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第145話 馬の後ろは危険

 …………パッ




 俺は目を開く。


 チラッ……チラッ……


 俺は辺りを見回す。


(……居室(きょしつ)か)


 俺が目覚めた場所は、いつも俺が寝泊まりしている自分の居室だった。


(昼過ぎ……くらいかな)


 俺は小窓から差し込む光で現在の時間を把握(はあく)する。


 すると……


 タッ……タッ……


 扉の向こうから足音が聞こえてきた。


 ……ガチャッ


 足音の(ぬし)は俺の居室の前で止まると、扉を開けた。


 タッ……タッ……


 居室へと入ってきたのは家政婦長だった。


 タッ……タタッ


 家政婦長はベッドで横になっている俺のもとまで来ると……


「あら、起きましたか……おはようございます。早速ですが、自分の名前を言ってください」


 と聞いてきた。


「スイ、で御座(ござ)います」


 俺は疑問を(はさ)むことなく、即座に答えた。


「身分は?」


徴税官(ちょうぜいかん)見習いで御座います」


 次の質問にも答える。


「私の名前と身分を言ってください」


「フィーセ・リック様、家政婦長で御座います」


 別の質問にも答える。


「あなたの年齢はいくつですか?」


「6歳です」


「ではあなたの……」


 その後、数分間家政婦長から俺や周りの人間、近況などについての質疑応答が続いた。




「……で御座います」


 俺は質問に答える。


「結構です。……どうやら、記憶に問題は無いようですね」


 数分後、家政婦長はそう言う。


 そして……


何故(なぜ)、あなたは今こうなっているのか分かりますか?」


 家政婦長は現状について質問して来た。


 俺はそれに対して……


「詳しくは分かりません」


 否定で答えた。


「分かりました……では、説明するとしましょう」


 俺が分からないと答えると、家政婦長は説明をすると言う。


 そして……


「まず今回の顛末(てんまつ)について簡潔に伝えます……あなたは馬に()られました」


 家政婦長は、今回俺の身に起きたことを説明し始めた。




 家政婦長(いわ)く……


 俺が大通りの馬車が通る道へと出た時に、俺の近くを通っていた馬車馬の近くに陶器(とうき)が落ちたらしい。


 その陶器は激しい音を立てて割れた。


 それは俺も聞いていたから、分かっている。


 しかし、その音にびっくりしたのは俺だけでなく、近くを通っていた馬車馬もその音に驚いてしまった。


 その馬車馬は、陶器の割れる音に驚くと、(いなな)きをあげ……後ろ脚を蹴り上げた。


 そして、蹴り上げた先には俺がいた。


 俺は馬車馬に蹴られ……いや、思い切り蹴られてしまった。


 馬車馬に思い切り蹴られた俺は、地面に倒れ込むのではなく、空中へと飛ばされてしまった。


 通行人の(げん)によると、俺は10メートル(m)以上吹き飛ばされたらしい。


 10メートル(m)以上蹴り飛ばされた俺は、歩行者の上を通過してから、露店の(とばり)に着地する。


 しかし、露店の帳は俺を受け止めると同時に、俺をワンバウンドさせた。


 そして、俺は最終的に、露店の近くの壁に激突して止まったらしい。




「……ということです」


 家政婦長は俺の身に起きた事故について説明を終える。


「…………」


 俺は少し無言になるが……


「なるほど……お教え頂き(まこと)有難(ありがと)御座(ござ)います。一つ御聞きしたいのですが、その状況から私を御救いしたのはどちらの方なのでしょうか?できればお礼をさせて頂きたいのですが……」


 家政婦長にそう(たず)ねる。


「あなたをここまで運んできたのは兵士です。ですが、その兵士にあなたを渡したのは、あなたを蹴った馬車馬の(あるじ)です」


 家政婦長は答える。


「なるほど。でしたら、後でその兵士の方へ感謝を、馬車馬の主の方には感謝と謝罪をすることと致します」


 俺はそう言った。


「それが良いでしょう」


 家政婦長は賛成した。




「それと、体のどこかに痛みや違和感などはありますか?」


 家政婦長は質問してくる。


「いえ、自覚している限りでは御座(ござ)いません」


 俺は特に問題が無いと答える。


「……やはり、そうですか」


 家政婦長は確認するような納得を示した。


「ここにあなたが運び込まれた時、どのような治療を(ほどこ)す必要があるのかを調べる必要があったので、全身を調べさせて頂きました。しかし、あなたにはこれといった外傷が無かった。ですが、あなた本人にしか分からない不調やケガがあるという可能性が残っていました。しかし、それも無い、ということですか」


 どうやら、俺はあのような事態にあったのにも関わらず、ケガが一切無いらしい。


「外傷が無い時点である程度察していましたが、まさか無傷とは……」


 家政婦長はそう言いながら俺の体を見てきた。




「まあ、それよりも……」


 家政婦長は話を転換(てんかん)する。


「普通、馬の後ろに立つのは危ない、これは常識だと思うのですが……あなたは子供とはいえ知識に()んでいるだからそれくらい分かっている、と思っていました。いやそれとも、そういうところはまだ子供だと言うべきなのでしょうか?」


 家政婦長は今回のそもそもの事故発生原因について言及(げんきゅう)してきた。


「お恥ずかしい限りです」


 俺は家政婦長の言及に対して、無難(ぶなん)に答えた。


 だが……


(もちろん、俺も馬の後ろにいることが危ないことくらい知っている)


 内心では反論していた。


(しかし、あの時は人の波を()うようにして出た所が偶々(たまたま)馬の後ろで、偶然のように馬が蹴ってきたのだ。それに、馬車の通り道に出て直ぐに戻ろうとしたが、それよりも早く馬が蹴ってきた)


(まあだが……馬の後ろが危険だと知ってても、俺は現代地球の経験が染みついてるからな。馬の後ろが危険だと潜在的(せんざいてき)(ある)いは感覚的に理解できていなかったことが原因かもな)


(それに、火急(かきゅう)の用事が無いのにも関わらず、早く行こうとしたのも失敗だったな)


 俺は内心で言い訳と反省をした。




「幸い……というより奇跡的にケガも記憶障害も無いみたいですね。なので、明日の朝になっても特に問題が無ければ、明日も仕事へ向かうように」


 家政婦長は俺の具合いを確認すると、明日も仕事に行くように言ってきた。


承知(しょうち)致しました」


 俺は了承(りょうしょう)した。


 タッ……タッ……ガチャッ


 そして、家政婦長は居室から出て行った。




 家政婦長が居室からいなくなった。


 それを確認すると……




(やっぱ……保険って大事だな)




 俺はそう思った。


 チラッ


 俺は服と自分の皮膚の間を見る。


 その間には特に何も無いように見える。


 だが……俺は極限まで目を()らしてみる。


 すると……




 そこには、透明な何かが俺の体中に()(めぐ)らされているのが見えた。

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