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第132話 経験と魔気

(……もう一つ知りたいことがあるんだよな)




 カタッ……スススゥ……


 俺はそう思うと、「スキル大全(たいぜん)(第6回)」をしまった本棚から、別の本を取り出した。


 パサァ……


 俺はその本の表紙(ひょうし)(めく)る。


 その本の1ページ目には……


経験(けいけん)魔気(まき)(王立図書院改訂(かいてい))」

 著:ユンネル・セ・ジピラセル 改訂:王立図書院 

 発行年月:王歴433年4月20日(改訂前発行年月:王歴22年9月1日)


 と書かれていた。


 そして……


 ペラッ


 俺はその本を読み始めた。




 ーーこの世界には「経験(けいけん)」という仕組みがある。


 経験は"方法(ほうほう)"とその方法によって(もたら)される"効果(こうか)"のことを意味する。


 方法とは自分以外の生物を殺害することである。

 効果とは「()」と「()」の規模を上昇させることである。


 つまり、生物を殺害することで自身の魔と気の規模を上昇させることができる、ということである。


 経験について本格的な説明を始める前に魔と気について説明をしておく。


 この世界にはスキルという力があることは読者の方々(かたがた)は知っていることだろう。


 では、スキルという力は(かぎ)りなく使うことができるのか?


 答えは(いな)である。


 読者の中でスキルを使ったことのあるものがいれば、(すで)に実感していることだろう。


 スキルには瞬間的な出力に限界があったり、永遠と使い続けることができなかったりしたのではないか?


 では何故(なぜ)、スキルにはそのような限界が存在するのか?


 それはスキルにも力の(みなもと)が存在し、その力の源には限りがあるからである。


 そして、その力の源こそが「魔」と「気」なのである。


 魔とはそのスキル使用者の"体外"で効果を発揮するスキルの力の源である。

 気とはそのスキル使用者の"体内"で効果を発揮するスキルの力の源である。


 魔は体外、気は体内、と覚えると良いだろう。


 基本的に魔と気は別の存在として考えられているが、完全には別の存在では無いという仮説(かせつ)がある。


 だが、ここでは概要(がいよう)について話をしているため説明はしないこととする。


 そして、スキルを(あつか)う生物には魔と気が(そな)わっている。


 ※以降本著では「魔」と「気」をまとめて述べる際、理由が無い限り「魔気」とする。


 スキルを扱う生物は(みずか)らが(ゆう)する魔気の規模に応じて、スキルの出力を変化させる……つまり、スキルの限界はそのスキルを扱う生物の魔気の規模に()る、ということである。


 そして、スキルを扱う生物の魔気の規模は変化する。


 その変化を(あた)える要因(よういん)というのが経験(けいけん)である。


 経験をした生物は自身の魔気の規模が上昇し、自身の持つスキルの出力を強化することができる。


 ちなみに、経験による魔気の規模の上昇量はある法則によって変化する。


 その法則とは、殺害された生物の魔気の規模が大きいほど経験をした生物の魔気の規模の上昇量が多くなり、経験をした生物の魔気の規模が大きいほど経験による魔気の規模の上昇量が小さくなる、というものだ。


 殺される側の生物の魔気の規模が大きければ上昇量が増え、殺した側の生物の魔気の規模が大きければ上昇が減る、と覚えると良いだろう。


 これが経験と、魔気の概要である。ーー




「…………」


 俺は本を読むのを一旦(いったん)止める。


 そして……


(これのことだったかぁ……)


 と俺は思う。


 俺の能力……ではなく、俺のスキルの最大出力や持久力が向上することが村にいた(ころ)頻繁(ひんぱん)にあった。


 そして、俺はその向上の原因が生物の殺害であることを突き止めていた。


 しかし、村にいた頃では向上の実態(じったい)は分かっても概要(がいよう)が分かっていなかった。


 だが……俺は(つい)にその答えを得た。


 その答えとは、「経験」というこの異世界の仕組みであった。


 俺が生物を殺害して、俺のスキルの最大出力や持久力が向上したのは経験というこの異世界の仕組みに()るものだった。


 ただし、この本の概要に書かれている大凡(おおよそ)の内容は俺が村で(おこな)っていた検証で判明していることだった。


 だが、こうやって第三者から答えを(もら)えるとなんとも言えない気持ちになる。




 しかし、俺がこれまで()れてはいたが、気付(きづ)けなかった情報がこの本に登場してきた。


 それは「()」と「()」というものと、経験の上昇量である。


 まず、「魔」と「気」についてだが……


 この本が()べていることをまとめると、「魔」と「気」というのはスキルを使うために生物が持っている力であり、生物がスキルを使う時はこの「魔」と「気」を使うらしい。


 そして、魔はスキル使用者の体外に影響(えいきょう)を与えるスキルの、気はスキル使用者の体内に影響を与えるスキルの力の(みなもと)になっているらしい。


 ゲームに例えるなら、スキルはそのままスキルとか魔法で、魔気はMPで、経験は経験値(EXP)みたいなものだろう。


(俺のスキルは体外に影響を与えているから魔を使っている……ということかな?)




 次に、経験の上昇量だが……


 この本によると、経験をした時に殺害された生物と殺害をした生物の両方の魔気の規模の大きさによって、その時の経験で上昇する魔気の規模の量が変化するらしい。


 殺害された生物の魔気の規模が大きければ大きいほど、経験した生物の魔気の規模の上昇量が増える。


 殺害をした生物もとい経験した生物の魔気の規模が大きければ大きいほど、経験した生物の魔気の規模の上昇量が減る。


 殺害をした方とされた方、両方の魔気の規模が経験による魔気の規模の上昇量を変化させるらしい。


(つまり、俺が村で黒い奴やネズミ、ウィピをそれぞれ殺した時の上昇量の違いは、あいつらの魔気の規模が違ったから、ということか……村にいた時は殺された生物の大きさとか重さによって変わるものだと思ったんだがな。いや、もしかして体の大きさや重さも間接的に魔気の規模に影響しているのでは?体が大きい生物の方が殺せる相手の数や種類は多くなる……そして、殺害によって魔気の規模を(たくわ)えた生物はそれよりも大きな生物の経験の(かて)にされ、その大きな生物もさらに大きな生物の経験の糧にされ……もしかして、経験においても食物連鎖みたいなことが起こるのでは?)


 俺は魔気の規模の上昇量の違いを考察する。




 パタッ……


 俺は「経験と魔気(王立図書院改訂)」の概要部分(がいようぶぶん)だけを読むと、それを閉じた。


 カタッ……スススゥ……


 そして、元あった本棚へと戻した。


(これで……知りたかった3つの概要を知ることができたな)


 俺はこの図書室に来る前……いや、村にいた頃から、とある3つのことを知りたかった。


 その3つのこととは……


 俺はどこにいるのか?

 俺が持つ超常的(ちょうじょうてき)な能力は何なのか?

 その超常的な能力が向上しているのは何なのか?


 である。


 そして、このアーテス(てい)の図書室へと()られたことで、それを知ることができた。


(ここからは、それぞれに関連することやその他必要な知識(ちしき)や情報を深く調べていくこととしよう)


 俺はこれからの短期的な方針(ほうしん)(さだ)める。




(まあ正直(しょうじき)……調べるよりも先に言いたいことが山ほどあるけどな)


(だが、今はそれらを()(ころ)しておこう)




 俺はそう思った。

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