第113話 人が作った不自然な道
カタカタカタカタ……
馬車が道を走っている。
カタカタカタ……カタカタ……カタ……
すると、馬車が徐々に速度を落としていった。
そして……
カ……タ……
停車した。
ザッ……ザッ……
この馬車に近づいてくる足音がする。
ザザッ
その足音が馬車の前で止まると……
「失礼致します」
キィッ……
馬車の扉が開かれた。
「ティーク様。本日はここまでと致します。御休憩の準備を致しますので、御降車の方宜しくお願い致します」
馬車の外にいた護衛の1人が扉を開けたようだ。
そして、彼は今日の移動が終了したことと、ここで休憩を取ることをティークに伝えた。
「…………」
ティークは返事をしなかったが、その護衛に視線は向けていたので、了承したということなのだろう。
俺がティークの様子を見ていると……
「降りろ」
俺の隣に座っていた護衛が、俺に降りるように言ってきた。
「畏まりました」
タッ……ダタッ……
その言葉に従って、俺は馬車から降りた。
ザッ……ザザッ
「…………」
馬車から降りると、俺は周りの様子を確認した。
馬車が停車した場所はこれまで走ってきた道幅よりも少し開けた場所になっていた。
スッ
横の方を見ると、太陽がもう少しで消えてしまう様子が確認できた。
(日没まで後30分といったところかな)
スッ
そして、俺は自分の足元に目を向けた。
そこには今まで通ってきた道の地面があった。
俺はそれを見ると……
(なんか不自然なんだよな)
と思った。
道というものは整備しようと思えば、どこまでも綺麗にできる。
だが、それを行うためには資金や技術など、様々なものが必要になる。
そして、メイシュウ村やアーテスの文明レベルではコンクリートを敷くことが出来ない可能性がある。
であれば、彼らが出来る道の整備は道に生えている木や草を取り除いて、その後人が踏み固めることで道を作る……そんなやり方になると思う。
実際、この道にコンクリートは敷かれていないので、土の道になっている。
では、俺は何を不自然に思っているのか?
それは、この道に人が踏み固めただけではできないような綺麗さと整然さがあることだ。
例えるなら、ロードローラーを使って平らに均してできた道、といった感じだ。
だが、ロードローラーを使えるのならコンクリートくらい敷けるような気がする。
(人間が作った道なのだから、元々自然ということは無い。だが……)
要するに、ここら辺の文明とこの道の綺麗さや整然さが合っていないことが不自然、ということだ。
(それに、ここまで走ってきた道に自動車が通れないような悪路は無かったしな)
ダタッ……ザッ……ザザッ
ダタッ……ザッ……ザザッ
俺が道に不自然さを感じていると、馬車からティークと俺の隣に座っていた護衛が降りて来た。
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
2人が馬車から降りると、外にいた護衛の内の2人が馬車に近づいた。
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
2人の内1人は馬車の後方部分に、もう1人は前方部分に行った。
カカッ……コキィッ……
そして何やら、彼らは馬車の車体を弄っていた。
……キキッ
「よし、行くぞー」
「ああ」
彼らは車体を弄るのをやめると、そう言い合った。
すると……
「せーの」
「せーの」
ガゴッ!
彼らは馬車の車体を取った。
掛け声と同時に、彼らが馬車の車体部分を持ち上げたことで、馬車が車体部分と車輪などの駆動部分に分かれた。
地面には車体の底と駆動部分だけが残されていた。
「せーの」
「せーの」
ズザッ
そして、彼らはもう一回掛け声を掛けると、持ち上げた馬車の車体を近くの地面に置いた。
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
すると、周りにいた複数人の護衛が地面に残された馬車の車体の底と駆動部分に近づいていき……
カチャカチャ……ティッ、トトッ
トティ……チャチャッ……
ガタタッ……カタカタッ……
車体の底に乗っていた何かを取り出した。
彼らが取り出したのは、2つの石と石製の器、何かの植物、木炭、そして木製の何かであった。
(なるほど、トランクか)
どうやら、馬車の車体の底は物を積み込めるトランクになっていたようだ。
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……
トランクから荷物を取り出した護衛達は、この開けた場所の中心に歩いて行った。
……ザトッ
中心に着くと、護衛の1人が石製の器を地面に置いた。
ササッ
次に、別の護衛が何かの植物をその器の中に入れた。
チッ!カチッ!
そして、また別の護衛が器の中で2つの石を打ち合わせ始めた。
カチッ!チチッ!
しばらくすると……
……チッ、チチチッ
先ほど入れた植物が火を帯び始めた。
コトッ
最後に、彼らは木炭を器の中に入れた。
そして、木炭に火が灯った。
どうやら、彼らは焚火の準備をしていたようだ。
ギキッ……キキキッ……
焚火の準備を終えた護衛の内の1人が一緒に持ってきた木製の何かを広げ始めた。
ギッ!……ザッ
そして、彼は広げた物を焚火の近くの地面に置いた。
それは、椅子であった。
彼が持ってきたのは折り畳みの椅子のようだ。
「ティーク様。どうぞこちらへ」
彼はその椅子を手で示しながら、ティークに座るように言った。
「…………」
ザッ……ザッ……
ティークはその椅子に無言で近づいていき……
……キィ
その椅子に座った。
ザザッ
俺はティークが座るのを見ると、馬車で隣に座っていた護衛に体を向けた。
「恐れ入りますが、私は座っても宜しいのでしょうか?」
そして、俺はその護衛に自分も座っていいのかを尋ねた。
「ん?ああ、いいぞ。お前は焚火を挟んだティーク様の正面に座れ」
その護衛は座る許可と座る位置を指定した。
「有難う御座います」
ススッ
俺はその護衛に敬礼をして、感謝を告げると……
ザッ……ザッ……
ティークの正面に歩いて行った。
ザッ……ザザッ
そして、指定された場所に来ると……
「失礼致します」
ザッ
ティークに一言告げてから、その地面に座った。
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