第19話 惑星系モデル
(……よっ)
俺は、近くに浮かせていた鞠を、動かす。
ヒュゥゥゥ……
鞠は、部屋の中で、大きな円を描き始める。
さらに、部屋の中をよく見てみると、鞠だけでなく、椅子や、棚の中に入っていた小物なども、鞠と同じように、円を描いてた。
そして、それら全ての円の中心には、棚があった。
棚は、その場で、回転していた。
(よし。完成したぞ。疑似惑星系モデル)
俺が、能力で、動かしてる物たちは、棚を中心に、円を描いてる。
それらは、棚の周りを回る惑星のようで、棚は、それらを自らの周りで回らせる恒星のようだ。
それらは、デフォルメされた、惑星系のように、見える。
(中々、楽しいな)
そんなものを、俺は、能力で作って、一見楽しんでいるように見える……というか、普通に楽しんでいるのだが、そういった楽しみとは別に、しっかりとした目的があって、惑星系モデルを作った。
その目的とは、能力で、同時に動かせる数、を調べることである。
俺が今、能力で動かしてるのは、棚と椅子、鞠、棚の中に入っていた小物数点、ベビーベッド、である。
つまり、この能力は、最低でも、十数個の物を同時に動かすことができる、ということである。
ヒュゥゥゥ……
俺は、惑星系モデルの動きを、維持する。
惑星系モデルを作ったのには、もう一つ、目的がある。
それは、どれだけ精密な動きをさせられるのか、という検証である。
結果から言うと、かなり、精密な動きをさせられる。
(というか、脳と神経を使って、自分の体を動かす時よりも、精密な動きをさせることができる)
(まあ、この体になってから、動いたこと無いけど)
(正直、これは、かなりすごい)
(同じことを、脳と神経を使って、自分の体で再現しようとしたら、俺の脳を使い潰しても、足りないくらいのことだ)
(でも、能力を使えば、さも当たり前のようにできる)
(例えるなら、ギター、ベース、ドラム、キーボードを両手両足だけでなく、新しく生えた第三第四の手足も同時に使って、一人で一つの曲を完璧に演奏するくらいのことが、余裕で出来るほどの精密さである)
ここまでは、この能力の良い面……
要するに、この能力で出来ること、ばかりを挙げてきた。
しかし、この能力が物を動かすことに関して、全能なのかと言えば、どうやらそうではないらしい。
この能力が、どこまで重い物を動かせるのか、については、部屋の中に大した重さの物が無いので、今のところ判明していない。
つまり、俺はこの部屋にあるものであれば、全て動かすことができる。
ただし、とある"者"を除いて。
とある者とは、"俺"だ。
能力を使っても、俺は、動くことができない。
俺に、能力を使っても、俺の体は微動だにしない。
使っても使っても使っても……俺の体は、一切、動かない。
それどころか、俺に、能力を使い続けると、謎の疲労感が出てくる始末なのだ。
(これについては、あの検証ができれば、なぜできないのか、分かるかもしれないんだけど……)
(いや、あの検証は、ダメ、だな)
(そして……)
俺は、自分を乗せてるベビーベッドを、前進させた。
前進する先には、惑星系モデルがあった。
…………スッ
俺は、ベビーベッドを、惑星系モデルの中心、棚のすぐ近くで、止めた。
俺は、惑星系モデルの中心に来たことで、惑星系モデルの半分が、"見えなくなった"。
すると……
グワンッ……グニャ……
突然、惑星系モデルが、雑で、拙い、動きをし始めた。
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