第114話 焚火を挟んで
「失礼致します」
俺は一言断りを入れてから、焚火を挟んだティークの正面に座った。
「…………」
ティークは俺に視線を向けることなく、焚火を眺めていた。
カチャカチャ……ススッ
すると、護衛の1人が馬車のトランクから何かを取り出していた。
ザッ……ザッ……
その護衛はその何かを持ってこの焚火の場所へとやってきた。
彼が持っているのは、鉄製の鍋と、野菜や肉、調味料と思われるものであった。
そして……
「失礼致します」
カチャンッ
彼は鍋を焚火にかざすように、石製の器に置いた。
トトッ
彼は次に、油のようなものを鍋の中に入れた。
それから数分待つと……
スッ
彼は鍋の中に肉を入れた。
ジュゥゥゥゥ!!!
肉は油と鍋に熱されて、大きな音を立てた。
スッ……シュゥゥゥ!!!
そして肉がある程度焼けると、次は野菜を鍋に入れた。
シュゥゥゥ……
数分経つと、鍋の中には出来上がった料理があった。
その料理は簡易的な野菜炒めのようなものであったが、調味料がふんだんに使われている分かなりおいしそうだった。
(というか、この体に生まれてからこんなに調味料が使われた料理は食べたことが無いぞ)
と俺は思った。
カタッ……ササァッ
そして、その料理はいつのまにか護衛が持ってきていた食器に移された。
「どうぞ」
護衛は料理が盛られた食器をティークに渡した。
そして……
(……もう無いな)
料理はもう無かった。
護衛が作った料理は1人前だけであった。
(まあ、そりゃそうか)
俺はその様子に、納得と落胆をした。
すると……
「おい」
そんな俺に、馬車で隣に座っていた護衛が呼びかけてきた。
ススッ
俺は彼の方に体を向けた。
「…………」
そんな彼の手には何かが置かれていた。
「ほら」
スッ
彼はそれを俺に手渡してきた。
「有難う御座います」
俺は反射的に礼を言うと、今受け取った物を確認した。
(クッキー……かな?)
それはクッキーのようなものであった。
「食え」
彼は俺にこのクッキーを食べるように言ってきた。
(まあ、そういう感じだよな)
どうやら、このクッキーが俺の食事らしい。
「頂戴致します」
俺は護衛にそう告げた。
だが、このクッキーを食べるのは一旦待った。
「…………」
俺は正面に座っているティークを見る。
コトッ、コトッ……ハフッ
ティークはスプーンを使って手に持った料理を食べ始めた。
(……よし)
ハァァ……カッ!
俺はティークが食事を始めたことを確認すると、それに追随するようにクッキーを食べ始めた。
カッ!カカカ……カクッ!
俺は一口目のクッキーを、力を込めて食べることに成功した。
(……固い、甘くない、不味い)
そのクッキーは俺の知っているクッキーとは違った。
チッ……チチチッ……
目の前で焚火が燃えている。
食事を終えると日没が過ぎ、灯りが目の前の焚火だけになっていた。
「…………」
俺とティークはその焚火をじっと眺めていた。
チラッ
しかし、ティークが焚火を眺めるのをやめて、俺に視線を向けて来た。
「お前……村では何をしていた?」
ティークは俺にそんなことを聞いてきた。
加えて……
「冗長にならないように……だが、詳しく話せ」
そんな条件付けをしてきた。
「畏まりました」
俺はティークの質問に答えることにした。
「……という具合で御座いました」
俺はそう言って、話を締めくくる。
俺は、ティークの質問に対して、村でしてきたことの"真実のみ"を話して聞かせた。
具体的には、村長の手伝いをしたり、村や森の浅い所で散策をしたり、村長から勉強を教わったりしたことを話した。
この内容に嘘は無いが、能力に関することやその他話せないことについては一切触れなかった。
俺の答えを聞いたティークは……
「そうか」
と一言だけ告げた。
「俺に質問は無いか?」
俺の答えを聞いたティークは、次にそう聞いてきた。
俺はそれに対して……
「現在、ティーク様はアーテス長様の下に向かわれているかと存じます。では、具体的にはどこに向かわれているのでしょうか?」
そう質問した。
この質問に対してティークは……
「DUIIYPアーテスのアーテス邸に向かっている」
と教えてくれた。
しかし、最初の「Duiiyp」という言葉の意味を俺は知らなかった。
なので……
「申し訳御座いません。『Duiiyp』とはどういった意味なのでしょうか?教えて頂けると幸いです」
俺はその意味を聞くことにした。
「……アーテスの中で最も栄えている場所、といった意味だ」
ティークは俺の質問にそう答えた。
「深謝致します」
俺はティークに礼を告げた。
(州都、都市といったところかな)
俺は「Duiiyp」という言葉が「州都」や「都市」といった意味の言葉だと考える。
俺は次いで……
「そちらにはどのくらいで到着するのでしょうか?」
目的地への到着時間を聞いた。
「明日の昼過ぎには着く」
ティークはそう答えた。
ティークは到着時間の質問に答えると……
「もう終わりとする。俺は寝る」
…………
そう言って、目を閉じた。
どうやら、質疑応答タイムは終わったらしい。
…………スゥ……スゥ
ティークは寝息を立て始めた。
(……俺も、寝ておくことにするか)
そして……
「…………」
俺も地面に座ったまま、目を閉じた。
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