一発かます。
深雪さん……、言葉に詰まる、一体なんて言うべきなのだろう。恐らくいや確実に深雪さんが言っているのは時透和臣のことだろう。冬子さんが言っていた。
いずれ知ることになるだろう情報だからってこの
ことかだなんて気づいても何も嬉しくなんてない。
俺は今この人になんて言葉をかけることが出来るの
だろうか。人知れず彼の両親ですら見破れなかった
本性に気付いてしまったことで、自分を責めてしまい、どれほど苦しんだのだろう。たった、タイトル
を1つ取っただけの若僧の俺なんかと違って、
女流7冠を持つプロ棋士である彼女がどれほどに
嘆き考え抜いたのか俺には到底予測することも
叶わないが、ただ1つ言えるのは深雪さんが俺に
このことを話してくれたという事実だけだった。
「深雪さん、確かに面白い話ではなかったですが、
そんなの聞く前からわかっていたことです。それに
俺がやるべきことが分かりました。ありがとう
ございます。来週まで待っていてください。
あなたにそんな顔をさせて来たやつに一発喝を
入れて来ますから。」
貼り付けたような笑顔を浮かべる強がっている
深雪さんに言う。
そうだ、俺は確かに時透和臣のことはあまり
知らない。本当に彼はそんなことをしているの
かもしれない。だけれど、実際に深雪さんが
悲しんでいる。相澤さんが困ってる簡単なこと
だった。頑張る理由なんてそんな些細なことだけで
良かったんだ。
「うん。ありがとう。碧斗君。さっきと全然
違って男の子らしい顔になったね。待ってるよ。」
泣きそうな顔をしている深雪さんが微笑んで言う。




