彼。
「大丈夫ですか?深雪さん。すいません。あまり
気分のいい話ではなかったですよね。配慮が足りませんでした。」
急に気分が悪そうになった深雪さんを心配して
言う。
「あっ、あー、済まない。別にそんなことは無いよ。ただ少しいたような話を知っているというか、実際
に悩んでいるというか、少し聞いていたもので
驚いただけさ。」
「似たような話?もし良かったらその話聞かせて
くれませんか?」
なぜだか分からないが、あまり普段は深雪さんに
ついて何か深く聞かない俺だが、この時は絶対に
聞かないと行けないような気がしていた。
「うん?珍しいな碧斗がそんなに深く私に踏み込んでくるのは、面白い話ではないが大丈夫か?」
「もちろんです。深雪さんがいいなら話て欲しいです。」
そしてそれは確信に変わった。
「そうかなら、少しだけ、私には歳の離れた兄が
居てね、小さい時にはそれはそれは可愛いがってもらったよ。そんな兄も、結婚して子供が出来た。私は
兄に可愛いかってもらったぶん、その男の子に愛を
注ぎたいなと思っていたんだ。あいにく自分には
そんな相手はいないし、お金だけは溜まっていくしね。」
愛しい目をしたり、皮肉を言って自分のことを
悪く言ったり、1つ1つの言葉に本音と思いが
込められているのが分かる。そんな深雪さんの声が
急に悲しい物に変わった。それは後悔をしている
ようでそれでいてそうするしかないと誰かに懇願
しているようで酷く哀しい音だった。
「最初は、最初は良かったんだよ。だけれど、
段々と、彼が中学に入ったぐらいから変わっていってしまったんだよ。彼はね、小さい時から剣道をしていてね才能があったのだろう、また運が良かったのだろう。
もちろんある程度の努力をしているのだろうけれど
それでもあくまで常識の範囲内でってところだけど
甘やかしてしまったからかは分からないけれど、
精神が脆い子供のまま、分不相応な成績を手に入れてしまった。中学生なんて簡単で、彼は持ち前の
顔もあってすぐにモテ始めたみたいで、それだけ
なら良かったけれど何もかもが上手く行ってしまったんだね。歯車が上手く噛み合いすぎてしまった。
まるで神様のイタズラのように。増長に増長を
重ねた彼を止めようと何度も頑張ったけれど、
もう私が止めるにはあまりに遅すぎてしまった。
彼は止められないところまで行き来ってしまったよ。身内だけで止めようとした私のミスだ。誰かに
頼れば良かったのに。彼は今でも全部が自分の思い
どおりになると思っているんだ。誰か彼を止めて、
止めてくれ。ほらっ、面白くなかっただろう?」
顔を暗くする俺におちゃらけて深雪さんが言う。




