第144話 蝶の羽ばたきは竜巻を起こす
サッ……サッ……タッ
俺は邸宅の外に広がる草原エリアから、街のエリアへと来る。
ドリトとエートィにプレゼントを渡した後、俺は図書室で本を読むのではなく、街へと出て来た。
今は昼前くらいの時間になっていた。
タッタッタッタッ
俺は大通りへと向かって、歩いた。
(順調~順調~)
俺は街の中を歩きながら、そう思っていた。
タッタッ……タッ……タッ……
(ん……多いな)
俺は、草原に隣接している場所から、大通りへとやってきた。
しかし、その大通りの人口密度が高くなっていた。
(これは……まあいいか、ここを通るとしよう)
俺は人通りが多くなった大通りの中へと入っていった。
タッ……タッ……タッ……
(……進まない)
だが、人通りが多くなっているせいで、俺の歩みはどうしても遅くなってしまった。
(もう少し早く歩いて欲しいんだがなぁ)
俺は、道が進まないことに煩わしさを感じていた。
(……しょうがない、少し品が無いけど抜けることにするか)
俺はそう思うと……
タッ、タタッ……タタッタタッ、タッタッタッ……
自分の体の小ささを活かして、通行人同士の足の間を抜けるように進んだ。
(おっ、意外といけるものだな……小さい体というのも便利なものだ)
タッタッ、タッ、タタッ……タッ……タッタッ……
俺は人の間を縫うように前へ前へと進んでいく。
タタッ……タッ……タタタッ、タッタッタッ……
俺は人の間を縫うように進むのを数分ほど続けた。
すると……
……カタッカタカタカタカタッ
馬車が通る音が聞こえて来た。
(あれ?これは……)
俺がそう思った瞬間……
タッ……タタッ
カタカタカタカタ……
俺は歩行者が通るエリアから、馬車が通るエリアへと出た。
(んん……まっすぐ進んでいると思ったんだけどな)
どうやら、他の歩行者の間を縫うように進んでいたら、方向感覚が間違っていたようで、馬車が通る大通りの真ん中へと出てしまったようだ。
(とりあえず、歩行者側へ戻るとしよう)
俺は馬車が通る道へと踏み入れた足を歩行者の方に戻そうとした。
すると……
「クソッ!!!」
ゴンッッッ!!!
大通りの端の方から下品な声と鈍い音が聞こえてきた。
俺はそちらへと視線を向ける。
そこには、建物の壁に手を置いて、怒っているような悲しむような顔をしている男がいた。
俺はその男を見ると……
(ああ……博打で負けたな、あれは)
と思った。
この州都には、露天商が並ぶ大通りや店舗を構える店が立ち並ぶ商店街、住民が暮らす住宅街などがあるが、裏路地に行けば賭場や水商売の店が立ち並ぶ歓楽街もある。
壁を殴って何かに打ちのめされたような様子を見せる男は、ちょうど歓楽街がある裏道の方からこの大通りへと出てきていた。
おそらく、男はこっぴどい負けをして、あんな風に物に当たっているのだろう。
(はぁ……博打とかねぇ……)
俺は男の様子を見て、そんなことを思っていた。
スイがそんなことを思っている時……
スイは気づいていなかったが、男が殴った建物の二階の窓には陶器が置かれていた。
しかも、その置かれ方はとても不安定なものだった。
…………ス……ス……スス……
すると、男が殴った衝撃が呼び水となって、その陶器が徐々に窓の縁からズレていく。
スス……ススス……ススススス
そして……
スススススッ
窓の縁から落下した。
………………
陶器は音も無く、下へ下へと落ちていく。
数瞬後……
ボファッ!
陶器は真下に開かれていた露店の帳に落ちた。
ヒュッボッ!
しかし、陶器はその帳で止まることは無く、むしろその帳の弾性を利用して斜め上に飛びあがった。
………………
陶器は放物線を描くように飛んでいく。
………………
陶器は歩行者の波を超えて飛んでいく。
………………
そして最後は……
ハ゛リ゛ィィン゛ッッッ!!!
激しい音を立てて、俺の近くへと落ちた。
「!」
俺は陶器が割れた音に少し驚いたが、俺に関してはそれだけだった。
だが、陶器が割れる音に驚いたのは人だけでは無かった。
ヒ゛ッ、ヒ゛ヒィィィィィンッッッ!!!
陶器が落ちた近くには、馬車とそれを引っ張る馬が走っていた。
俺の近くにいた馬がすぐそばでいきなり鳴った音に対して嘶きをあげた……
……刹那
ホ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!!!!!!
俺の胸部に途轍もない衝撃が走った。
そして……
俺はその衝撃を認識した瞬間……意識と記憶が途絶えた。
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