第133話 結構何でもできる
ガチャッ
扉が開く。
タッ……タッ……
その開かれた扉を通って、俺は自分の居室から出る。
パァァァァ……
近くの窓からは夜明けの光が差し込んでいた。
タッ……タッ……
俺は薄い光が照らす廊下を歩く。
俺がこのアーテス邸に来てから……3ヶ月が経過した。
タッ……タッ……
俺は初めて図書室に行った日から今日まで、使用人見習いとして炊事洗濯掃除などの、家事使用人がやる、いかにもな仕事を色々とやってきた。
それらの仕事に関しては……
(まあ、可もなく不可もなく熟せていると思う)
タッ……タッ……
そして、それは平日の話である。
俺は、初めて図書室に行った日から、休日を一日中図書室に入り浸ることに使っていた。
タッ……タッ……
そして、今も俺はその図書室に向かって歩いていた。
タッ……タッ……タタッ
数分後、図書室の扉の前に到着すると……
コッコッコッ
俺はその扉にノックをした。
そして……
ガチャ……ガッ、スススゥゥゥゥゥ……
俺はその扉を開けた。
スゥゥゥゥ……タッ……タッ……
扉を開けると、俺は図書室へと足を踏み入れた。
タタッ……スススゥゥゥゥゥ……ガチャンッ
そして、後ろを振り向いて扉を閉めた。
フッ
扉を閉め終えると、俺は隣を向いた。
扉のすぐ横にはドリトが立っていた。
「ドリト様。おはようございます」
俺はドリトに朝の挨拶をした。
「おう!おはよう!」
ドリトはいつも通りの気さくな挨拶を返してくれた。
チラッ
そして、俺はドリトから視線を外して、別のところを見た。
カカッ……カキキッ……
すると、俺の視線の先には司書がいたが、彼は本を読まないで机に向かって作業をしていた。
俺はそれを確認すると……
タッ……タッ……
司書の元まで向かった。
タッ……タタッ
「エートィ様。おはようございます」
そして、司書に挨拶をした。
ちなみに、この3ヶ月の間に教えてもらったのだが、この司書は名前をエートィと言う。
……フッ
俺の挨拶に気付いたエートィは俺に視線を向けてくる。
すると……
「ああ!おはようスイ君!」
エートィは初見の時とは見違えるような、はきはきとした挨拶を返してくれた。
俺はそんなエートィに……
「今日は何をされているのですか?」
と尋ねる。
「今日はただの定期調査だよ」
エートィはそう答える。
「なるほど……宜しければ手伝いましょうか?」
俺はエートィにそう言う。
「おっ!そうかい!なら手伝って…………いや、やっぱりいいよ」
エートィは一瞬俺の申し出を受けようとしたが、途中で口を噤んだ。
「スイ君がここに来られるのは休日だけだろ?なら、手伝わせるのはちょっと悪いかな」
エートィはそう言って断った。
「お気遣いくださり有難う御座います。ですが、御入用の際はいつでもお呼びください。可能な限り駆けつけさせて頂きます」
俺はそう言った。
「分かった。ありがとう」
ススッ……タッ……タッ……
エートィからの礼の言葉を聞くと、俺は彼に敬礼をしてからその場を後にした。
タッ……タッ……
エートィはドリトが言っていた通り、本を読んでいる時に話しかけると機嫌が露骨に悪くなる。
しかし、本を読んでいない時は普通に対応してくれる。
特に、エートィが仕事をしている時に話しかけるとかなり機嫌良く応えてくれる。
仕事をしている時に話しかけられたら、普通機嫌が悪くなるのでは?と思うかもしれない。
だがおそらく、エートィの場合は他人と話すことで仕事から逃避をしたいから、会話に積極的になって機嫌が良くなるのだろう。
(仕事中の無駄話はダメだと分かっていても楽しいからな)
タッ……タタッ
俺はエートィへの挨拶を終えると、1つの本棚の前へとやってきた。
その本棚には「スキル・魔気・経験」というジャンルが刻まれていた。
カタッ……スススゥ……
そして、俺はその本棚から本を取って読み始めた。
この3ヶ月間……
図書室で本を読んだり、司書やドリトに聞いたりして色々と分かったことがある。
まず、スキルについて。
最初に図書室に来た時、スキルがどういうものなのか?ということの概要について知った。
次に俺は、スキルで何ができるのか?ということを調べた。
調べた結果を一言で言うのなら……
「結構何でもできる」
である。
スキルという力は1つの特別な力を指すのではなく、生物の身体能力や知力とは別の、超常的な力の総称なのである。
具体的に言えば、俺みたいに念じるだけで物体を動かしたり、護衛のように自身の身体能力を向上させたり、はたまた物体を生み出したり、相手の精神を操作したり、特異な物理現象を起こしたり等、スキルによって様々なことができる。
スキルによってできることは千差万別なのである。
「スキル大全(第6回)」という本では王立図書院とやらが調べたスキルが幾千、幾万種類も掲載されていた。
その本を読んで、護衛達の異常な身体能力を引き出しているであろうスキルが予測できた。
護衛達が使っていたスキルは、おそらく「剣術」か「身体強化」というスキルなのではないかと考えられる。
この2つのスキルはどちらとも、スキル使用者の身体能力を強化するという効果を持っている。
「スキル大全(第6回)」に書かれていた2つのスキルの説明を要約すると……
「剣術」:スキル使用者が剣を扱うために必要な身体能力を強化する
「身体強化」:スキル使用者の身体能力を万遍無く強化する
こんな感じである。
そして、両方ともスキル使用者の体内にその影響を与えているスキルなので、どちらも「気系スキル」らしい。
「気系スキル」とは、スキルの使用に魔よりも気を多く必要とするスキルのことを言うらしい。
逆に、スキルの使用に気よりも魔を多く必要とするスキルのことを「魔系スキル」と言うらしい。
そのスキルが気系スキルになるのか魔系スキルになるのかは、そのスキルに使われる魔と気の規模の違いに依るという分け方なので、気系スキルでも魔を使うこともあるし、魔系スキルでも気を使うこともある。
ちなみに、スキルという力の存在を知ってから、気づいたことなのだが……
3か月前、俺がこのアーテス邸に向かう道中ジョーマが襲い掛かってきた。
そして、実際にジョーマ達が襲い掛かるよりも前に、隊長は馬車の中にいるにも関わらずジョーマの存在に気付いていた。
おそらく隊長がジョーマの存在に気付いたのは何かのスキルを使った結果なのではないか?と俺は気づいた。
そういえば……俺にスキルの事を色々と教えてくれた「スキル大全(第6回)」には数千、数万種類のスキルが載っているので、俺はこの3か月間全ての箇所を読んでみた。
そして、念じるだけで生物以外の物体を動かせるスキル、つまり俺のスキルをその本の中で探してみた。
しかし、俺のスキルと同じスキルは見つけられなかった。
とにかく、スキルという力には大量の種類があることが分かった。
では、スキルはどうやったら使えるようになるのか?
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