ヲタッキーズ71 人生補完計画
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第71話「人生補完計画」。さて、今回は秋葉原に幼女コスプレ系の新興宗教が進出w
背後に、血統主義者である教祖の近親交配願望を見て取ったヲタッキーズは、神田リバー沿いの聖戦へと…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 78番目の妻
黄昏に沈む首都高1号上野線。
全てが黄金色に染まる"魔の時間帯"だ。
時空が歪み時が止まる…その時、幼女が!
「あぶないっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その首都高を眼下に見下ろす御屋敷。
「スピア。日曜の夜まで留守にするわ」
「ミユリ姉様、お楽しみ?テリィたんとどちらまで?」
「ナ・イ・シ・ョ」
私服でルンルンお出掛けミユリさん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
首都高の路上に幼女メイドが倒れてるw
後続の大型トレーラーは急ブレーキだ!
「あぁ何てこった?!大丈夫か?おい、メイドさん!」
たちまち渋滞が始まりクラクションの嵐←
運転手は発煙筒を投げメイドに駆け寄るw
「生きてる!誰か首都高HPを呼んでくれ!誰か!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。上野線は全面封鎖だ。
「ジャドーの人?私は首都高HPのリルラ」
「マデラ司令官代理。"リアルの裂け目"が開いたようね」
「合同捜査になるわ。よろしく」
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直轄の秘密防衛組織だ。
"裂け目"の果てにある異次元と関わる全ての事象は、このジャドーを通して対応が図られるのだ。
「スパン・レイジの犯行ょ。次元誘拐と暴行」
「"異次元カルト"の教祖ね?次元手配犯だけど、確か私達と同じ3次元人と聞いてる。で、彼の犯行と断定したのは誰?」
「被害者ょ。金髪の幼女メイド」
「え。生きてるの?」
「YES。失神してて死亡の誤報が流れた」
「会える?」
「今、搬出中。因みに彼女は"blood type Blue"。異次元人だから、そのつもりで」
リルラがスーパーアンビュランスを指差す。
因みにリルラはミニスカポリスのコスプレ←
ストレッチャーの幼女メイドに話しかける。
「彼女は、ジョセ・カトラ」
「こんにちは、ジョセ。マデラょ。誰にヤラれたの?」
「…預言者」
「スパン・レイジのコトね」
要所要所にリルラの解説が入る。
「ねぇジョセ。この"リアルの裂け目"の果てには何がアルのかしら?」
「砂漠ょ。見渡す限りの砂漠。みんなが寝た隙にキャラバンを逃げ出し"裂け目"に飛び込んだ」
「どのくらい歩いたの?」
「3世紀」←
異次元とは時間の概念が根本的に異なる。
ストレッチャーは車内へと運び込まれる。
リルラとマデラは素早く情報交換。
「リルラ。教祖のスパン・レイジ。どんな男なの?」
「ひと言で言えば、一夫多妻主義者ね。信者の家族、財産、性生活の全てを Under Control に置く絶対的な存在。逆らう者は消去スル」
「消去?」
「追放か死。上野線は、昔から黄昏時によく"裂け目"が発生スル。首都高HPは、もう20年近く奴を追ってるわ」
「詳しいのね。奴の目的は何かしら?」
「ソレは恐らく…」
夜の冷気の中で1呼吸おくリルラ。
「幼女ジョセを78番目の妻にするコトね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、所轄の万世橋に捜査本部が設置される。
「"第0使徒教団"?新興宗教なの?資金源は?」
「ラギィ警部、ソレが良くワカラナイ。推定20億円とされる資産は財務省が凍結。教団自体は公安の監視下にアルけれど」
「あら!誰かと思ったら最高検察庁のミクス次長検事。首都高HP、ジャドーの次は最高検?散々好きに内偵しといて、最後のケツ持ちだけ所轄でやれと?」
嘆くラギィは、万世橋警察署特捜班を率いる敏腕警部。
「はい、お土産。コレがスパン・レイジょ。この写真と引き換えに潜入捜査官が1人死んでる」
ミクスは、本部のモニターにヒゲモジャの顔を映し出す。
「ヒドい面wコレで信者が集まるの?」
「教団自体は、彼の祖父が作った。当初は、教祖自ら女性信者と次々"結婚"。全員を未婚の母にしては、国からの生活保護を受けさせ、その上前をハネて活動資金に充ててた」
「納税もせずに生活保護のピンハネで活動?ハーレムを宗教にしたら儲かりましたって奴?」
「YES。典型的な"シングルマザー教"ね。ソレが、彼の代から"裂け目"を通じ、政権転覆を狙う異次元勢力と結託、一躍"革命分子"に成長した。現在リアル秋葉原に信者は推定2000人。異次元側は何人いるのかさえワカラナイw」
「政権転覆を狙うハーレムカルトを、国の生活保護が支える図式w納税意欲が萎えるわ」
「7年前に父親が死んでスパン・レイジが後継者になった。その際、彼の兄が不審な死を遂げてる」
「え。お兄さんまで殺しちゃったの?」
「さらに、彼が教祖になってから少なくとも12人が死亡してる。全員、男性信者」
「典型的なカルト"狂祖"ね。No.2以下は教団追放。女性信者は独り占め。逆らえば粛清。ねぇ誰か声を上げる者はいないの?」
「教団を追放された男性信者達が、未だ教団内にいる"妻"を取り返そうと訴訟を起こしてる」
「楽園を追放されたアダム達の裁判?」
「…起訴事由は、自分が"妻"に生ませた子供達への性的虐待と、かつての"妻"へのレイプの共謀。つまり、集団結婚。教団では、未成年の異次元幼女をアニメのコスプレをさせて、女性経験皆無の成人ヲタクと結婚させてる。幼女には大勢とコスプレ結婚スルほど天国に行けると説いてるw」
「で、教祖の78人目の妻がジョセなワケ?」
「YES。彼自身は預言者と名乗ってる。既に77人と結婚した彼は"天国"確実。まぁ今の幼女ハーレムも天国みたいなモンでしょうけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"にジョセを見舞うエアリとマリレ。
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさんが率いるスーパーヒロインのグループで、ジャドー傘下の民間軍事会社。
妖精担当のエアリとロケットガールのマリレは、共に平時はアキバのメイドカフェ勤務なので今もメイド服だw
「"リアルの裂け目"を通って、モノホンのアキハバラに連れて逝くと言われたわ。だから、スパン・レイジについて行ったの」
病床の幼女ジョセは弱々しく、顔の青痣も無惨だ。
「他に誰かいた?」
「知らない男が3人いたわ」
「男達は音波銃を持ってた?」
うなずくジョセ。音波銃は、銃口がラッパ型に開いた、対異次元人用の武器だ。まぁ殺人音波を撃てば人も殺せるけど…
「12度目の"結婚"をさせられる前に"花嫁衣装"に着替えるよう言われた。次の"夫"は特別だからって…その時に砂漠のキャラバンから逃げ出したの。裂け目のコチラ側に行けば、リートと逢えると思って」
「リート?誰?」
「お兄ちゃん。多分ママは違うけど…」
エアリとマリレは顔を見合わせる。
「ジョセ。答えたくなかったら答えないでね…預言者スパン・レイジに性交渉を強要された?」
視線をズラし、下唇を噛む幼女ジョセ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ。お願いがアルの」
病室を出たエアリがスマホを抜く。
「なぁにエアリ。ミユリ姉様がテリィたんとお泊まりだからハネを伸ばしてるのょね?」
「姉様の分まで働きちうょ。お知恵拝借案件」
「はいはい。今度は何かしら?」
ルイナは、驚異的IQを誇る国宝級の超天才。史上最年少の首相官邸アドバイザーであり、ジャドーのラボが本拠地。
因みに、趣味でメイド服を着てる←
「秋葉原にいる異次元人の中から人探しナンだけど」
「"秋葉原デジマ法"登録の異次元人は何万人といるわ。関連データでフルイワケしないと」
「ソレが…ハッキリ言って名前しかワカラナイ。彼の名は"リート"」
「男とわかってるだけ上等。背景プリーズ」
「首都高1号上野線の路上に幼女メイドが現れて…」
「あ!あの事件?幼女メイドが出現した首都高の座標データ、お願い」
「座標?」
「"リアルの裂け目"が開いたのでしょ?"シドレ"のデータがアルわ。送って」
"シドレ"はアキバ上空3万6000kmの軌道上に浮かぶジャドーの量子コンピューター衛星だ。
この"シドレ"が"リアルの裂け目"発生を探知スルと直ちにジャドー全ステーションに急報。
「あのね。異次元とリアルには、レヴィ・フライト的な非平衡的拡散モデルが成立するコトが知られてる。つまり、探索アルゴリズムさえ描ければ、可能性の高いネームを特定出来るワケ」
「そうだったぁ!…うーん半分もワカラナイわ」
「お部屋の中で鍵を探す時、部屋のスミから探さないでしょ?先ずアリそうなドア脇のトレイ、次に色々落ちてそうなソファ…つまり、見つかる可能性の高い組み合わせを特定してから…あら?イキナリ出たわwリート・ロッタ?ヤタラ寂しそうなトコロにお住まいだけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに"ヤタラ寂しそうなトコロ"へジャドー特殊部隊が急行、ヲタッキーズも現地合流と"外神田ER"を抜け出す…
「ジョセ・カトラが入院したのはココですか?」
ところが"ER"の受付で、今どき珍しくもナイけど、金髪のヤンママがナースに尋ねてて、ソレを耳にしたエアリが…
「ジョセのお母さん?私達、ヲタッキーズのエアリとマリレです。病室なら、ご案内しましょうか?」
「え。ヲタッキーズ…ソレでメイド服なのね?ジョセは無事なの?」
「えぇ。まぁ少し殴られてますけど…」
顔をしかめる母親を案内して病室へ急ぐエアリ&マリレ。
「お母さん。お名前は?」
「ヲヴァ・カトラ。"blood type Blue"異次元人ょ。3年前"夫"と一緒に"リアルの裂け目"を通って、東秋葉原に引っ越した」
「そうなの…今も預言者を信じてる?」
ヲヴァは答えないwエアリは質問を変える。
「で、ご主人は?」
「去年、殺されたわ」←
「そう…預言者はジョセを狙ってたのね」
「だから"裂け目"のコチラ側に来たの。"夫"が、どーしても預言者とジョセを結婚させたくナイと言い張って…」
「待って。そのご主人が殺害され、預言者が現れたの?ねぇ貴女がジョセを預言者に渡したの?」
母親は、世にも恐ろしい顔をしてエアリを睨む。その時…
「ママ?」
病室からジョセが呼ぶ声がし…振り向く母親が絶句スルw
「あぁジョセ!貴女を殴るなんて!」
「"結婚"なら良いの?」
畳み掛けるエアリの一言で現場は修羅場←
「ウソでしょママ?!預言者に私の居場所を教えたのは…ママだったの?!」
「そうすれば、貴女は預言者の"妻"になれるのょ!」
「…ママ。私、レイプされたわ!」
母と娘は泣き崩れる…別々にw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、ジョセの異母兄リートは、神田リバー沿いでほとんどスクラップになりかけてるトレーラーハウスにお住まいだw
「周辺警戒!チームα、接近しろ」
「了解。トレーラーまで10メートル」
「トラップに注意」
短機関銃を目線で構えた特殊部隊がドアに取り付く。
「αチーム、位置についた」
「包囲は完了してる。突入せょ」
「了解…よし行くぞ。用意はいいか?」
隊員が先端に鍵針のついた金属棒を伸ばす。
鍵針をドアノブに引っ掛けノブを回したら…
ドアが木っ端微塵に吹っ飛ぶ!
第2章 誰でも教祖
「ターゲットでドア爆発!」
「伏せろ!全員動くな!何か見えるか?」
「何も見えません!」
爆煙が晴れると見事に吹っ飛び、枠だけ残ったドア。
その向こうに銃口から硝煙が立ち昇るショットガンw
「ブービートラップだ!」
「突入してたら蜂の巣だったな」
「音波銃じゃない。対人用のトラップだ」
武器を下ろし、トレーラーに入る特殊部隊。
「誰もいません」
「デスクにこんなモノが…」
「地図…か?」
クシャクシャに丸めた紙を広げる指揮官。
ソレは無数の図形を線で結んだ…配線図?
「ルイナに見てもらおう。奴等は何か企んでるw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、御機嫌で運転中だったケッテンクラートをUターンw
「配線図が気になりますか?」
「うーん第3新東京電力社員としては胸騒ぎして当然さ」
「私達を呼び戻そうという陰謀カモしれません」
「ねぇミユリさんにTOが必要ならココにいるょ。ソレは知っていて欲しいな」
後席を振り返ると空軍女性通信兵コスプレのミユリさん←
「もう少し様子を見ましょ?テリィ様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"のコーヒー自販機の前で考え込む金髪母。
傍らのEVのドアが開くとメイド服のエアリが出て来る。
「ジョセのお母さん。この"配線図"に見覚えは?」
「知らない。初めて見るわ」
「…蒸し返しになるけど、なぜ預言者に娘の居場所を教えたの?」
「ジョセは、私の手には負えなくて」
「貴女、母親でしょ?幼い娘を中年男に差し出すナンて!」
「預言者は、ジョセの魂を救いに降臨されたの。東方より三賢人を伴われて。あぁ光ょあれ!」
「どんな車で?」
「大きくてシルバーの車だったわ」
「SUV?」
「何ソレ?トラックに似た車ょ」
「行き先は?」
「"第3新エルサレム市"。全ては血統のためだわ」
「血糖?糖尿病なの?」
「否!ジョセの家は異次元の誉高き血統で"第0使徒の会"直系の血統なの…」
「完全な妄想性人格障害だわ。でも…魂の居場所を探してるだけなのカモ」
「YES。私は"ガフの部屋"を探し求めている…」
そこまで話してヲヴァが振り返ると、病室の中でジョセがスマホで通話中。ソレを見たヲヴァはER中に聞こえる悲鳴w
「らめええええぇ!」
阿修羅の形相でジョセへ突進、スマホを取り上げる!」
「嫌よっ!ママ、私のスマホを返して!」
「あの子と電話してるのね?」
「好きな人とスマホして何が悪いの?」
「地獄に落ちるわ!」
メイド服のエアリが割って入るw
「落ち着いて!娘さんの親権を剥奪されるわょ…ジョセ、誰と話してたの?」
「リートよっ!リート・ロッタ」
「らめぇ!禁止したのに!」
「娘をレイプさせた人が何?」
「あぁジョセ!貴女は、神に選ばれた預言者の"妻"になれるのょ!」
「78番目の?」←
母娘の全知全霊を傾けた罵り合いw再度、エアリが…
「あのね、ヲヴァ。貴女にゼヒ会って欲しい人がいる。重婚から脱出した女性達ょ」
「神からのお告げがあったの!」
「どんな?」
「預言者が、私達を新たなる世界"第3エルサレム市"へと誘うと…」
「その代償としてジョセを差し出せと?ねぇヲヴァ。貴女は
リアルを知らないけど、ヲタクだって魂が救われる方法は、いくらでもアルの!」
「誘惑には負けない!明日、また来るわ」
決然と立ち去るヲヴァ。嘆息のエアリ。目をそらすジョセ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻のトレーラーハウス。
「奇妙な文字ね。ヘブライ語に似てる?」
もう1人のメイド服が頭をヒネる。
「原理主義の集団?」
「旧約聖書系って聞いてます」
「この図も聖書と関係がアルのかしら?」
マリレに話しかけられた特殊部隊員も頭をヒネるw
「あ。マリレ。こんな貯金箱が」
「献金箱じゃナイの?…ヘブライ語ね。えっと"新たなる都で信者たちが清浄に暮らすためにゼヒ寄進を"」
「資産20億円じゃ足りないみたいね。清浄っていうのが、実に気に入らないわ。ウクライナやボスニアの民族浄化みたいょ。なぜ人は清浄にこだわるのかしら…あら。コチラにも同じ図柄のキルトが」
「マリレ!ココにも図柄がアリます」
「あ。コレもでしょうか?」
トレーラーハウスのアチコチからキルトが集まる。
「このキルトをつなぎ合わせると…何か数学的な図形にも見えるわ。初歩的だけど。みなさんはどう思う?」
しかし、頭が筋肉の特殊部隊員は一斉に頭をヒネるばかり。
「あぁコンな時、雑学博士がいれば…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに同時刻の捜査本部。
「ヲヴァの話に拠れば、預言者の車はシルバーのSUV!リルラ、首都高出口の検問を強化して!」
「既に緊急手配中」
「預言者の髭モジャ顔写真を首都圏の警察やマスコミ、全秋葉原の給油所に配ったわ。預言者がジョセの逃走に気づく前に封鎖は完了してたのに…何で見つから無いの!」
ガックリ肩を落とすミクス次長検事。
「預言者は、信者の家を全て把握しているハズ。所轄は、張り込みを強化して!」
「了解。でも、彼は信者の家に現れるほどバカかしら?」
「カルトの教祖は、常に自分を崇拝スル者を求める。あと、性のハケ口もね」
「リアル秋葉原の信者に話を聞きましょう。全部で何人?」
「50〜60人です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。すっかり下火になった"オンライン呑み"。
「ミリコンはどーですか?ミユリ姉様」
「病みつきよー。今、夜営中」
「どうも。ムーンライト…しゃなかった、ミユリさん」
「マデラ司令官代理?」
ジャドーのラボもリンクアップしてるw
「民間軍事会社であるヲタッキーズとは、いわば傭兵契約ナンだけど、私達お友達にならない?お近づきのシルシにテリィたん!聞いてる?カラビ・ヤウ多様体ょ!ね?ルイナ」
「ルイナです。テリィたん!今度会った時に理論を説明してあげるね!とりあえず、お部屋の装飾にどう?」
「素敵だ」←
「でしょ…あら、酔った?ちょっとトイレ」
マデラ司令官代理は、上機嫌でグラス片手にヨロヨロ立ち上がると、ジャドーの画像から姿を消し、ルイナが代わる。
「代理は、ヲタッキーズの仕事ぶりに興味がアルみたい…テリィたん、姉様と愛の逃避行は楽しい?」
「ミリコンだ。空挺兵のコスプレでケッテンクラートに乗ってる。最高の休暇さ」
「また、週末には太陽発電衛星に戻るンだモンね。軌道にはジャドーのロケット機で?」
「市ヶ谷の地下鉄ミサイル連隊に打ち上げてもらう予定…しかし、弦理論って何かピンと来ないな。60年代の流行だょバイブレーションなんて」
「うーん何が振動スルかが問題なの。つまり、宇宙は弦の振動で…」
「そして、宗教は精神の振動?ノラエモンの"誰でも教祖"みたいだ」
「…呆れたわ。お幸せに」
ジャドーが"オンライン呑み"から退出w
「私達が羨ましいだけですょ」
ミユリさんは、僕を背中から抱き、肩に頭を載せる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その間も、捜査本部は眠らないw
「男性信者7名、女性信者23名、子供が30人…秋葉原にいる信者です!」
「男性が7名なら7家族ってコト?子だくさんねw」
「その7家族は、教団内では"聖7家族"と名乗ってるそうです」
「捜査官を向かわせるわ!」
ミクス次長検事がスマホを抜く…同時にリルラに電話w
「首都高HPリルラ…ジョセ?ジョセなの?病院じゃないの?…わかった。私が行くまでそこにいて!」
「何ゴト?ジョセの病室には警官が…」
「リートの手引きでトイレの窓から脱走した!リートとリアル帰宅したら家には血痕があって…」
ミニスカポリスのコスプレで走り出す。
「金髪母が消えたわ」
第3章 ブロンドママを追え
「ママを連れ去ったのは預言者ょ」
駆けつけた警官に保護され、万世橋で別々に取調べを受けるジョセとリート。ジョセの担当は、首都高HPのリルラだ。
「教祖のスパン・レイジが連れ去ったの?」
「見たワケじゃない。でも、他に誰が?ママには、知り合いもいないしホトンド外出もしない人なのょ?」
「じゃスパンは、ナゼお母さんを連れ去ったのかしら?」
「彼は異常なの。ママもだけど。でも、もしかしたら、ママは自分の意思でついて行ったのカモ」
「でも、キッチンには血痕が残ってたのょ」
リルラは鑑識の写真を見せる。
ジョセは一眼見て目を背ける。
「なぜリアル帰宅したの?貴女が病院を抜け出し、お母さんが消えた。貴女は、お母さんに何かしたンじゃないの?」
「まさか!干渉は受けたくないけど、死んで欲しいとは思ってナイわ」
「じゃナゼ?」
「わからない。私だって昔に戻ろうとしたわ。でも、パパが教団に殺されてママは抜け殻になった。ゾンビょ。生活保護の受け取りだって、全部私がやってたの。ママがしたコトは、私を預言者に差し出しただけ」
「怒るのはわかるけど…なぜリートと2人で逃げたの?」
ココで初めてジョセはうつむく。
「…駆け落ちスルためょ」
マジックミラー越しに僕達を見上げるリルラ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジョセの駆け落ち相手リート・ロッタの担当はエアリ。
「リート。ジョセと家で何をしてたの?」
「服を取りに行ったンだ。駆け落ちスルから…」
「駆け落ちってw貴方の親は?」
「僕に親はいない」
「どうして?」
「親は"裂け目"の向こう側。異次元にいる」
「貴方だけ、リアル秋葉原に来たの?」
「YES。信者間の"交配"で生まれた男子は、全員リアル秋葉原へ追放され、余生をヲタクとして生きるのが決まりだ」
「今どこに住んでるの?神田リバー沿いのトレーラーハウス?」
「アソコは"秋葉原デジマ法"の登録時に使う仮の住所だ。"裂け目"を通ってから1度も行ったコトがナイ」
「じゃ何処に住んでるの?路上生活?」
「ネカフェ」
「コロナ宣言中はどーしたの?」
質問には答えず、無表情なママ、エアリを見つめるリート。
感情もナイが、答えもナイ。エアリは、長い溜め息をつく。
「あの母親を殺せば、ジョセとあの家に住めるわね?」
「マジ?」
「私、いつでもマジだから」
狼狽したリートの一挙手一投足が、一気に熱を帯びるw
「ま、待ってくれ!僕達は病院のトイレの窓から逃げ出して…」
「病院を出たのは8時35分。私に電話スルまで90分もあったわ。小銭でも崩してたの?」
「肉厚ビーフハンバーガーを食べてニューヨークに行った気になってたンだ!」
「ウラを取るわょ?」
「ココにレシートがアル!見てくれ!」
クシャクシャのレシートを差し出す。
「ココにタイムが入ってる!ペッパー&チーズで美味かった!ソルト&レモンはクソ不味いらしい!」
そして、エアリの目を見てキッパリと告解。
「俺は、誰も殺してナイ」
「マジ?」
「マジ」
「…わかった。でも、秋葉原を出ないで」
マジックミラー越しに僕達を見上げ、うなずくエアリ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ジャドーのラボにマリレがキルトを持ち込む。
「ルイナ。一見無作為に見えるけど、何か意味がアルと思うの」
「あら、マリレ?さっき特殊部隊が持ち込んだ図柄と良く似てるわ…少し線が減ってるけど」
「誰かが意図的に書き足したのカモ。預言者かしら…はい、どーぞ」
ドアがノックされマリレが開けるとマデラ司令官代理だ。
「マリレ、来てたの?国宝級天才のジャマしないでね。今、異次元カルトの謎解き中だから…あら。牛の交配ね?面白そう!」
途端に目をキラキラさせるマデラw
「牛の交配?マデラ、何の話?」
「コレ、牛の近親交配図でしょ?実家が酪農家やってて…私は農家の娘ょ」
「ええっ。コレ、牛の家系図?でも、家系図にしては…」
「分岐が網状でしょ?牛はね。特徴を選んで近親交配させるの。巨乳で乳の出が良くなるようにね。人の家系図とは根本的に異なるわ」
「つまり、コレはスパン・レイジを開祖とスル彼の家系図ってコト?」
「あら?乳牛の話じゃなかったの?種馬の方?」
「なるほど。でも、手書きとキルトの図柄が微妙に異なるわ。ソレに、このアラム文字は…鍵となる男女を示してるのかしら?」
「例えば、この男、恐らく最近、自分の兄弟の3番目の妻の次女と"交配"てるわね。オエー」
スラスラと系図を読み解き、思い切り顔をしかめるマデラ。
「じゃあコレがスパン・レイジなの?」
「え。そーなの?あらあら。こんなに大勢と"交配"してる割には子供がほとんどいないわ」
「遺伝的な問題?」
「YES。人を近親交配するとこーなるの。試しに近交係数を計算してみよっか?」
「近交係数?」
超天才ルイナも知らない"係数"だw
「近親交配の割合ね。コレ、数学者で進化遺伝学者のシーウェル・ライトの方程式ょ」
傍らの黒板にスラスラ数式を描き足すマデラ。
ルイナの黒板に数式を描き足す人は初めてだw
マリレはドン引き、ルイナは呆気に取られる←
「おやまぁ預言者サマの均衡係数は42%だわw」
「高い数値?」
「えぇまぁ普通は0.1%から0.2% だから。ハッキリ言って
劣性遺伝子が強過ぎて優生な子孫が出来にくい状況ね。スパン・レイジは、種牛失格。モチロンお乳も出ないから、歳食って肉が硬くなる前にステーキにしないと…って普通は判断スルわけ。ただし、非近親牛と"交配"させれば、話は別ょ」
「ジョセ?彼女は異次元人だから劣性遺伝子を持ってナイわ」
「でも、彼女は今、万世橋の保護下で、預言者は手が出せないハズ」
「となると、預言者が次に狙うのは…」
言い出したマリレ自身がゾッとスル。
「ジョセの異母姉妹ってコトになるわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜も眠らない捜査本部。
「私の姉妹なら大勢いるわ」
リートに肩を抱かれながらジョセ。
別々に取調べを終えて仲睦まじい。
「モチロン母親は違うけどね」
「私のパパは"ママ以外の妻"は、異次元に残して来たの」
「異母姉妹?」
念のため確認するエアリ。
「何人もいるわ。ママを探すの?きっと預言者のトコロだわ」
「ナゼかしら?」
「彼は、全てを奪うから」←
溜め息をつくエアリ。ノックに救われる。
リルラが顔を出しエアリを外に連れ出す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あの2人は何も知らないわ」
会議室を出てマリレはリルラに話す。
メイドとミニスカポリスで萌え萌え←
「異母姉妹が秋葉原にいるのカモ。ヲヴァが夫以外の子供を産まされていた可能性もアルわ」
「エアリ。ヲヴァの家からスパンの指紋が出たわ」
「ジョセの異母姉妹のトコロへヲヴァに案内させる気ね?」
「ヲヴァは案内スルかしら?」
「天国へ行けると言われれば、喜んで案内スルわ」
「しかし…幼女の、そのまた妹の幼女でしょ?ソンな幼い娘と"交配"出来るモノなの?」
「血統のためなら種馬は老骨に鞭打つわ。特に追っ手が迫ってる今、奴に選択肢はナイ」
「妹が狙いなら、奴は必ず秋葉原にあるハズ」
「"聖7家族"に直ちに連絡を!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ジャドーのラボ。
マデラ司令官代理と共に近親相関図を読み解くルイナ。
因みにマデラは車掌、ルイナとマリレはメイドのコスw
「あぁ神様。何てコト?!」
「どーしたの?ルイナ」
「ヲヴァは…」
進化遺伝学の方程式を解いたルイナは、遠い目になるw
「ヲヴァ?幼女ジョセの母親ね?どーかした?」
「ヲヴァはジョセの母親じゃなくて…姉だわ」
「え。父親が一緒なの?」
頭を抱えるルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
台東区秋葉原。
外神田メインの、いわゆるアキバからは遠く離れて、昭和のママ時間が止まった中小ビルが夜の闇に沈む。
ソコへ猛スピードで疾駆するシルバーのSUV。物陰に隠れていたパトカーがサイレンを鳴らし飛び出す!
「五軒町03から万世橋警察署!手配車両を発見!ピケットラインを突破された!応援を要請!当方は本官のみ」
「ソッチの秋葉原に出たか!了解。応援は15分で現場に到着の予定!容疑者を車外に出すな!」
ところがSUVは急ブレーキ!ドアを開けて男が出て来る。
「すみませーん。スピード違反ですか?」
両手を大きく広げてパトカーに近づいて来る。
「外に出るな!車に戻れ!」
「ソレが…妻が中で激怒してルンです」
男はさらに近づく。やむなく警官は外に出て拳銃を構える。
「来るな!車に戻るんだ!手を車に置いて立て!」
「怖いなぁ。僕が一体何をしたって言うんですか?」
「動くな!」
大人しく車に手をつく男。その時!
「おまわりさん、何か問題でも?」
反対側のドアが開き髭モジャの男が…スパン・レイジだ!
「早いトコロ、おまわりさんに謝って車に戻ルンだ」
次の瞬間、スパンがサイレンサー付き拳銃で警官を射殺!
血飛沫をあげ崩れ落ちる警官の姿に車内から金切り声がw
「キャー!キャー!キャーーー!」
SUVの中で絶叫するのはヲヴァだ。
プラグウェアだがアラサーで痛い←
預言者が唇に手に当てると悲鳴はピタリと止む。
「さぁ行こう。第3新エルサレム市へ」
警官の死体を残し、シルバーのSUVは走り去る。
第4章 血戦!第3新エルサレム市
パトカーに残された動画が捜査本部のモニターに流れる。
目の前で射殺される制服警官を見て、呪詛の声が満ちる。
「スパン・レイジは、急速に支配欲が増大している。危険な状態だわ」
「でも、今にミスを犯す」
「…部外者を襲ったのは?」
「初めてね。暴走を始めたわ。でも、こーゆー男なの」
「なぜわかる?」
首都高HPリルラが、視線を落とし語り始める。
「…実は私も教団にいた。13才の時60代の男と"交配"させられたわ。19才の時、突然目の前に"リアルの裂け目"が出来て、迷わズ飛び込んだ」
「気の毒に」
「それはヲヴァょ。カルトでは、女は出産の道具。学問も技術も教えず恐怖で全てを支配スル」
「待って。預言者は次にどうするかしら?カルトのメッカ、半島にでも高跳びスル気?」
「もしかしたら、地下から出て来るカモ」
「どうして?」
「今は秋葉原のヲタク幼女を狙ってるけど、異次元に残して来た"妻"のコトも気になってるハズ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き万世橋の捜査本部。
「午前6時15分、容疑者スパンは千代田区外神田に侵入」
「中央通り。セクター167を南下中」
「"聖7家族"への聞き込みはどうだったの?」
ラギィがイライラと叫ぶ。
「空振りだったけど…預言者の行方は不明だけど、教団の計画が浮上して来たわ」
「どんな細かい情報でも良いから教えて」
「"聖7家族"の代表者が来てます。ラギィ警部、会われますか?」
「そうね。でも、その前にリルラ。ジョセに話をしておいてくれる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おはよう。"朝ドッグ"買って来たわ」
"朝ドッグ"は、パーツ通りにあるマチガイダ・サンドウィッチズのチリドック&コーヒーのセットだ。
署内の会議室で夜を明かしたジョセとリートに、アキバ最高のブレックファーストを差し入れるリルラ。
「ありがとう、リルラ。ママは?」
松葉杖で立ち上がろうとしたジョセをソファに押し戻す。
「まだ見つからない。ソファの寝心地は?私のお昼寝の場所ナンだけど」
「ママは無事なの?」
「秋葉原中をクマなく捜索しているトコロょ」
「ママに何かあったの?」
ジョセは、傍らのリートにしがみつく。
「新しい情報はナイんだけど…貴女に話さなきゃならないコトがあるの」
「何なの?話して」
「…貴女とお母さんは異母姉妹ょ」
幼いジョセにはニワカに理解出来ない話だ。
松葉杖で立ち上がってリートに倒れかかるw
「僕達は親を選べないンだ。ソレをわかって欲しい」
「OK、リート。ジョセを抱きしめてあげて」
「…私のパパは、ママのパパなの?」
「YES。残念だけど」
ジョセは、何かブツブツつぶやいていたが一気に話し出す。
「私は"リアルの裂け目"をくぐり、リアル秋葉原に来て、初めて公立学校に通うようになったの。ね?リート」
「ホントだ。僕は定時制だけど」
「ママは、ほとんど字が読めない。だけど、リアル秋葉原に来てから何度も教団の花嫁衣装を着てるのを見たコトがある。ママは、何もわからないママ"交配"を繰り替えしていたわ」
「ねぇ何で教団の交配…じゃなかった、結婚ではプラグウェアが花嫁衣装なの?」
「アニメのコスプレ」
「アニメ?」
「YES。"更年期ヲヴァンゲリヲン"」
「…ねぇ今なら預言者の行方が思い当たるかしら?」
幼女ジョセはコックリうなずく。
「新たなる都、第3新エルサレム市ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"聖7家族"代表の尋問は、ミクス次長検事が担当だ。
「アンタ達の預言者が逃げ込もうとしてる、第3新エルサレム市って何処?」
「知らない」
「預言者からの連絡は?」
相手は、頑迷な初老の男性だ。
交配のせいかヤタラ色艶良い←
「預言者からは何の連絡もナイ」
「ソレが通用するとでも思ってるの?」
「アンタら秋葉原第1始祖民族は、なぜ預言者を不当に追求するのだ?」
「警官を射殺したからょ」
「敵を滅ぼしても罪にはナラナイ。預言者と信仰は守られねばナラナイ」
「幼女を繰り返し犯すコトは罪なのょ。アンタの幼妻は何人いるの?何人の幼女と"交配"したの?」
沈黙スル"聖7家族"代表。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「容疑者スパン一味は、中央通りを左折、第2秋葉原架道橋下の"スク水洗車"でSUVを乗り捨て、洗車済みのクルマ3台を盗み分散、逃走中」
「第3新エルサレム市の在り方を隠すつもりだ。3台のどれに容疑者スパンが乗っているのかもワカラナイ!」
「なお、車内に落ちていたスマホの自爆装置を解除、目下、ジャドーラボにて解析中」
万世橋の捜査本部とリンクアップした会議アプリがヤイノヤイノと騒ぐラボでは、ルイナがスマホの解析を急いでいる。
「ポッドキャストだわ!」
「え。孤独な声のつぶやき?」
「違うわょ。預言者と教徒との連絡方法。預言者がメッセージをアップロードすると、教徒は識別コードでアクセスするワケ。コレが容疑者スパンの声ょ」
ジャドー司令部のモニターに声が流れる。
「…我等の旅路を遮る者は罰せられる…」
「コレを教徒だけが聞けるワケ?」
「YES。でも、今や私達は聞けるだけじゃなく、アップロードした場所まで、特定出来るわ」
「プロバイダーをたどるワケ?」
「ソレでも良いけど、追跡アルゴリズムを組んだ。さっきのアップロードはガード下の"スク水洗車"だった。次のアップロードを待って、場所の特定が出来るわ」
「ソレじゃ遅いわ!彼等は車を3台盗んで封鎖線を突破スル気なのょ?!」
焦燥感が募る中、預言者の"つぶやき"は続く。
「…道を阻む者を打ち倒さねばナラナイ。彼等は、全てこの秋葉原において滅ぶであろう…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー沿い。忘れられたトレーラーハウス。
「去年の8月、ポッドキャストがアップロードされた場所がココなワケね?」
「もしかしてソレ以来、放置されてたの?」
「今じゃマヌケのカラって奴ね」
「モヌケでしょ?」
首都高HPリルラとエアリ&マリレが現場を調査中。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…神は、約束の地を祝福された。裏スカイ文書に描かれた約束の地、リバー沿いにアル神田旅籠町…」
「預言者がアップロード!追跡アルゴリズムで場所を特定中!」
「預言者は、教徒の第3新エルサレムへの市参集を求めてる?」
「アップロード場所を特定!…え。ココは?」
ポッドキャストは続く。
「…全教徒は集え。ソコは祝福された約束の地だ。裏スカイ文書に描かれたとおり、全ての幼き妻を引き連れて、集うのだ。幼き妻ょ花嫁衣装でコスプレせょ。聖地秋葉原での信仰の自由はどうなった?我々平和的な教徒に堕落した異教徒が攻撃を加えている。しかし、真実は守られねばならない。我々は神の言葉に従おう。裏スカイ文書申命記21章15節だ。汝、秋葉原旅籠町に…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
突然の銃撃!
崩れ落ちる首都高HPのリルラw
射すくめられるヲタッキーズ!
「食らえ!異教徒ども!第3新エルサレム市は、お前達には屈しない!」
「銃口がラッパ型?音波銃だわ!私達を待ち受けてた?この(ボロいw)トレーラーハウスが第3新エルサレム市だったの(教徒じゃナイけどガッカリw)?!」
「ヲタッキーズ、コレでお前らは能無しだっ!」
全ての窓が割れ、次々とラッパ型の銃口が飛び出す!
さらにドアが薄く開き、柄付き手榴弾が投擲されるw
バム!
柄付き手榴弾が炸裂!周囲に白い蒸気が立ち込める!
サイキック抑制蒸気だ!ヲタッキーズはパワー喪失w
「神田リバー沿いトレーラーハウスで銃撃!HP負傷!」
「ヤバい!空も飛べないし戦闘呪文もアウトょ!」
「応援を要請!医療班も!至急!大至急!」
右手を打たれたリルラが、左手で拳銃を撃つ!しかし、相手は短機関銃の乱射で応え全く歯が立たない!
空飛ぶ系スーパーヒロインのエアリ&マリレだが、サイキック抑制蒸気の中では単なるコスプレ女子だw
「いやん、マリレ!も少し詰めて!」
「ダメょ私のお尻が弾に当っちゃう!」
「コッチは弾切れょ!」
ヲタッキーズのふたりは短機関銃と音波銃に射すくめられ、頼みのリルラは負傷して弾切れ!万事休す!
トレーラーハウスからの銃撃は熾烈を極め、絶体絶命のピンチ!その時!太陽から舞い降りる白い天使…
「ミユリ姉様?」
「姉様、気をつけて!サイキック抑制蒸気よっ!」
「全くテリィ様との大事な休暇をよくも!」
ムーンライトセレナーダーだ!白のヘソ出しセパレートのコスプレ。まさに天孫降臨…
「天孫降臨?白コスにして正解だったわ…さぁ!音波銃でも塩弾頭で撃ちたいだけ撃ちなさい!ちょうど私もマトを探してたトコロょ!」
超電圧の電磁波で蒸気を吹き飛ばし、必殺"雷キネシス"がトレーラーハウスを直撃!
「ムーンライトセレナーダーが来た!もうダメだ!」
「強い!強過ぎる!」
「預言者、降伏しましょう!」
電磁バリアを展開して迫るムーンライトセレナーダーに、ハウス内の教徒達はパニック!
髭ズラのスパン・レイジが教典(裏スカイ文書?)を振りかざし狂気の演説を続ける様は…
陥落寸前のベルリン防空壕で熱弁をふるう独裁者←
「神は今だと仰られた!今こそ世界に我等の信念を示す時なのだ!汚れた罪深き者達に第3新エルサレム市は決して屈しはしない。神は言われた。人々はココに集うと。新たなる聖都の歴史が今、始まるのだ!妻ょ!夫の後に立て!」
プラグウェアを着たコスプレ幼女達が窓際で銃を構える"夫"に寄り添う。俄然張り切る後期高齢者ヲタク達だったが…
「預言者!多勢に無勢です。ムーンライトセレナーダーは、突入スルつもりです。このママでは、教団は全滅してしまう。どうか…」
「嘘だ!ダマされるな!スーパーヒロインが近づいて来たら1人ずつ音波銃で撃ち殺せ!」
「でも…預言者!ムーンライトセレナーダーは平和的にと仰ってます!」
最後は花嫁衣装が1番痛いアラフォーのヲヴァ。
「ウルサい!でしゃばるな!」
「いやぁ…私を、ぶった?ぶったのね?!」
「預言者!もはやコレまで。教団の再興を期して、ココは投降…」
平手打ちされ泣き崩れるヲヴァと入れ替わりに、柄付き手榴弾を投擲した若い教徒が叫ぶ。
しかし、最後までは話せない。自分の胸に点々と開いた黒い穴を茫然と見つめる若い教徒。
「キャー!」
瞬時に絶命した若い教徒の死体は、預言者の胸にぶつかり、ズルズルと地面に崩れ落ちる。
全員が怯え、息を呑む。預言者をチラ見スルw
「当然の報いだ!彼は信じる心が弱かった!配置につけ。近づく者は1人ずつ片付けろ。幼き妻は夫の側に。窓際の外から見える位置に立ち夫の盾となれ。今こそ行動で示し、聖者となれ!行け!歴史に名を残せ!」
もはや、目の焦点が合っていない。
「今より、第3新エルサレム市を廃墟にスル。やってきた敵は、ソレを見て驚くだろう!」
完全に狂ってるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時を同じくして、サイレンを鳴らしパトカーやら消防車やら救急車やらが続々と到着スル。
車内からは、防弾装備にフルヘルメットの警官隊や特殊部隊が飛び出し次々と配置につく。
「トレーラーハウス内で銃声だわ!何があったの?」
「スパン・レイジょ。終わりの始まり」
「1刻の猶予もナラナイ!突入スル!」
「パレスから全セクション!行くわょ…ちょ、ちょっと待って、リルラ。アンタはダメょ。救急隊員、彼女は病院へ…」
「私は…私は、あの男の逮捕に人生を賭けて来たのょ?」
声を震わすリルラの左手に、ラギィは拳銃を握らせる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ママは?ママはあの中なの?…しかし、第3新エルサレム市が、あんなボロいトレーラーハウスだったナンて!」
万世橋の会議室。リアルタイムで流れるニュース映像に目を丸くするジョセ&リート。
「さっきまで、預言者スパンの肉声が流れてた。スマホ放送局に音声回線を切らせたトコロょ」
「検事さん。コレは全部、私のせいなの?」
ジョセがミクス次長検事に尋ねるが、ミクスは首を振る。
「聞いて。貴女は悪くない。預言者が異常なの。貴女の責任じゃないのょ」
「そうょ。そうょね?」
自分にいい聞かせるように、うなずくジョセ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、トレーラーハウスの中では、教徒と妻を窓際に立たせたスパンが、背後でプロパンガスの元栓をフルオープンにw
さらにトーチランプの焔を最大にスル。ソレを見たヲヴァが信じられナイという顔で、目を丸くしてスパンを凝視スル。
「ヤメて!ソンなコトしたら…」
「さぁ行こう。我が"妻"ょ。ションベン臭い幼女には、もう飽きた。コレからはアラフォーだ」←
「預言者様…」
カラダの線が崩れたアラフォーのプラグウェアのコスプレは全く見るに堪えないが、完全にヲヴァは舞い上がっているw
「ピット1からパレス!警戒!誰か出て来ます!」
前進配置の特殊部隊が叫ぶと、トレーラーハウスのドアが開いて、プラグウェアのヲヴァを盾にしたスパンが出て来る。
「撃つな!我々は聖者だ!」
スパンはヲヴァを盾にし、その背後から何かを高く掲げる。
「コレは我々の教典"裏スカイ文書"だ…」
「パレスからピット1。ハウス内が見えるか?」
「YES。ハウス内で出火の模様…ん?何かガス臭い?」
「ピット1、後退しろ!ガス爆発の危険性アリ」
「しかし、ターゲットが…」
ヲヴァを盾にしたスパンが大声でワメく!
「撃つな!私のみ、神の意志により投降スル!ハウスの中の連中は、説得に応じなかった…」
次の瞬間、トレーラーハウスは大爆発!
全ての窓から焔が噴き出し、次に黒煙…
「みんな死んでしまった!神ょ殉教者に祝福あれ!彼等を殺したのは秋葉原だ。ヲタクが殉教者を生んだ!」
「黙れ!自分だけ助かりやがって!」
「地獄の劫火に焼かれちまえ!」
散々だwさしもの預言者も救いを求めるw
「ムーンライトセレナーダー、私の人生は何が欠けていたと言うのだ?」
「全てょ」←
取り囲む警官隊に弁解しつつ、後ろ手に手錠をかけられ連行されて逝く、髭ヅラのスパン・レイジ。
その傍らで、プラグウェアで立ちすくんだママ身を震わせるヲヴァ。リルラが駆け寄って肩を貸す。
「…ごめんなさい」
「ええ。いいのょ。わかってる」
「ホントにごめんなさい」
トレーラーハウスの窓という窓から煙が噴き出している。
やり切れない思いを胸に武器を下ろす特殊部隊と警官隊。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「奴隷解放の地下組織は、毛布やキルトを地図に使ったンだ」
「UGRって何なの?テリィたん」
「アンダーグラウンドレイルロード。"地下鉄道"という名前の地下組織だ。奴隷達は、毛布の縫い目を地図がわりにして、安全な隠れ家へと進んだらしい。自由を求めてね」
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら、ヤタラと居心地が良くなり、常連達が長居して実は困ってるw
例えば、僕とか←
「知らなかったわ。さすがはミユリ姉様のTO」
「毛布が役に立ったって話だ。でも、一体どうして、この…ケダモノ?」
「テリィ様。まさに彼はケダモノですね」
「そのケダモノは、どーしてキルトに家系図ナンか仕込んだのかな」
「自分という存在を書き換えたかったのでしょう」
「気の毒な連中だ。神を夢見て地獄の劫火に焼かれるとは…あ、お疲れ、ラギィ警部。マデラ司令官代理も」
あ。メイド長であるミユリさんの発案で"潜り酒場"では、女子は全員メイド服を着用だ。
ラギィ警部は…お馴染みミニスカポリス、マデラ司令官代理はロマンスカーEXE車掌さんw
「おかえりなさいませ、お嬢様方。ビール?」
ミユリさんがカウンターの中から声をかける。
彼女自身(僕の大好きなw)フレンチメイド服←
「何だか…疲れちゃった」
「今回は、大勢亡くなったからね」
「でも、ヲタッキーズは、あの母娘?姉妹?を助けたわ。スゴいと思う」
「でも、満足が出来ないのょ」
「世界は救えないわ…スターウォーズでも見る?」
「あ。良いカモ。新たなる希望!」
「勝手に見て。スポーツバーじゃナイのょ」
「リモコンは?」
「僕に聞くな。あ、そろそろ宇宙発電衛星に戻らなきゃ。やれやれ。今度の休暇も散々だったな。ミユリさん、またね」
「はい」
「姉様。モニターのリモコン、どこ?」
「テリィたん、隠した?」
僕は、笑って首を振るw
「コレじゃないわ」
「どこなの?」
「いってらいっしゃいませ、御主人様」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"血統浄化"をテーマに、血統主義の教祖に操られる教徒&異次元人、教団を追う首都高HP、所轄警察、秘密防衛組織、教団を脱走した異母兄妹などが登場しました。
さらに、宇宙勤務の主人公の短い休暇や血統主義者の憂鬱などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ第6波まんぼう延長の決まった秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。