第139話 やはり外出が欲しい
「前払いでお前に報奨を与えることにしよう」
ティークは俺に報奨を与えると言ってきた。
「報奨で御座いますか?」
俺はティークに聞き返す。
「ああ。お前がこのマニュアルを作成したことに対する報奨だ」
ティークは俺のマニュアル作成に対する報奨だと言う。
「さて早速だが、何を望む?」
そして、俺に報奨の内容を尋ねてきた。
どうやら、今回も俺に報奨を選ばせてくれるらしい。
俺はティークの質問に対して……
「邸宅の外へと独りで自由に出る許可を希望致します」
淀みなく答えた。
俺の望みを聞いたティークは……
「うーん……」
承諾し兼ねていた。
「…………」
そして、ティークは数秒ほど考え込む姿勢を見せた。
「……分かった」
数秒後、ティークは口を開いた。
「少し待て」
ティークはそう答えた。
5日後……
「お前の希望を報奨として認める」
ティークは、俺の希望を叶える、と言ってきた。
「有難う御座います」
俺は感謝を告げた。
(待て、と言ってきたのは、大方アーテス長かその他の使用人と相談でもしていたのだろう)
俺は希望が通るまでに5日掛かった理由をそういう風に考えた。
「外出は認めるが、もちろん制限もある」
ティークは外出が条件付きであると言って、説明を始めた。
「お前が邸宅の外に出て良いのは休日だけ、その日お前が居室から出ていいのは夜明けから日没までだ。良いな?」
「畏まりました」
ティークは至極当たり前の条件を付けてきた。
(まあ、こんなところだろ……さて、何をしようかな)
俺は外出できることに胸を高鳴らせていた。
「明日から外出しても良いぞ」
「感謝致します」
俺はさらに気分を高めた。
ガチャッ……タッ……タッ……
翌日の夜明け、俺は自分の居室から出る。
タッ……タッ……タッ……
俺はある場所を目指して歩く。
タッ……タッ……タタッ
数分ほど歩くと、一つの扉の前で止まる。
そして……
「おはようございます」
その扉の前には護衛が1人立っていた。
俺はその護衛へと朝の挨拶をした。
「……ああ」
護衛は俺に挨拶を返した。
「そちらから外出させて頂きたいのですが、構いませんでしょうか?」
そして、俺は護衛に対してそう告げた。
「ああ、構わん」
ゴッ……ズスス……
護衛は特に逡巡することもなく、俺に了承を返すと、扉を開けてくれた。
「有難う御座います」
俺は扉を開いてくれたことに感謝を告げた。
タッ……タッ……
俺は護衛に感謝を告げた後、開かれたその扉……裏口から外へと歩き出した。
タッ……タッ……
そして、裏口から外へと出ると、そこには庭園が広がっていた。
俺は庭園には目をくれることなく、真っ直ぐ歩き続けた。
タッ……タッ……タタッ
すると、壁……否、鉄柵が目の前に現れたので、俺は足を止めた。
目の前の鉄柵の近くにも、護衛が1人立っていた。
「おはようございます。外出させて頂きたいのですが、門を開けて頂いても構いませんでしょうか?」
俺は護衛に挨拶をした後、鉄柵……裏門を開けてくれ、と頼んだ。
「はいよ」
キッ……
護衛は返事を返すと、裏門を開けてくれた。
「有難う御座います」
タッ……タッ……
俺は護衛に感謝を告げて、外へと歩き出した。
「はいよ。気を付けてな」
護衛は俺にそう言った。
タッ……サッ……サッ……ササッ
俺は裏門を出て、数歩歩くと足を止めた。
邸宅の外へと出てみると、そこには草原が広がっていた。
辺りを見渡してみると、草原が邸宅の外周を囲んでいることが分かった。
しかし、遠くの方を見て見ると、草原は無限に続いていないことが分かる。
草原の向こうには灰色と茶色の物体が草原を囲むように存在しているのが見えた。
このアーテス邸はアーテス州の州都アーテスに存在する。
州都アーテスは、中心にアーテス邸があり、アーテス邸の外周に幅数百メートル(m)の草原のエリア、そこから先に街が広がっており、その街を囲むように壁が存在している。
そして、州都アーテスはアーテス邸を中心に円状の都市になっている。
中心からアーテス邸→草原→街→壁となっている。
アーテス邸から壁までは大体1.3キロメートル(km)ほどであり、州都アーテスは総面積5平方キロメートル(㎢)ほどの街になっている。
……サッ……サッ……サッ
俺は歩みを再開する。
俺は今、アーテス邸の裏門を出て、草原のエリアを歩いていた。
この草原は何のためにあるのか?
それは、護衛や兵士達の安全が担保された訓練施設や馬の牧草地として存在しているためらしい。
ちなみに、護衛はアーテス邸やアーテス州の重要人物を護衛するための職業で、兵士は州都アーテスやアーテス州全体を護衛或いは対外的な武力行使をするための職業である。
この都市は、全体を壁に囲われているので、護衛や兵士達が利用できる安全な自然を作ることができるのだ。
ただし……
「こっちこっち!!」
「行くぞぉっ!!」
「早く早く早く!」
「キャハハハッ!!」
少し遠くから子供たちの楽しそうにはしゃぐ声が聞こえる。
通常時、この草原エリアは公園や憩いの場的な感じで存在しているらしい。
訓練施設として使う時は、関係者を立ち入り禁止にしたりするが、何もない時は子供たちが遊んだり、日向ぼっこをする住民が利用している。
(訓練施設や馬の牧草地として作るにしては結構無駄が多いからな。こういった公共のためにも作ったという理由が強いだろうな)
「キャハハハッ!!」
「行け行けっ!!!」
「よし、はいっ!!」
サッ……サッ……
俺は子供たちの声が聞こえる中、草原を歩いた。
サッ……サッ……タタッ
そして、俺は草原のエリアを抜けた。
今、俺は石畳を踏んでいた。
「……はぁ」
俺は感嘆の声を漏らしていた。
俺の目の前には……
タッ……タッ……
「いや~それでね~」
タタタッ、カンカンッ
「おい、ちょっとちょっと!」
タカタカタカタカタカ……
キンッ!カッカッカッ!
「おーい!」
タッ!タッ!タッ!
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