第117話 バケモノを超える
ドザドザドザドザドザ!!!
1人の護衛に襲い掛かるジョーマ。
「…………」
標的となっている護衛はそのジョーマを待ち構えるように、剣を構えていた。
ドザドザドザドザドザ!!!
「…………」
ジョーマと護衛が急接近していく。
ク゛ッ ウ゛ウ゛ッ!!!
「…………」
ジョーマが一声吠える。
そして……
ドジャジャッッッ!!!ウ゛ア゛ア゛ッッッ!!!
遂に、ジョーマが自身の両腕をその護衛へと振り下ろした。
「…………」
その護衛は自分にジョーマの両の爪が襲い来る様子を見ている。
そして次の瞬間……
ドザァッッ!!
ジョーマは護衛がいる場所に覆いかぶさるように倒れ込んだ。
しかし……
先ほどまでそこにいたはずの護衛はジョーマの下敷きになるどころか、その場から消えていた。
護衛を探すと……
その姿は地面に倒れ込んだジョーマのすぐ横で見つけられた。
彼は持っていた剣を振り放つような姿勢でしゃがみ込んでいた。
そして、彼の横で倒れ込んでいるジョーマを見ると……
ク゛ゥゥゥ……
両腕が無くなっていた。
ジョーマから1メートル(m)ほど離れた地面に目を向けると……
そこにはジョーマの両腕が無造作に転がっていた。
護衛に襲い掛かったはずのジョーマはその爪を護衛に立てるどころか、腕ごと爪を奪われてしまっていた。
ウ゛ウ゛ウ゛ゥッ!……ドッザザ、ドザンッッ!!
ジョーマは両腕が無くなったことで自分の身体を支えることが出来なくなっていた。
地面に突っ伏してしまったジョーマは両腕を使わずになんとか自分の身体を立ち上がらせようとするが、全然上手く出来ていなかった。
そして次の瞬間……
ク゛ウ゛……ズスッ
ジョーマの首と胴体が離れた。
ジョーマの首元には先ほどの護衛が剣を振り抜く姿勢で立っていた。
ジョーマの首は彼に切り落とされたのだ。
俺はここまでの"一瞬"の様子を見て……
(……速すぎ)
と思った。
ジョーマが護衛にその爪を立てて襲い掛かろうとした瞬間、その護衛はその場にしゃがみ込んだ。
その次に、腕を伸ばす、体を回転させる、横に飛ぶ、という3つの動作を彼は同時にやってのけていた。
すると、彼の持つ剣が彼の体の回転に合わせられて、ジョーマの両腕を斬り飛ばしていた。
そして、彼は両腕を斬り飛ばしたと同時に、横に飛ぶことで倒れ込んでくるジョーマの圧し掛かりから逃れていた。
これがジョーマの首が斬り飛ばされる前に起きた一連の出来事であった。
そして、この出来事に掛かった時間が尋常では無い短さだった。
俺がギリギリ認識できた護衛の動作が先ほどの3つの動作であり、それらもどういう風に動いていたのか詳しく分からないほどの速度で行われていた。
おそらくあの瞬間に瞬きをしていたら、いつのまにかジョーマの両腕が斬り飛ばされていた光景になっていたと思う。
つまり、護衛の行動は瞬きの一瞬で行われるほどの速さだったかもしれない、ということである。
そして……
ク゛ウ゛ア゛ッッ!!!
ウ゛ウ゛ウ゛ッ!!
ア゛ク゛ゥゥゥ……
……ク゛ア゛ッッッ!!
ドザドザドザドザドザ!!!
今のジョーマと護衛の闘いと時を同じくして、残り5頭のジョーマも護衛達に襲い掛かっていた。
しかし、その結末は先ほどのジョーマと同じものになっていた。
あるジョーマは、いつのまにか自分の懐に入り込んできた護衛に剣で首を刎ね上げられていた。
あるジョーマは、護衛の1人に襲い掛かったが、その護衛に自分の攻撃をバックステップで躱され、次の瞬間に自分の体を剣で突き刺され、再度襲い掛かっても、またバックステップで躱され、次の瞬間に剣で突き刺され、護衛にバックステップと突き刺しを繰り返させられて、最終的に絶命していた。
あるジョーマは、1人の護衛に両腕を切断させられ、次の瞬間には別の護衛にカバーされるように首を斬り飛ばされた。
あるジョーマは、護衛の1人に襲い掛かったが、そのジョーマの攻撃に合わせるようにその護衛が体を回転させながらそのジョーマの身体の周りを回っていったせいで、いつのまにか後方を取られており、そのまま後ろから首を斬り飛ばされていた。
ジョーマと闘った護衛達の動きはどいつもこいつも瞬きの間に終わるような速度であった。
そして、全員がジョーマとの闘いを一方的に終わらせていた。
ク゛ウ゛ゥッ……
「…………」
ここまでで5頭のジョーマが倒されたが、もう1頭が残っていた。
そのジョーマは体長4メートル(m)超えの一番デカいジョーマであった。
そして、そのジョーマと護衛の1人が対峙していた。
彼らは他のジョーマや護衛達よりも一番長く睨み合っていた。
しかし……
ウ゛ア゛ッッッ!!!ドジャッッッ!!!
ジョーマの方が痺れを切らしたようで、ジョーマが護衛へと襲い掛かった。
ドザドザドザドザドザ!!!
そのジョーマは一番デカい図体をしているのにも関わらず、その速度や加速は他のジョーマよりも断然に速かった。
ドザドザドザドザ……ドジャッ!!
そして、一瞬で護衛の元に辿り着き、襲い掛かろうと両腕を振るう。
しかし……
ザッ!
襲い掛かられた護衛はジョーマの腕が自分に襲い掛かる寸前、飛び上がった。
彼は自分の足で弧を描くようなジャンプをした。
そのジャンプによって、彼は頭が地面に、足が空に向いた逆さまの姿勢で空中にいた。
さらに、彼の頭は地上から3メートル(m)ほどの場所にあった。
そして、彼の頭の下にはジョーマの首があった。
次の瞬間……
ズサッ!
彼は真下にあるジョーマの首に向かって剣を振るった。
ウ゛……
それによって、そのジョーマの首は飛んでいった。
スゥゥゥゥ……
そして、首を斬り飛ばした護衛は最初に飛び上がった勢いのまま4メートル(m)超えのジョーマの体を飛び越えていき……
……ザッ
元居た場所から6メートル(m)ほど離れた場所に着地した。
…………
…………
…………
…………
…………
…………
この道に現れ、護衛達に襲い掛かった6頭のジョーマは全て死体となって地面に伏していた。
俺はその様子を見ると……
(バケモノがさらなるバケモノに殺されたんだが?)
と思った。
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