第01話 声
「……っ! ……、…………っ!」
音が、俺の耳を、揺らした。
「………、………! ………っ! ………んっ!」
俺は、意識を、覚醒させる。
(なにこれ……?)
「――、――、――――い! ――ぅ!」
「……! ……、 …………え!」
(さっきから、聞こえてくるこの音は、なんだ?)
俺は、先ほどから聞こえてくる音に、意識を向ける。
「…………っ!」
「――ゅ!」
(なんなんだ……? この音は?)
(ん? もしかして……?)
俺は、耳を、研ぎ澄ます。
「――! ――――ぁ! ―――あ!」
「……っ! …………!」
(この感じは、"声"、だな)
(だけど、くぐもってるような声で、よく聞き取れないな)
(ん……?)
(そもそも、どうして、くぐった声が、俺に聞こえてくるんだ?)
(そもそも……、俺は、何をしてるんだ?)
(さっきまで、俺は、何をしてた?)
(声が聞こえる前の、記憶が……無い)
(なぜ、今までの記憶が、ない?)
(ということは、もしかして……)
俺は、記憶を、巡らせる。
(いや、長期記憶の方に、問題は無いみたいだ)
(どうやら、自分のことすら分からないレベルの、記憶喪失では無いらしい)
「ここはどこ? わたしはだれ?」で言えば、「ここはどこ?」には答えられないが、「わたしはだれ?」には答えられる、感じだ。
(んー……。どうしちまったんだ、俺は……)
すると……
(ん? これは……光?)
光が、俺の目に、侵入してくる。
そして……
(ちょ、うわっ! まぶしっ!!)
光が、強烈な輝きに、なった。
すぐに、俺は、目を閉じた。
すると……
(ん? なんか……すっきり、してきた)
俺は、頭に、謎の解放感を感じ始めた。
(うおっ、うお? お、おぉ?)
しかも、その解放感は、頭から下へ、徐々に、広がっていく。
くび、胴体、あし……と、解放感が、俺の全身に広がる。
そして、足先にまで、解放感が達した。
しかし……
(うぅ……まぶしい)
先ほどから、ずっと、俺は、光に苦しんでいた。
(それに、なんだか息苦……)
さらに、俺は、新たな苦しみを、味合う。
(じっ! 息苦じっ! くるしっ! ぐるじぃッ!)
肺に、ぜんぜん、空気が送られていない。
(グるじぃ! しぬッ! ヂぬっ!!)
俺は、生死のラインで、反復横跳びをしている。
すると……
……ドッッ!
背中に、衝撃が、走った。
(!? ……ッ! ……ガッ、カハッ!!)
俺は、呼吸を、取り戻した。
どうやら、背中への衝撃が、俺を死に際から、引っ張り上げたようだ。
(はっ、はっ、はぁぁ)
さらに……
「おぎゃ! おぎゃああ!! ぎゃ! あああああ!!!」
新たな声が、響いた。
(!?)
(なんだ? この声は?)
(この声……、"赤ん坊"、か?)
(なんで、赤ん坊の声が、俺に、聞こえてくるんだ?)
そして……
「bao、iuasdi! asd、gihoana! iowe!」
意味不明な言葉も、聞こえてきた。