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第130話 地球では無い

(ここ……地球(ちきゅう)じゃねぇわ)




 俺は「リープセス王国の近況(きんきょう)」という本を読むと、そう思った。


(……とりあえず、情報を整理しよう)


 この本に書かれていることや先ほど流し読みした(ほか)の本の情報を合わせるとこうだ。


 この世界は「超大陸(ちょうたいりく)レイクトマース」と、その大陸を(かこ)むように存在する「超大洋(ちょうたいよう)ルー」によって構成(こうせい)されている。


 そして、この世界にはその2つ以外(いがい)の大陸や大洋(たいよう)が存在しない。


 つまり、この本に()ると、俺が(あら)たな(せい)を受けたこの世界は地球とは違う場所ということである。


(異世界転生……だな)


 そして、俺が産まれたメイシュウ村はアーテスに(ぞく)していて、そのアーテスはリープセス王国という国家の(しゅう)の1つであるらしい。


 そのリープセス王国は超大陸レイクトマースの東方(とうほう)に存在する国家であり、超大洋ルーとは国土(こくど)(めん)していないが、レーンニーン(かい)という付属海(ふぞくかい)と国土を面しているらしい。


 付属海というのは、大洋と(つな)がってはいるが、大洋と繋がっている部分が大陸や島などによって小さくなっている海のことである。


 地球の地中海(ちちゅうかい)がまさに付属海である。


 つまり、俺は今、世界の東側にいることが分かったということだ。


(ただし、東は東でも……異世界のだがな)


(地球だったら自分がどこにいるのかは重要な情報だったが、異世界だとすると情報の重要度は落ちるな)




(まあ、ここが100%地球では無い……と言われれば違うだろう)


 一応(いちおう)の可能性として、まだここが地球である可能性は残っている。


 ここら辺がやばい宗教団体の支配地域だとか、結果的に現代からタイムスリップしたとか……まあ、説明がついたり突拍子(とっぴょうし)も無かったりする理由なら(なん)でも思いつく。


 だが、今はここが地球じゃない(てい)で話を進めた方が建設的(けんせつてき)だと思う。




 ところで、ここが地球では無いことに、俺はこの本を読んで気付(きづ)いたのか?


 いや、そんなことは無い。


 正直(しょうじき)、村にいた(ころ)から地球にしてはおかしなことが多々(たた)あった。


 そして、アーテス(てい)への道中(どうちゅう)やアーテス邸での出来事、それらによって、さらにここが地球だと説明が出来なくなっていた。


 それでも、俺はここが地球だと思っていた。


 それは何故(なぜ)か?


(だって、異世界に転生したと考えるよりも同じ地球に転生したと考える方が、根本的な部分ではまだ説明がつくからだ)


 根本的な部分とは、そもそも何故(なぜ)前世の記憶を持ったまま俺は新しい体に生まれたのか?という理由の部分である。


 地球には量子力学(りょうしりきがく)……というか、それを詭弁(きべん)(もち)いた眉唾(まゆつば)のオカルト理論がある。


 それは意識体(いしきたい)の存在を(とな)える理論である。


 この理論の説明に(かん)して、ここでは色々と(はぶ)くが、すごく簡単に言うと……


 地球や地球が存在する宇宙では、すごく小さい世界の物同士が光よりも早く情報を伝えているという現象(げんしょう)がある。


 宇宙の膨張速度(ぼうちょうそくど)(のぞ)けば、光が最も早いはずなのに。


 何故(なぜ)そのような現象が起こるのか?


 その理由の一つとして、すごく小さい世界の物同士の間に共有(きょうゆう)意識体(いしきたい)があるから、という理由がある。


 これは、意識体というものは時間や距離に(しば)られることなく情報を伝えられるものだから光よりも早く情報を伝えられる、という理屈(りくつ)(のっと)っている。


 今説明した現象はすごく小さい世界で起きている現象だが、すごく小さい世界の物は人間の体の中にも存在しているのである。


 というか、人間だけでなく全ての生物、物質(ぶっしつ)はすごく小さい世界の物が無数(むすう)に集まってできた存在なのである。


 では、もしかしたら小さい世界の物が持つかもしれない意識体が人間にも存在するのでは無いか?


 そうだとしたら、人間は体が死んでも意識体は次の体に(うつ)る……つまり、輪廻転生(りんねてんせい)をしているのではないか?


 ……という理論である。


 この理論がどういう風に俺の状況に(つな)がるのか?というと、俺の前世の体から意識体が抜け出して、その意識体が今の体に移ったのではないか?ということである。


 意識体という言葉が難しいのなら、意識体を(たましい)とか精神(せいしん)とか(れい)とかに()()えて考えても問題無い。


 そして、この理論は地球や地球が存在する宇宙の法則(ほうそく)や現象を(もと)にした理論なのである。


 であれば、地球や地球が存在する宇宙では無い異世界においては、この理論が通用(つうよう)しない……つまり、異世界に存在する今の俺の体に前世の俺の意識体が転生できない可能性が高い、ということである。


 (よう)するに、意識体が実在(じつざい)するとしても、俺が転生できるのは前世の俺が存在していた地球や地球が存在する宇宙の中だけということだから、異世界に転生できるのはおかしいことになる。


 さらに、俺の見た目は完全に前世の人類種(じんるいしゅ)そのものであり、そうだとすれば地球と同じ宇宙にある別の星に転生したと考えるのも難しい。


 何故(なぜ)なら、地球外の星に生息(せいそく)する知的生命体(ちてきせいめいたい)が地球に生息する人類種と瓜二(うりふた)つの姿で存在している可能性が極々(ごくごく)低確率(ていかくりつ)だからだ。


 だから、俺はここが異世界()しくは地球ではない星の可能性はほとんど無いと思っていたのだ。




 しかし、何故(なぜ)地球では無い場所に転生してしまったのか?ということを置いておき、ここを異世界だと断定(だんてい)すれば、色々と説明が付けられる。


 クソデカ黒い奴だったり、地中海性気候ちちゅうかいせいきこうにしてはデカい木だったり、見たことの無い(おおかみ)だったり、デカ過ぎる(くま)だったり、文明の低さだったり、(こよみ)が地球とは違ったり、その他色々なことに説明を付けられる。


「異世界だから」という風に。




 ここが地球では無いと知り、ショックを受けたか?と聞かれれば……


 答えは(いな)だ。


(さっきも言った通り、薄々(うすうす)感づいていたからな)


 カタッ……スススゥ……


 俺は手に持っていた本を片付ける。


 タッ……タッ……


 そして、俺は「歴史・地理」の本棚から離れて、別のジャンルの本棚へと向かって歩く。


(この世界の歴史や地理についてまだまだ調べたいが、とりあえず今はここまでにする。今日は(くわ)しく調べるのではなく、この世界に(かん)することを広く(あさ)く調べていくつもりだからな)


 タッ……タッ……


 俺はそう思いながら、歩いた。


 タッ……タタッ




(先にここが異世界であることを確認した。そして次は……)




 俺は「歴史・地理」とは別の本棚の前でその足を止める。

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