夢一夜
こんな夢を見た。
星の瞬く空の下、私は草原に寝転んでいて、目の前には数頭の牛がいた。あたりを見回しても、牛以外には何もなかった。ここには自分以外誰もいないのか、と考えると億劫になって、空を見上げると、まんまるい月が出ていて、ちょうどその真下に、小さな植木鉢があった。
近寄ってみてみると、棒状の茎が伸びていて、長さは四尺程度であった。よく見てみると、葉や茎に白色のぶつぶつがついていたので、取った。
これは害虫の類ではないかと取ってから思いついて、虫が嫌いな自分は、素手で触ったことを後悔した。
土を触ると少し乾いていたので、慌ててジョウロに水をくんで植木に水をやった。
水をくれたあと、遠目に牧草が山積みになっているのが見えた。それを両手いっぱいに抱えて牛の前に持っていってやると、瞬く間になくなってしまい、次を要求された。もう一度戻って、牧草を抱えて持ってきた。そうすると、また次を要求された。
終わる頃にはちょうど日が上りかけていて、私もすっかりくたびれていたので、そのまま寝転んで寝てしまった。
起きる頃には、もう太陽が真上にあった。
何故か、昼に仕事をやる気にはなれなかった。独りで仕事をするのを寂しく感じたのかもしれない。
かと言って何もしないのも暇なので、どこか散歩にでも行くことにした。ひたすら北へと歩いていると、10尺程度の幅の川があった。その川に沿ってしばらく歩いてみたが、橋はかかっていなかった。
一瞬渡ってみようと考えたが、川は茶色く濁っていて、流れがとても急だったので、諦めて、家に戻ることにした。
途中、白樺の建造物が目に入った。いったいどんな人が棲んでいるのかと不思議に思い、近寄ってノックしてみたが、誰も居ないようだった。
扉は鍵がかかっていなかったので、開けてみると、埃が床一面に積もっていて、天井には大きな蜘蛛の巣が張っていたので、随分と長い間、人の手が入っていないことが推測された。
玄関の奥に目を凝らすと、糸車と小さなテーブルが一台ずつあるばかりで、そのどちらとも、やっぱり埃がかぶっていた。
埃と蜘蛛の巣が張った家に入ろうとは到底思えなかったので、そのままその家屋を後にした。
帰る途中、昼だと言うのに星が空に浮かんでいた。太陽は出ておらず、月ももちろん出ていなかった。雲ひとつない空に星が浮かんでいるだけであった。
西にひときわ大きい白色の星が強く光っていた。それは他の星の何十倍も大きく、目が潰れそうなくらいだった。
川沿いを歩いていると、白色の星は沈んでいって、それにつれて川の水は引いていった。
草原に着くと、月が真上に現れていて、植木鉢の花が咲いていた。白く薄い花弁はつきのひかりをうけてかがやき、甘く優雅な香りを漂わせていた。
その時、そう言えばあの家の主と会っていたことを思い出した。