第119話 石造り
カタカタカタカタ……
馬車が道をひた走る。
外の光を見ると、もう直ぐ日没になることを示していた。
ジョーマの襲撃から6時間ほどが経過した。
俺はカーテンの隙間から見える、外の景色を眺めていた。
すると……
(……!)
外の景色が暗闇一色になった。
暗闇は10秒ほど続いた。
(これは……)
そして……
パァァァァァァァ……
光が戻ってきた。
そこには……
(おぉ……)
森の景色が完全に排除された、建物と人の波があった。
俺がそれを見ていると……
(そうか、これは……)
「街を見るのは初めてか?」
ティークが俺の思考の途中で話しかけてきた。
どうやら、俺が外の景色に視線を向けていることに気付いたらしい。
「はい。左様に御座います」
俺はティークに初めてであることを告げた。
「そうか」
ティークはそう一言だけ応えた。
カタカタカタカタ……
街の喧騒は馬車の走行音で掻き消されていたが、そこにある賑やかさは目で見るだけでも分かった。
馬車は街の中を駆けていく。
しばらくすると、街の景色が消えた。
今、見えているのは草原の景色であった。
その景色が数分続いた。
そして……
(っ……あれは……)
俺の視界に一瞬、鉄の柵のようなものが見えた。
すると、次の瞬間……
外の景色を生垣が支配した。
今、馬車の周りには庭園のようなものが広がっていた。
その庭園の中を数十秒ほど走っていると……
カタカタカタ……カタカタ……カタ……
馬車が徐々に速度を落とし始めた。
そして……
……カタッ
馬車は停車した。
キィッ……
停車した馬車の扉が外から開かれた。
「アーテス邸に到着致しました」
扉を開けた護衛が馬車内にいるティークにそう告げた。
その護衛の言葉を聞いた隊長は……
「おい、降りろ」
俺から先に馬車を降りるように言ってきた。
「畏まりました」
タッ……ダタッ……
俺は隊長の言葉に従って直ぐに馬車から降りた。
……タタッ
(大体50キロメートルくらいかな)
馬車から降りた俺はここまでの道程を予測した。
フッ
そして、俺は自分が降り立った地面を見た。
その地面は今までの地面では無かった。
今、俺は土では無く、舗装された石畳の地面に立っていた。
(なんか変な感じだ)
俺はこの体に生まれてから石畳の上に立ったことが無かったので、不思議な感じが少しした。
フッ
(これは中々……)
そして、俺は地面から正面に視線を変えた。
そこには扉が待ち構えていた。
ただし、両親の家や村長宅の玄関の扉とは別次元の物であった。
その大きさは村長宅の扉の数倍であった。
使われている素材は木製だから村長の家と同じはずなのに、明らかに材質が違う上、加工のレベルも違った。
一言で言えば、荘厳な扉であった。
フッ……スッ……
そして、俺は正面から目線を外し、横や上に視線を巡らせる。
しかし、俺の視界には石しか見えなかった……否、石造りのものしか見えなかった。
石造りの柱、石造りの壁、石造りの窓、石造りの装飾……村ではお目に掛かれない石造りの建造物だった。
俺の目の前には巨大な邸宅が鎮座していた。
タッ……ダタッ……タタッ
タッ……ダタッ……タタッ
俺が目の前の邸宅を見ていると、馬車からティークと隊長が降りてきた。
チラッ
ティークは馬車から降りるや否や、俺の方を見ると……
「行くぞ」
そう告げた。
タッ……タッ……
そして、ティークは邸宅の扉へと向かって歩き出した。
「…………」
俺もそれに追随するように歩き出した。
タッ……タッ……
タッ……タッ……
俺とティークが扉に向かって歩く。
そして……
ゴッ……スゥゥゥゥ……
俺とティークが扉に向かって歩く中、扉が開かれていった。
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