第11話 再現
(む?むむむ……んむ!……ふんっ!)
俺は、自分に掛かっている布に、念を送る。
(ふむむむむむ……むっ!!)
念じる力は立派だと思うが、それは、何の形にもなっていなかった。
(むんっ!……はぁ、はぁ、はぁ)
(はぁぁ……全然、だめだな)
練習を始めた時に沈んだ夕日は、一周して、もう一度夕日になってしまった。
(丸一日も、経ったのか)
(寝たり、飯を食ったり、していたから、正確には丸一日練習をしていたわけではないが、最低でも数時間は練習していたはず)
(だが、未だに、成功はしていない)
(それなのにも関わらず、俺には、飛翔現象を起こせる、という確信がある)
(ここまで確信している、ってことは、俺が飛翔現象を起こせることは、ほぼ確実、と考えてもいいのかな?)
(一応、俺の精神異常、という可能性もあるが……)
(とにかく、ここまで確信できているのであれば、疑うことは一切やめて、できることを前提にした方が良いな)
(そして、もっと、やり方を工夫する必要があるな)
(だが、工夫する、といっても、何か難しいことを考える必要は無い)
(もう一度できるようにしたいなら、できた時と同じことをすればいい)
(最初に成功した時と、同じ状況を完全に再現すれば、理論上は、必ず成功するはず)
(それに、完璧な再現に失敗して、飛翔現象が起こせなくても、何かしらのヒントを得られる可能性があるしな)
(そうと決まれば、さっそく状況再現……と行きたいが)
(まずは、最初に飛翔現象を起こした状況を、思い出す必要があるな)
(ん~……やはり、飛翔現象が起きた時に、特に重要そうだったのは……)
(黒い奴と、黒い奴によって引き起こされた、俺の激情かな?)
(黒い奴以外に、重大な出来事なんて考えつかないしな)
(でも、状況再現をするために、黒い奴を、もう一度ここに呼ぶことはできないし、したくない)
(だが、黒い奴によって引き起こされた激情なら、再現できるんじゃないかな?)
(黒い奴によって引き出された、恐慌や奴への強烈な嫌悪感を、思い出してみればいい。それとも、強い気持ちなら、感情の種類は、なんでもいいのかな?)
(よし、とりあえず、感情を昂らせてみるか)
(だが、感情を昂らせる、と言っても、「はいポンッ」と、すぐにできるわけじゃないな)
(まあ、思い出し笑い、ならぬ、思い出し怒り、でもやってみるか)
俺は、感情を昂らせるために、とある過去の日を思い起こす。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「この作品を応援している!」
と思ったら
下にある【☆☆☆☆☆】から作品への応援をしていただけるとうれしいです!
あなたのお好きな☆の数で大丈夫です!
ブックマークもいただけると幸いです。
よろしくお願いいたします!