第115話 4回ノックの緊急停車
……パチ
俺は目を開ける。
(……っ、痛ぇ)
俺は、臀部に、ジンジンとした痛みが走ったことに気付く。
どうやら、長時間座っていたせいで、臀部を痛めたようだ。
「…………」
正面に目を向けると、ティークが既に起きていることが分かった。
彼は、目の前の焚火を眺めていた。
チラッ……フッ
ティークは俺が起きたことに気付くと、目線を一瞬こちらに向けるが、すぐに火へと目線を戻した。
スススッ
「…………」
俺は、ティークに最敬礼だけしておいた。
フッ
俺はティークから目を外すと、周りの様子を見た。
「…………」
スゥ……スゥ……
スゥ……スゥ……
「…………」
「…………」
スゥ……スゥ……
俺とティークの周りでは、起きて護衛の任務に就いている護衛と、寝ている護衛に分かれていた。
俺が目を開けてから、1時間ほどが経つと……
ムクッ
ススッ
スンッ
それまで寝ていた護衛達が起き始めた。
パァァァァァァァ
それと同時に、空に太陽の光が戻り始めた。
「…………」
馬車で俺の隣に座っていた護衛が夜明けが来たことを確認すると……
ザッ……ザッ……ザザッ
「ティーク様。移動を再開致します。御乗車の方宜しくお願い致します」
その護衛はティークに移動の再開を告げた。
「ああ」
ザザッ
ティークはその護衛の言葉に了承を返すと、椅子から立ち上がった。
「失礼致します」
キッ……キキキッ……ギキィ
その護衛は今までティークが座っていた椅子を持ち上げると、それを折り畳んだ。
ザッ……ザッ……ゴトッ
そして、その椅子を馬車のトランクに置いた。
ザッ……ザッ……
その間にティークは馬車の所まで歩いて行った。
ザッ……ザッ……
俺もそれに付いて行く。
「せーの」
「せーの」
椅子をトランクにしまった護衛は、近くにいた別の護衛と共に地面に置かれていた馬車の車体部分を持ち上げて、馬車の駆動部分に乗せた。
カチャ……キキィッ……カチャンッ
そして、車体部分と駆動部分の接触部分を少し弄ると……
「どうぞ」
ティークに馬車に乗るように言った。
ダタッ
ティークは黙って馬車に乗り込んだ。
ダタッ
「失礼致します」
馬車で俺の隣に座っていた護衛も一言告げると、馬車に乗り込んだ。
ダタッ……タッ……タッ
「失礼致します」
そして、俺も続くように馬車に乗り込んだ。
ティークと護衛は昨日と同じ位置に座っていたので、俺も昨日と同じ席に座ることにした。
ガッ……カカカカカ
そして、俺が馬車に乗ると直ぐ……馬車は移動を再開した。
……コッコッコッコッ
馬車での移動を再開してから1時間が経った頃、不意に俺の隣に座っていた護衛が御者台がある方の馬車の壁にノックを4回した。
すると……
カタカタ……カタッッ
馬車が急停車した。
(……なんだ?)
俺がその様子を不思議に思っていると……
「何が来た?」
ティークが俺の隣に座っている護衛にそう問いかけた。
護衛はそれに対して……
「ジョーマです」
と答えた。
(ん?ジョーマ?)
護衛の発した「ジョーマ」という単語に俺が疑問を感じていると……
シャッ
馬車の窓に掛けられているカーテンが開かれた。
「…………」
カーテンを開けたのは外にいた護衛の1人らしい。
フッ
その護衛は俺の隣に座っている護衛に視線を向けた。
そして……
「隊長。敵は?」
と聞いてきた。
俺の隣に座っていた護衛はその質問に……
「ジョーマ、6、西」
と答えた。
シャッ
それを聞いた護衛はカーテンを閉めた。
俺は2人の護衛のやり取りを聞いて……
(こいつって隊長なんだ)
隣の護衛を見ながら、そんなことを思っていた。
ザッ……ザッ……
ザザッ、ザザッ
ザッザッザッザッ
ザザッ……ザッ
先ほどの護衛がカーテンを閉めてから、外で護衛の足音が数秒ほど響いた。
…………
しかし、その響きは直ぐに止んだ。
「…………」
チラッ
俺はカーテンの隙間から外を観察することにした。
すると……
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
馬車の周りで護衛達が馬車を背にして立っていた。
フッ……スッ
次に、彼らは互いにアイコンタクトを送り合った。
そして……
……スゥゥゥゥ
彼らは腰に刺さっていた棒を抜いた。
その棒は棒にしては先がありえないほど尖っていた。
その棒の両端には面が無く、代わりに線があった。
そして、それは鈍色の光を放っていた。
俺はそれを見ると……
(……剣だな)
と思った。
彼らが腰に携帯していた物は剣であった。
(何かしらの武器だとは思っていたが……ここまで古典的な武器だとは……)
俺は、彼らが剣を武器として持っていることに対してそう思った。
だが続けて……
(まあ、もう今更か)
とも思った。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
護衛達はその剣を道の周りを囲む森の方に向けて……いや、構えていた。
(襲撃か?)
俺はその様子を見て、何かの襲撃が来るのか?と思った。
(そういえばさっき、敵がどうだとか、ジョーマが来たとか言ってたな)
俺は護衛達が剣を向けている森の方を注視した。
しばらく見ていると……
ッッッ
(!……何かいたな)
俺は木の陰から別の木の陰に何かが移動したのを発見した。
ッッ……ッ…………ッッッ
その何かは木の陰に隠れたり、木の陰から現れたりしながら、着実にこちらへと向かって来ていた。
そして……
……ザザッ
遂に、その何かは森の中から道に現れた。
それは……
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