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第143話 プレゼントは使って欲しい

「ドリト様。いつも有難(ありがと)御座(ござ)います。こちら、心ばかりのものですが、どうぞお(おさ)めください」




 俺は、ドリトへいつも世話になっている礼と共に、"プレゼント"を渡した。


「……ん?ああ、ありがとう?」


 ……スッ


 ドリトは俺のプレゼントに対して、不思議そうな顔で受け取った。


 そして、ドリトは受け取ったプレゼントを観察し始めた。


「これは……なんだ?」


 ドリトは俺が渡したプレゼントが何なのか分かっていないようだった。


「はい。そちらは私が作らせて頂いた刀油(とうゆ)で御座います」


 俺はドリトに対して、プレゼントの正体を答える。


 俺がドリトに渡したプレゼントは陶器(とうき)とその中に入った液体であった。


 中に入っている液体は刀油である。


 刀油とは、剣や刀、包丁などの刃物が()びないようにするために塗る油である。


「刀油?なんで刀油なんだ?」


 ドリトは何故(なぜ)刀油をプレゼントに選んだのか?と聞いてくる。


「以前ドリト様が、今の刀油だと切れ味が落ちる、と(おっしゃ)っておりましたので、切れ味が落ちない刀油を本で探していたのです。すると、本の中で見つけた切れ味が落ちにくい刀油を再現できる原料を先週、街の露天商で偶然見つけたのです。なので、それを買って、その刀油を作らせて頂いたからで御座います」


 以前、図書室でドリトと話をしている時に、ドリトがアーテスから軍備品として現在支給されている刀油だと切れ味が落ちてしまう、と言っていた。


 それを聞いた俺は、切れ味が落ちない刀油が無いかと本で探してみたところ、見つかった。


 だが、その原料が州都(しゅうと)アーテスでは常に手に入るものでは無かった。


 しかし、先週街へと買い物に行った時、その原料が露天商に売られていたので、それを買って刀油を作ってみた。


 そして、それをドリトにプレゼントしたのである。


「そちらの刀油は大陸の中央部で作られているものを私が再現したもので御座います。もし、使い勝手が悪いようでしたら、捨てて頂いても構いません」


 俺はそう言う。


「へぇー……いや、お前がわざわざ作ってくれたんだろ?さすがに捨てられねぇよ」


 ドリトは捨てるわけにはいかないと答える。


「有難う御座います。でしたら、大切に保管することなく、使っていただけると喜ばしい限りです」


 俺は、捨てないならしっかりと使って欲しいと()げる。


「ああ!分かった!いやぁ……ありがとな!」


 ドリトは照れくさそうに、俺に礼を言った。


「いえいえ」


(プレゼントだからって大切に保管とかしないでくれよな……それは"使って"なんぼの物なんだからな)


 俺は内心そう思っていた。




 タッ……タッ……タタッ……ススッ


「エートィ様。おはようございます」


 ドリトへとプレゼントを渡した俺は、次にこの図書館の司書(ししょ)であるエートィのもとへと向かった。


「……ああ、おはよう……スイ君」


 エートィは俺に挨拶(あいさつ)を返すが、何やら少しもじもじしている様子だった。


 そんなエートィに対して……


 スッ


「エートィ様。いつも有難う御座います。こちら、心ばかりのものですが、どうぞお納めください」


 ドリトと同じ様にプレゼントを渡した。


「えっ!プレゼントかい!いやぁ~嬉しいなぁ」


 俺がプレゼントをあげると言った途端に、エートィは少しわざとらしい喜びの言葉を言ってきた。


(さっきまで、俺とドリトの会話を聞いてたもんな。そりゃ内心期待するか)


 どうやら、エートィは俺がドリトにプレゼントを渡していたところを傍目(はため)から見ていたようで、自分もプレゼントがもらえるのではないかと思っていたようだ。


「どうぞ。お受け取りください」


「ああ!」


 スッ


 エートィはプレゼントを受け取る。


「……見てもいいかい?」


「どうぞ」


 俺がエートィに渡したプレゼントは小袋に包まれていた。


 スススッ


 エートィは渡された小袋の口を開けると、中を(のぞ)き込んだ。


「これは……ツリカイの葉かい?」


「はい。その通りで御座います」


 エートィは俺が渡したプレゼントを言い当てた。


「いやぁ、良く見つけたね」


「偶然、露天商に売られているのを見つけまして」


 エートィに渡したツリカイの葉とは、嗜好品(しこうひん)の一種である。


 ツリカイの葉を乾燥させた物を口に(ふく)んで、()んだり()めたりすると、覚醒作用のある成分がツリカイの葉から(にじ)み出るように出てきて、眠気や疲れなどを一時的に解消することができるのである。


 その味は、甘さと苦みが変な調和になって(くせ)の強い味になっているが、好きな人は好きらしい。


 このツリカイの葉は乾燥させれば数年は保存がきく。


 さらに、ツリカイの葉は一度口に含んだものを口から吐き出しても、外気(がいき)に触れると直ぐに唾液の湿(しめ)りが乾燥して、元の乾燥した状態へと戻る上、殺菌作用もあるので、何度も使いまわせることも特徴である。


「以前、眠気と疲労で仕事の効率が下がってしまうと言われていたので、こちらを(おく)らせて頂きました」


「うん!ありがとう!早速、今日の仕事から使わせてもらうよ」


 エートィは嬉しそうに告げた。


 俺はそんなエートィを見て……




(こっちはあまり"効果"は見込めないんだけど……まあしょうがないよな、自分だけ貰えないってのは何もないことよりも嫌なことだからな)




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