第129話 ここは
(……遂に来たな)
俺はこの図書室に広がる本の海を見ながら、そう思った。
遂に、俺はまともな本を読めるようになった。
(本を読むことは村にいた時からの切望だったからな。村にはウィニーとかいう意味不明な本しか無かったし)
タッ……タッ……
(さて……)
俺は図書室の中心で止めていた足を動かし始める。
タッ……タッ……
("どれから"やろうかな)
俺はそう思いながら、図書室を歩き回り、図書室に置かれた本を概観していく。
タッ……タッ……
本が置かれている棚を見ると、棚の端の部分に文字が刻まれていた。
どうやら、しっかりと棚ごとにジャンル分けがされているらしい。
(面倒が無くて良いな)
タッ……タッ……
(……文学……財政……兵法)
俺は棚に書かれたジャンルを心の中で読み上げながら、図書室を歩き回る。
タッ……タタッ
数分後、俺は図書室に置かれていた棚のジャンルを確認し終えた。
そして……
タッ……タッ……
俺はとある棚へと向かう。
タッ……タタッ
その棚には「歴史・地理」というジャンル分けがされていた。
カタッ……スススゥ……
そして、俺はその棚から1冊の本を取り出した。
パサ……ペラッ…………ペラッ…………
俺はその本のタイトルと最初の数ページを軽く流し読みすると……
パタッ……カタッ……スススゥ……
その本を閉じて、元の場所へと戻した。
カタッ……スススゥ……
そして、次は先ほどの本の隣に置かれている本を取った。
パサ……ペラッ…………ペラッ…………パタッ……カタッ……スススゥ……
その本もタイトルと最初の数ページを軽く流し読みすると、その本を閉じて、元の場所へと戻した。
カタッ……スススゥ……
そしてまた、別の本を取って最初の部分だけ読み、それを棚に戻し、また別の本を取って最初の部分だけ読み、それを棚に戻し、また別の本を……
俺は「歴史・地理」の棚の本を全て手に取り終わるまで、それを続けた。
カタッ……スススゥ……
数十分或いは1時間ほどが経った頃、俺は最後の1冊を手に取り終わり、その本を棚に戻した。
そして……
カタッ……スススゥ……
俺は今までに流し読みした本の中から1冊の本をもう一度手に取った。
……パサ
俺はその本の表紙を捲る。
その本の表紙を捲った1ページ目には……
「リープセス王国の近況」
著:王立図書院
発行年月:王歴485年2月31日
タイトルと著者名、発行年月が書かれていた。
俺はそれを見ると……
パタッ……カタッ……スススゥ……
その本を閉じて、棚にしまった。
チラッ
そして、俺はこの図書室の司書が居る方を見る。
「…………」
司書は相も変わらず本を読んでいた。
タッ……タッ……
それを確認した俺は扉の近くに立っているドリトの方へと歩いて行った。
タッ……タタッ
「?」
目の前にやってきた俺を見ると、ドリトは少しその顔に疑問を浮かべていた。
「ドリト様。少し質問したいことがあるのですが、質問させて頂いても宜しいでしょうか?」
俺はドリトにそう聞いた。
「質問?ああ、良いけど……難しいことは俺だと答えられないぞ?」
ドリトは了承したが、そう聞き返してきた。
「畏まりました。ではお聞きします……今日は、王歴何年何月何日なのでしょうか?」
俺はドリトにそう尋ねた。
「ああ、日付か……今日は王歴495年11月30日だ」
ドリトは俺の質問にしっかりと答えてくれた。
「分かりました。御答え頂き、有難う御座います」
俺はドリトに感謝を告げる。
「ああ、全然構わん。このくらいのことだったら、いつでも聞いてくれ」
「有難う御座います」
タッ……タッ……
俺はドリトに再び感謝を告げると、先ほどまでいた「歴史・地理」の本棚へと戻る。
タッ……タッ……タタッ
(なるほど……)
カタッ……スススゥ……
俺は歴史・地理の本棚へと戻ってくると、先ほどまで開いていた「リープセス王国の近況」という本を再度手に取った。
(……この本を読めば分かるな)
パサァ……
俺はその本を読み始めた。
ーーこの世界は超大陸レイクトマースとその大陸を囲む超大洋ルーによって構成されている。
我がリープセス王国は超大陸レイクトマースの東方に存在する国家である。
リープセス王国はレーンニーン海と呼ばれる付属海に国土を面しており、超大洋ルーとは国土を面していない。ーー
ペラッ……ペラペラペラペラペラ……
俺はページを少し読み飛ばす。
ーーリープセス王国の州一覧:
グトメン、リィカイト、ピュセィス、ヒトメゥ……アーテス
アーテスの情報:
アーテスはリープセス王国領土の北に存在する北方大山脈に隣接する州である。ーー
ペラ…………
俺は本を読むのを一旦中止する。
すると……
「フゥゥ……ハァァ……」
俺は深呼吸をする。
そして俺は……
(ここ……地球じゃねぇわ)
と思った。
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