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第24話 開店準備②

 王都内の空き店舗を3つ紹介してもらった私は、内見を終えて商業ギルドに戻ってきた。

 再びピノと、開業に向けた相談のテーブルにつく。


「いかがでしたか?」


「私としては最後に見た建物が良かったなぁ。広さがちょうどいいし、人通りもちゃんとあるみたいだし」


「さすがですね。お金を気にしないのであれば、あの最後の物件がおすすめです」


「ていうことは、やっぱりちょっとお高いの?」


「他の2つに比べれば……というところでしょうか。せっかくですから、資金の計算をしてみましょう」


 そういうと、ピノは手元の紙に表を作り、項目と数字をたくさん書き込んでいく。

 店舗の買取価格、改装費、宣伝費、開店後の様々な運転資金などなど。

 分かってはいたけれど、やっぱりたくさんお金がかかるんだなぁ。


「こんなところでしょうか……。そういえばミオンさん、今さらなんですが魚って腐りますよね? 新鮮なまま運ぶのに、何か経費がかかっていたりしますか?」


「あーそれはね……」


 私はクレシュから買った転移装置の話をする。

 ピノなら、量産すればお金の匂いがする! とか言ってきそうかと思ったけど、そんなことはなかった。


「なるほど、クレシュさんですか……。竜血茸をたまたま拾ったり、あの方に発明品を売ってもらったり……。ミオンさんはつくづく運が良いですね」


「意外だね。量産して儲けようとか考えないんだ」


「私のことどんな目で見てるんですか!? というか、そもそもクレシュさんの発明品を再現するなんて無理ですよ。分解して全く同じように作っても、機能が再現できない。どんな職人をもってしても真似できないから、クレシュさんは天才と言われるんです」


「やっぱりすごい人なんだ」


「もちろんですよ。でも転移装置があるとなると、輸送費が0になりますね。これは大幅なコストカットになります。そうすると……」


 ピノは表を修正して言った。


「開業してからのある程度の期間分の運転資金も含めまして……3,300万Gといったところですね。あくまでも目安ですが」


「大金だねぇ」


「店舗を買い取るということと、大規模に改装するということでコストがかかりますね。普通の開業資金よりは、かなり高くなっています。2倍くらいでしょうか。でも払えますよね」


「うん。おかげさまで潤ってるからね」


「ではこの方向で話を進めていきましょう。ちなみに別途で様々な手続きの手数料として、92万Gを商業ギルドがいただきます」


 やっぱりお金を取るんかいっ!

 私はジトっとした目でピノを見る。

 すると彼女は、冷静に付け加えた。


「いろいろな事務手続きを全てやって差し上げますから。さすがにボランティアではないので」


「まあ仕方ないか。これからよろしくね」


「はい。頑張っていきましょう」


 お金の面は心配いらない。

 あとはいかにうまく宣伝して、生魚という文化にないものを受け入れてもらうかだ。

 そこはちょっとばかし、村のみんなに手伝ってもらおうかな。


「ちなみになんだけどさ」


 私は気になっていたことをピノに尋ねる。

 魚の店をやるとして、日本人ならぜひ聞いておきたいことだ。


「商業ギルドって、ヒノ国と取引はあるの?」


「ヒノ国……ですか。それはまたどうして?」


「手に入れたいものがあるんだよ」


 手に入れたいもの。

 もちろん米と醤油だ。

 塩でも十分美味しいけれど、たいていの魚は醤油があれば美味しさが何倍にもなる。

 それに米があれば、寿司や海鮮丼ができるかもしれない。

 メニューのバリエーションが広がるわけだ。


「残念ですが、ヒノ国との取引はないんです。何せはるか遠い国で、ほとんど関わりがないものですから。ご期待に沿えずすみません」


「そっかぁ……。じゃあ仕方ないね」


「申し訳ないです。でも何か、ヒノ国に関する情報が入ったらお教えしますよ」


「うん。ありがとう」


 ニクメシの店の主に教えてもらったヒノ国の存在。

 いつかきっと、自力で行くつもりではいた。

 今はお店を軌道に乗せることに集中して、余裕ができたら自分で行ってみよう。

 1回行ってしまえば、ヒノ国の地力石を手に入れて瞬間移動できるようになるからね。

 米も美味しい状態で運ぶことができる。

 寿司と海鮮丼は、開店1周年とかのメモリアル商品に持ってくるのも悪くない。


「他に何か聞いておきたいことはありますか?」


「うーん、今は特にないかな。また何か出てきたら、その都度相談させてよ」


「もちろんです。何でも気軽にご相談ください。無料で、お答えしますので」


 やけに「無料」の部分を強調してピノが言う。

 そんなにがめついと思われるのが嫌なのかな。

 がめついと思うんだけどな。

 まあ、私も向こうも冗談で言ってるのは分かってるんだけど。


「それでは今日はこの辺で。また後日、正式な契約書などいろんな書類にサインをしていただきます」


「はーい。じゃあよろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


 異世界海鮮料理店。

 うーん、楽しみだなぁ。

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