第120話 一晩待て
ゴッ……スゥゥゥゥ……
俺とティークが扉に向かって歩いていく中、その扉が開かれていく。
タッ……タッ……
ティークは開かれたその扉をくぐり、邸宅の中へと入っていった。
タッ……タッ……
俺もティークに付いていき、邸宅の中へと入った。
そして……
「…………」
最初に入った場所は広大な広間になっていた。
広間の中心から奥に向かって巨大な階段が鎮座している。
ここは俗に言う、エントランスというやつだろう。
それも、貴族や富裕層の邸宅にあるような。
俺がエントランスの設計や内装に目を向けていると……
「付いてこい」
ティークが俺に付いてくるに言った。
タッ……タッ……
俺はティークの言葉に従って、付いて行く。
ティークはエントランスにある階段ではなく、階段の下に隠れるように設置された廊下の方へと歩いて行った。
俺はティークに付いて歩きながら、邸宅の内装を観察していた。
邸宅の内装は外から見たのと同じように石造りになっていた。
時折、木材が使われている場所もあるが、その木材は両親の家や村長の家で使われている物よりも明らかに上質な加工が施されていた。
装飾品や美術品が些か少ないような気がするが、それでも身分の違いを示すのには十分な威圧感があった。
タッ……タッ……タタッ
廊下を歩くこと1分、ティークは一つの扉の前で止まった。
ガッ……ススゥゥゥ……
すると、ここまで一緒に付いてきた隊長がその扉を開けた。
「入れ」
ティークは扉が開かれたことを確認すると、先に俺が部屋に入るように言ってきた。
「畏まりました」
タッ……タッ……
俺はその言葉に従い、部屋の中へと入っていった。
「失礼致します」
一応入室の断りを入れて入ったが、部屋の中には誰もいなかった。
部屋の中には、ベッドと小さな机、椅子、ドレッサー、クローゼットが置かれているだけであった。
この部屋は一目見ただけでは簡素な印象を受ける部屋であった。
だが、部屋の床や壁、天井、置かれている家具をよく見れば、俺の村にあったどの家具よりも上質な物であることは明らかであった。
(ここは……客間かな)
俺が部屋の中心で立ち止まっていると……
「ここで一晩待て」
ティークがそう言ってきた。
「今日はもう既に日没だ。なので、今日アーテス長様に会うことはできない」
「とりあえず明日になるまでこの部屋に泊まれ」
ティークは俺にここに泊まるように告げた。
「畏まりました。御配慮くださり有難う御座います」
俺はティークに了承を返しながら……
(よく、俺をここに泊めてくれるなぁ)
と思っていた。
ススゥゥゥ……ガッ
ティークが伝えることを伝え終わると、隊長がこの部屋の扉を閉めた。
そして、俺は部屋で1人になった。
「…………」
この部屋に来てから1時間ほどが経った。
俺は今、何をするでもなくベッドに座っていた。
そして……
クゥゥゥゥ……
(夕飯は出ないのか……)
俺は腹を鳴らしながら、そう思った。
どうやらこんな客間に泊めさせてくれても、わざわざ俺に出す夕飯は無いらしい。
バサッ
俺は夕飯が来ないことを認識すると、ベッドに横になった。
(あぁ……でも、これだけで至福だわ)
俺はこの体に生まれてから感じたことの無いふわふわ感に酔いしれていた。
(夕飯は出ないが、このベッドの快適さだけはしっかり享受しておこう)
俺はそう思いながら……
…………スゥ……スゥ……
寝た。
パァァァァァ……
窓からこの客間に夜明けの光が差し込んできた。
「…………」
俺は、夜明けの光に起こされるよりも先に起床して、今はベッドに腰かけていた。
ガッ……ススゥゥゥ……
俺が夜明けの来訪を認識するのと同時に、扉が開いた。
「来い」
扉を開けたのは隊長だった。
「畏まりました」
タタッ……タッ……タッ……
俺は隊長の言葉に従って、ベッドから立ち上がり扉へと歩いて行った。
タッ……タタッ
廊下に出ると、そこにはティークもいた。
「付いてこい」
タッ……タッ……
そして、ティークは俺にそう言って歩き始めた。
「畏まりました」
タッ……タッ……
俺はティークの後に付いて行った。
タッ……カッ……カッ……
ティークは昨日入ってきたエントランスまで戻ると、その中央にある階段を上り始めた。
タッ……カッ……カッ……
俺もティークに付いて、階段を上る。
カッ……タッ……タッ……
ティークは階段を上りきると、階段を上がって直ぐの目の前にある廊下の先へと向かった。
カッ……タッ……タッ……
俺もそれに付いて行く。
タッ……タタッ
そして、ティークは1つの扉の前でその足を止めた。
すると……
「俺はお前に奉仕と書物の閲覧許可を出した。だが、アーテス長様がそれらを拒否なされば、この話は無かったことになる」
ティークは急にそんなことを言ってきた。
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