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第138話 マニュアル作成

「お前の仕事は……マニュアルの作成だ」




 ティークは俺に仕事内容を言ってきた。


「マニュアルの作成……で御座(ござ)いますか?」


 俺は、ティークに聞き返す。


「ああ。お前の仕事は、お前が俺やアーテス(ちょう)(さま)に説明した虚偽報告(きょぎほうこく)の防止方法とテンプレート、それをここで導入(どうにゅう)できるようにするためのマニュアルを作成することだ」


 ティークは具体的な仕事内容を伝えた。


「作成に必要な資料は、この部屋の奥の棚に置かれているから、必要に応じて取るように」


 ティークは部屋の半分を埋め尽くしている数十の棚を示した。


「結構ぎゅうぎゅう()めになっているが、棚ごとにジャンル分けはされている。だから、探すのに苦労することは無いから安心しろ」


 ティークによると、棚は見た目の割に実用性があるらしい。


「それと、作成に(さい)して何か聞きたいことがあれば、この部屋にいる財務官(ざいむかん)に聞くように。必要な場合は俺に聞いても構わん。そして、完成したら俺のところへ見せに来い。説明は以上だ……分かったか?」


 ティークがそう聞いてくる。


把握(はあく)(いた)しました。問題御座(ござ)いません」


 俺は、大丈夫だと答える。


「そうか。まあ……」


 ティークは俺に一言を返すと……


「本来であれば、徴税官見習いの最初の仕事は、先輩の徴税官へと付いて行って、徴税報告を見学することなのだが……お前の場合、今は徴税報告の時期じゃないから、先にお前が言っていたことをやらせることになった」


 俺の状況を説明してくれた。


「なるほど」


 俺は得心(とくしん)の返事をした。




「それじゃあ、早速仕事を始めろ」


 ティークは俺に仕事を開始するように言った。


(かしこ)まりました」


 俺は了承(りょうしょう)を返す。


 タッ……タッ……


 ティークは俺の言葉を聞くと、俺に背を向けて歩き出した。


 ガチャンッ……スゥゥゥゥ……


 そして、扉を開けて部屋を出て行った。


「…………」


 俺は、ティークが部屋を出て行くのを見ると……


 チラッ


 仕事部屋の中にいる財務官達(ざいむかんたち)を見た。


 そして……


 タッ……タッ……タタッ


「申し訳御座(ござ)いません、少し御聞(おき)きしたことが……」


 俺はその中から適当に財務官を選んで話しかけた。








 3日後……


 タッ……タッ……タタッ


「ティーク様。マニュアルが完成(いた)しました。ご査収(さしゅう)ください」


 俺は完成したマニュアルをティークのもとへと持っていった。


「おっ、もう完成したか。早速確認するとしよう」


 ササッ


 ティークは俺からマニュアルを受け取った。


「…………」


 そして、読み始めた。




 今回俺が作成したマニュアルは、メイシュウ村で俺が実際に作った虚偽報告を防止するための資料やテンプレートを一部修正して、もう一度同じ様に作り直した程度のものである。


 村や世帯(せたい)ごとの予想収穫量(しゅうかくりょう)を畑の面積や作物の種類から計算し、村長に全ての世帯の収穫量とグループの収穫量を書かせる。


 そして、その二つを見比べて虚偽報告を防ぐ。


 さらに、それを円滑(えんかつ)にやるため、アーテス州に存在する全村(ぜんそん)に同じテンプレートの徴税報告資料を書かせる。


 そういった具体的な方法をこのマニュアルを読んだだけで、直ぐに実践(じっせん)できるようにしただけのものである。




 ただ1つだけ……


「おい……これは何だ?」


 ティークがマニュアルを確認する手を止めると、俺に質問をしてきた。


「この"収穫量評価しゅうかくりょうひょうか"とは何だ?」


 ティークはそう聞いてくる。


「そちらは、各村やアーテス州全体の豊作(ほうさく)不作(ふさく)の度合いを分かりやすくするためのもので御座(ござ)います」


 俺はそう答える。




 ただ1つだけ……村にいる時に作ったものとは違う部分がある。


 それは、各村の収穫量を評価させるために作った"収穫量評価"という項目である。


 これは、各村長に今年度の収穫量が昨年度(さくねんど)や例年の収穫量とどのくらい違うのかを計算させ、その計算結果を(もと)に1~5の五段階の評価をさせるというものである。


 なんでこんなものを作ったのか?


 それは、各村や州全体の収穫量がどのようになっているのかを分かりやすくするためである。


 今までアーテスでは、報告された収穫量の数字だけを見て、何となく収穫量が良いとか悪いとかを判別しているみたいだった。


 なので、その良し悪しの判別を五段階にコンパクトにまとめることで、一目見ただけで収穫量の良し悪しを測れるようにした。


 もちろん、この収穫量評価の導入提案に踏み切れたのは便利そうだから、と言う理由だけではない。


 導入しても問題無いかの確認を()て、提案をしている。


 俺は、財務官達に、今までの評価方法や俺が考案した五段階評価、両者の違いなどについて、アンケートや意見調査をしている。


 それらによると、俺が新しい評価方法を導入してもあまり問題が無さそうだったので、俺は導入に踏み切ったのだ。


(新しく発明されたものがどんなに便利でも、今までのものにこだわって新発明が失敗する事例は枚挙(まいきょ)(いとま)がないからな)


 俺はそう思った。




「……という事で御座います」


 俺はティークにも同じように説明をした。


「……なるほど」


 ティークは俺の説明聞き終えると、そう言った。


 ……スサッ


「…………」


 そして、ティークは俺が提出したマニュアルを再度読み始めた。




 フッ


 数分が()った頃、ティークはマニュアルから視線を俺に戻した。


 そして……


「よし……これを一部の村から導入していくことにしよう」


 ティークは俺のマニュアルを採用した。


有難(ありがと)(ぞん)じます」


 俺は、ティークに感謝を()げた。


 すると……


「では、本来であればこのマニュアルの結果が出た後にすることなのだが……」




「前払いでお前に報奨(ほうしょう)を与えることにしよう」




 ティークはそう言ってきた。

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