高校ですか?
その後、俺は順調に対局に勝って行き、無事に中学生でタイトルである王将を手に入れて、中学生のタイトルホルダーとなったわけだ。まー、そんな順調に行く訳もなく中々険しい道を過ごして何とか王将を手に入れることが出来たのだが、それはまたいつか話そう。そんな俺は今、師匠の家に来ていた。なぜなら師匠に呼ばれたからだ。師匠からは王将になった時にメールをいただいたが、俺が王将になってから会うのは初めてだ。緊張しながらインターホーンを鳴らす。
「ピンポーン!」
少しして、女性の声が聞こえる
「はーい。あっ、あおと君!久しぶり元気にしてたー、対局見てたよ。王将おめでとう!本当によく頑張ったわね?」
扉から出てきたこの女性の名前は、武田清子さん。
俺の師匠である、武田和人の奥さんであり、俺も相当お世話になっている。もう大分歳をとっているはずなのに、いつまでも肌は若々しく、とても美しい方だ。とても包容力のある方で、いつも元気をいただける。
「お久しぶりです。清子さん。いつもお世話になってます。本当に何とか王将になることが出来ました。すいません。師匠はご在宅でしょうか?」
「あっ、ごめんなさいね、和人さんに呼ばれてるんだったわよね話は聞いてるわ。どうぞ中に入って、そんなにかしこまなくていいのよここはあなたの家でもあるんだから。」
「すいません。ありがとうございます。それじゃー、
ただいま。」
「うん、おかえりなさい。」
少し恥ずかしいが、清子さんの前だとどうも素直になってしまう、俺は、少し顔を赤くしながら師匠のいる居間へと向かった。居間へ着くと師匠が将棋盤の目の前で俺の方に顔を向け、
「やるぞ」
と一言。師匠はいつもこんな感じだ。口下手で考えてる事はわかんなくて、でも、優しくて将棋がクソ強い。こんな人なんだ。俺は、将棋盤の前に正座して一言、
「よろしくお願いします。」
「うん。参りました。」
何時間かたち、師匠が頭を下げる、俺も同時に頭を下げてお礼を言う。
「強くなったな。さすがは今の王将だ。改めて、おめでとう。あおとはどんどん私の予想を超えてくる。」
「ありがとうございます。でも、まだまだ師匠には勝てませんよ。今のも、たまたまです。まだまだ精進が必要です。」
「うん。驕ってはいないようだな。安心した。棋士はいつまでも成長をやめては行けない、1度歩みを止めると、もう二度と戻って来ることはできないぞ。」
御歳、70歳ながら、現役のAランク棋士であり、永世王将の取得資格を持っている師匠にしか出すことのできないオーラが出ていた。
「はい、わかっています。決して驕らずいつまでも歩みを辞めません。」
「うむ、わかってるなら良い。それで今回呼んだのは、
あおと。」
「はい、なんでしょうか?」
オーラが出たままの師匠に緊張しながら俺は言う、
「あおと、お前、高校に行きなさい。」
「はい?高、校、ですか......」
「あー、高校だ。」
どうやら、師匠はどうしても俺を高校に行かせたいみたいだ。