第127話 利用規約は守りましょう
(おぉ、これは……)
俺は隊長に連れられて、とある部屋へとやってきた。
その部屋は30畳ほどの広さを持つ部屋だった。
そして……
(高ぇ)
部屋の高さが5メートル(m)以上もあった。
扉を入って右手と左手の壁を見ると、そこには階段が取り付けられており、その階段はこの部屋の半分ほどの高さまで続いていた。
階段を上がったところには幅2メートル(m)ほどの足場があり、その足場は部屋の四方全てを一周するように取り付けられていた。
どうやら、この部屋はこの邸宅の1階と2階を繋げて作られた部屋になっているらしい。
そして……
部屋の全ての壁には"本"がずらりと並べられていた。
俺はそれを見ると……
(どうやら、反故にされることは無かったらしい)
と思った。
フッ
俺が部屋の中に広がる本を見渡していると、隊長が俺の方に振り向いてきた。
すると……
「お前が報奨として求めた書物の閲覧許可、アーテス長様は御認めになられた」
俺に対して語り始めた。
「なので、今から俺がお前に本の閲覧に関する諸事項を説明していく」
どうやら、俺に本を読むために必要なことを教えてくれるらしい。
「まず、見れば分かると思うが、ここは図書室だ」
「お前が読んで良い本や資料はこの部屋に置かれている物だけだ。この図書室以外の部屋に置かれている本や資料を許可無く読むことは許されていない」
「次に、この部屋をお前が利用できるのは"該当日"の夜明けから日没前までだ。日没までにはお前は自分の居室に戻ること。該当日は夜明けになったらこの部屋まで1人で来ても良いが、他の部屋に許可無く行くことは禁止だ」
「そして該当日……つまり、お前がこの図書室を利用して良いのは1FIOOに1日のTLAYNUと1YULOに1日のYULOTLAYNUだ」
俺は隊長の説明を聞いていると……
(ん?なんて?)
そう思った。
なので……
「御説明を遮ってしまい大変恐縮ですが、尋ねたいことが御座います。質問させて頂いても宜しいでしょうか?」
俺は隊長の説明を遮って、そう聞く。
「ん?ああ、良いぞ」
隊長は了承する。
「有難う御座います。では、『FIOO』『TLAYNU』『YULO』とはどういう意味の言葉なのでしょうか?」
俺は隊長が説明している時に言った意味の知らない言葉を教えて欲しいと言った。
「ああそうか。メイシュウ村出身だとそういうことも知らないのか……」
隊長は俺の質問を聞くと、そう独り言ちた。
「分かった。教えてやる」
続けて、俺に言葉の意味を教えると言って、説明し始めた。
「……といった具合の意味だ。分かったか?」
隊長はそう言って説明を終える。
「はい。理解致しました。御説明くださり感謝致します」
俺は隊長に理解できたことを伝える。
そして……
(そういえば、あの村ではそういう概念が欠如してたからな)
俺は隊長の説明を聞いてそう思った。
隊長が教えてくれた説明をかみ砕いて簡単に言うと……
「FIOO」は「週」
「TLAYNU」は「休日」
「YULO」は「月」
である。
つまり、隊長が説明してくれた、図書室を利用できる該当日の部分を翻訳すると……
「そして該当日……つまり、お前がこの図書室を利用して良いのは1週間に1日の休日と1ヶ月に1日の月休暇だ」
ということになる。
そして、隊長が言うにはここで使われている週や月は、俺の前世で使われていた週や月と違うものらしい。
簡単に言うと……
1週間=10日
その内、平日が9日、休日が1日。
1ヶ月=31日
月によって1ヶ月の日数が変わること無い。
1ヶ月の最終日(31日目)は月休暇という休日である。
12ヶ月=1年
1年=372日。
という感じらしい。
つまり、俺はこれから平日9日を、家政婦長が教えてくれる1日と一人でやる8日の使用人見習いの仕事に使い、1週間に1回の休日と1ヶ月の最終日にある月休暇という休日に本を読める、という訳である。
ちなみに、メイシュウ村にはこういった暦の概念が無かった。
村にいる人々は村長を含めた全員が休日というものを設けずに毎日働いていた。
一応、あの村にも1年という概念はあった。
ただし、それは春夏秋冬という4つの季節が一巡したら1年、というものだった。
なので、村では週や月ではなく季節で物事を考えていたのである。
「よし、じゃあ説明を再開する」
隊長はそう言うと、俺の質問によって遮られていた本の閲覧に関する説明を再開した。
「この部屋を出る時に書物をお前が使う前の状態に戻さなかった場合、書物をこの部屋から許可無く持ち出した場合、その他これと同じ様な失態があれば閲覧許可を剥奪する」
「もし、書物に傷をつけた場合はその修繕費をお前に請求した上で閲覧許可を剥奪する」
「さらに、もしその傷が書物の閲覧を不可能にするものだった場合は厳重な処罰を下す。もちろんその時も閲覧許可は剥奪する。その他にも、他人をこの図書室に連れてくる、この邸宅の外へ書物を持ち出す、ここの書物を売買する、その他アーテス側に不利益を齎す行為、これらを許可無く行った場合も厳重処罰の対象となる」
「以上が、この図書室及び書物の閲覧に関する説明だ。良いか?」
隊長は説明を理解できたのかどうか聞いてくる。
「承りました」
俺は了承を返す。
(まあ要は「アーテス側が嫌がることをするな」ということだろう。今言ったこと以外にも変なことをすると閲覧許可を剥奪されるかもしれないな……気を付けておこう)
「さて……今日は該当日なので、日没までに部屋に戻ってくれば書物を読んでも構わない」
タタッ
そう言うと、隊長は入ってきた扉の方に体を向けた。
「では、くれぐれも罰を受けるようなことにはならないように」
タッ……タッ……
隊長は図書室から出て行った。
そして、隊長が図書室から居なくなったことで、この部屋に俺1人……となった訳では無かった。
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