくことを承諾した。


「…………」


 急かしていた俺も、急に許諾(きょだく)されたので、つい黙り込んでしまった。


 ガチャ


「ほら、行くんでしょ。付いてきて」


 村長は片手で扉を開けると、振り向いて半身を俺に向けると、俺に付いてくるように言ってきた。


(…………あっさり、だな)


 村長のあまりのテンポの良さ……というより行動の速さに俺は呆気(あっけ)に取られていたが、止まる必要も無いので、付いていくことにした。


 キィィィ……


 (きし)みの音を響かせながら、扉が村長によって開かれた。


 タッ……タッ……


 そして、村長は廊下へと出ていく。


 俺はサクッと出ていった村長の後を追って廊下へと出た。


「…………」

「…………」


 そんな俺に続いて、俺よりも呆気に取られていた両親も付いてくるようにして部屋を出た。




 タッ……タッ……


 廊下に出た村長は、俺の部屋がある方向とは反対の方向へと廊下を進む。


 そして、そんな村長の足は廊下の床よりも10センチメートルほど低くなっている土間のような場所に降りていた。


(…………)


 土間には木製の農作業道具のようなものが置かれており、その他には何も無い殺風景な場所であった。


 俺が黙々と周りの情報を入手していると……


(…………っ)


 カァァァァ……


 土間が徐々に明るさを()びてきた。


 その明るさの元は、土間の一つの壁から発せられていた。


 さらにその壁は光を増していき、


 ついには……


 光となった。




「じゃあ、行こうか」




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