第131話 スキル
タッ……タタッ
俺は1つの本棚の前でその足を止める。
その本棚には「スキル・魔気・経験」というジャンルが刻まれていた。
カタッ……スススゥ……パサ……ペラッ…………ペラッ…………
俺はその本棚から1冊の本を取り出すと、その本のタイトルと最初の数ページを軽く流し読みする。
パタッ……カタッ……スススゥ……
流し読みを終えると、その本を閉じて元の場所に戻した。
カタッ……スススゥ……パサ……ペラッ…………ペラッ…………
そして、別の本を取ると、また流し読みを始めた。
俺は「歴史・地理」の本棚の時と同じ様に、「スキル・魔気・経験」の本棚から1冊ずつ本を取ってはタイトルと最初の数ページを読み、別の本を取ってはまた流し読みをする……ということを繰り返した。
カタッ……スススゥ……
1時間ほどが経った頃、俺は最後の1冊の流し読みを終えて、その本を棚に戻した。
そして……
カタッ……スススゥ……
俺は今までに流し読みした本の中から1冊の本をもう一度手に取った。
パサァ……
俺はその本の表紙を捲る。
その本の1ページ目には……
「スキル大全(第6回)」
著:王立図書院
発行年月:王歴450年1月1日
と書かれていた。
そして……
「…………」
……ペラッ
俺はその本を読み始めた。
ーーこの世界には「スキル」という力がある。
スキルはこの世界に存在する全ての生物に備わっている或いは備わる可能性を秘めている力である。
スキルがどのような力なのか?
それに関しては一概に言えない。
ただし、我々王立図書院は、スキルはとある生物にとっては必須の、またある生物にとっては拡張的な、また別の生物にとっては障害となる力であると考える。
そして、我々人間からすると、スキルは拡張的な力として存在していることが多い。
読者の方々にとって、スキルとは、火や水、鉱物、その他様々な存在を生み出したり、それらを操ったり、自身の身体能力や肉体を強化したり、対象者の精神に影響を与えたりする存在であることは日常生活の中で良く目にしていることだろう。
当書では、我々王立図書院が発行年月(王歴450年1月1日)までに調べることの出来たこの世界に存在するスキルを紹介及び説明させて頂きます。ーー
「…………」
俺は本から目を離す。
「…………」
数秒間……口も、心の中も沈黙させる。
そして数秒後……
チラッ
俺は自分が着ている服と靴に目を向けると……
(俺の能力はそういう力……「スキル」なのか)
と思う。
この本に書かれている、「スキル」という存在……これには信憑性がある。
常識的に考えれば、こんな内容はどこぞの宗教団体が信者を招き入れるために作った、妄言のようなものに感じるかもしれない。
だがしかし、俺はこの本に書かれている内容を信じる方向でいく。
何故信じるのか?
それは、この本に書かれているスキルという超常的な存在……その実例を俺は2件知っているからだ。
その2件の実例とは何か?
それは、護衛達と俺自身のことである。
俺がこの体に生まれてからずっと使っている、物体を念じただけ動かせる能力。
護衛達がジョーマとの闘いで見せた、人間を超越した身体能力。
これらを超常の力と呼ばずして何と呼ぶ。
一応、後者に関しては本当に身体能力の可能性が微々たるものだが存在する。
(ここは異世界だしな)
だが、俺の力は何だ?
念じるだけで物体を動かせる?
そんな力は地球の人間には無かったし、地球の他の生物にも無かった。
しかし、俺は実際に使うことができるし、現在進行形で使っている。
これこそ、この世界にスキルという超常的な力が存在する証左であろう。
だから、俺はこの本に書かれていることを妄言だと言って、切り捨てることはしない。
(俺の能力や護衛の身体能力を見た時、何かがあると思ったが……こういう物だったとは)
さらに、スキルという力は俺だけが持つ力ではなく、他の人間も持っている……それどころか、この本に依ると身近な存在として書かれている。
チラッ
俺は本の一文に目を向ける。
ーー読者の方々にとってみれば、スキルとは火や水、鉱物、その他様々な存在を生み出したり、それらを操ったり、自身の身体能力や肉体を強化したり、"対象者の精神に影響を与えたりする"存在であることは日常生活の中で良く目にしていることだろう。ーー
俺はその一文を読むと……
(……色々と考えることが増えたな)
と思った。
数分後……
パタッ……カタッ……スススゥ……
俺は手に持っていた「スキル大全(第6回)」をある程度読むと、元の本棚へと戻した。
そして……
(……もう一つ知りたいことがあるんだよな)
俺はそう思った。
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