表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/100

75話 神速の使徒~未承認のスイッチ~

()()はどうなの? さすがにキミよりは、強い人が乗ってるのかな?」


 空を指していた指を降ろし、スズカが首を(かし)げる。


(待て……何を言ってるんだ——?)


「まぁいいや。(アレ)を堕とすのは、キミの足を落としてからね」


 首を縦に戻したスズカが、俺に向けて両手を突き出す。


(堕とす? ……何を? これは俺とスズカ(おまえ)の勝負だろう——?)


「足だけとか、やったことないからな~。上手くできるかなぁ」



 シュルルルルッ——!



 宙に浮いたチャクラムが、それぞれ回転数を上げ始める。

 そのまま俺に狙いを定めるように、広範囲に散らばり始める。



「〝何〟を……『堕とす』って——?」



 その時——。




 カッ————。




「——っ!?」


 眼の前が白一色に染まり、俺は思わず眼を瞑る。



「なっ、なんだ!」

「眼っ……眼が——!」



 敵兵の動揺と共に、拘束が少し弱まる。

 俺はそのまま立ち上がろうとする……が、右半身が言うことを聞かない。


(これは……(しび)れ——!?)


 


 ……バリバリバリィッッッ——!




 少し遅れて——。

 辺り一帯に、凄まじい雷撃音が響き渡る。


(次こそ本当に……稲妻じゃないだろうな——!?)



 バタッ、バタッ、バタッ——。



 次々と、何かが倒れ込むような音が聞こえてくる。



 バチッ……バチッ……バチバチッ!



 雷撃の弾ける音が、断続的に聞こえてくる。

 俺は状況を確認するため……ゆっくりと眼を開く。



「……! リズ——!」



 その姿、まさに【剣聖】。

 神の雷光を(まと)いし、神速の使徒——。



「——良かった、()()生きてたのね」


 俺に半身を向けていたリズが、敵軍に向き直る。

 だらんと下がった左腕からは、ボタボタと血が(したた)り落ちている。


(あのリズが……傷を——?)


「……まだ? そんなことより、お前こそ大丈夫——」


『《部隊伝心(フォーパス)》です! リズさん現着しました! ——では皆さん……これより〝作戦通り〟お願いしますっ』


 ……ナツキ? 一体どういうことだ?


「作戦通りだと……? 俺は何も聞いてな——」


「私から説明するわ。とりあえず……〝配置換え(スイッチ)〟よ」


 リズは一瞬、スズカに眼をやったあと——。

 こちらに向き直り、俺の足元目掛けて鞘を振り抜いた。



 ふわっ——。



 足に鞘が触れた感覚は無かった。


 ——だが、俺の身体は宙に浮いた。

 間違いなく、その鞘(それ)によって打ち上げられた。

 


 フッ——。



 俺の眼の前から、一瞬にしてリズが消え去る。

 と同時に——。



 ドンッ——!



「——っ!?」



 俺の視界から、戦場の景色が一気に遠ざかる。

 どうやら……俺はリズに抱えられ、あの戦域を離脱させられている。


「おい! 【嵐殺(らんさつ)】を仕留めないと——」


「少し黙って」


「……っ!」



 ————スタッ。



 ほどなくして、着地したリズに俺は降ろされた。

 周りは木々に囲まれている。

 その隙間から外を覗く……が、近くに敵兵の姿は見当たらない。


 俺はリズに向き直る。


「どういうことだ!? 何故あそこを離れた!?」


「作戦に変更があったからよ」


 リズは身体をパンパンとはたきながら、淡々と答える。


「俺が隊長じゃなかったのか? ——そんな指示は出してないぞ!」


「あなたが伝心を切ったから、他で決めたんじゃない。ハデスの時と一緒よ」


 やっと俺の方を見たリズは、相変わらずの無表情だ。


(……確かにそうだ、伝心は俺の方から断ち切った。だとしても——!)


「わかるだろ! 悠長に話しながらどうにか出来る相手じゃない! 俺が行かないと——」


「あなたが? なぜ?」


 ——リズの純粋無垢な金眼が、俺の激情を覗き込む。

 その核心目掛けて、躊躇(ちゅうちょ)なく踏み込んで来る。 


「そ、それは——」


 ……説明のしようがなかった。

 なぜなら俺にすら、その〝核心〟が掴めていないからだ。


「あなた()()()……」


 言葉に詰まった俺を見て、リズがその眼を少し細める。


 俺は思わず俯き……重なっていた視線を地へと移した。


「——まぁいいわ。ダラダラしてると追いつかれる……作戦を説明するわね」


 リズは何かを言いかけるも、すぐにその口を(つぐ)んだ。

 そして話を切り替えると同時に、中央塔の方向を指差す。


(あれは……リズが抜けてきた横陣が()れてきてるのか——)


 恐らく……急いでこちらに向かったことにより、殲滅(せんめつ)しきれていなかったんだろう。


「【嵐殺】のことは一旦忘れていいから、あなたは()()をお願い」


 ……『横陣の追撃を止めろ』ということか?

字持ち(ネームド)〟はリズ(わたし)に任せろと?


(俺なんかじゃ……【剣聖(おまえ)】に比べたら役不足ってことか——?)


 ——そうだな、そうかもしれない。

 お前は自他ともに認める最強の剣士で……きっと俺なんかよりも、ずっとずっと強いんだろう。

 別に否定するつもりはないし、それならそれで構わない。


(だが、スズカだけは……アイツだけは俺の手で——!)


 ——言いたいことはわかっているつもりだ。

 だが俺には俺の事情が……いや、単純に抑えきれないものがある。

 おいそれと了承することは、とてもじゃないができそうにない。


「何だ……敵の増援部隊か? ミリーは何してる! あれぐらいどうにでも——」


「……」


 つい……強い言い方をしてしまった。

 だが、そのせいじゃないだろう。


 リズがこんな風に肩を落としているのは、これまで見たことが無い。


「……まさか——!」


 ——だから言ったんだ、ミリーはまだ出れる状態じゃないと。


「申し訳ないけど……私の見立てが甘かった」


 やはり……何かあったんだな?


(ミリーは、あのクソみたいな地獄の底から……やっと外に出られたばかりだったんだぞ——!?)


「どういうことだ! はっきりしろ! ミリーを置いて来たのか!?」


 俺が全力で止めるべきだった……! 俺が——。


「ミリーを止めて」


「なっ……は——?」


 ……止める? ミリーを? ——今からか?


(どういうことだ……? 俺が止めるのはあの横陣じゃないのか——?)

 

「詳しいことはナツキさんに伝えてあるから、そっちで聞いて。私はハデスを回収してから、 【嵐殺】の元に向かう」


 リズは言うだけ言って、クルッと俺に背を向ける。

 もう出陣(でる)つもりなんだろう……両足の爪先を交互に、トントンと地面に打ち付け始めた。


 俺は急いでその肩を掴み、再度こちらに振り向かせる。


「——ちょっと待て! その間スズカはどうするんだ? 放っておける相手じゃ……まさか——!」


「そうよ、チャンさんが一人で相手をする。いえ……()()()()()()。——わかったかしら? もう時間がないの」


 リズの鋭い眼光が、一直線に俺を突き抜ける。


(〝配置換え(スイッチ)〟……俺とリズのことじゃなかったのか——!)


 ——考えてみればそうだ。

 これだけ話し込んでいて、追っ手が来ないってことは……既に誰かが相手をしてるってことじゃないか——!


「スズカは戦争の……殺しのプロだ! これまでの相手とは全く違う! チャンは——」


「心配ならさっさと戻ってきて。それとも何? 信用してないの?」


「違う! そういうことじゃない! 俺は——」




 パァンッ——!




(……え——?)


 ——左頬に衝撃が走ると同時に、俺の視界は空へと切り替わった。

 その直前、一瞬映ったリズの眼は——。



 リズが()()()……アイネに向けていたものと、全く同じものだった。

 読んで頂きありがとうございます。


「面白い」 「続きが読みたい」


「まぁまぁかな」 「イマイチ」


 など、素直なお気持ちで構いませんので、下にある☆☆☆☆☆から評価をして頂けると幸いです。


 ブックマークも頂けますと、より一層励みになります。


 どうかよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ