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68話 目標回収〜乙女の邪気〜



 ブワァン————ッ!



 刹那一閃。

 紫光の斬撃が、リベリオンから放たれる。



「ぐわああああっ」

「ぎゃああああ」



 まだ遠く向こうの方——。

 斬撃に巻かれた敵兵たちが、一斉に上空へ舞い上がる。


「す……凄い——!」


 後ろのミリーは動く様子もなく、ただただ驚いている。


(……もう少し散らしておくか——)


「【剣撃連斬(ミリオンスラッシュ)】——、 《風切乱舞(かざきりらんぶ)》!」



 ズババババアアアアッ——!



「うわああああっ!」

「退避! 退避ー!」



 広範囲に打ち込んだ斬撃により、さらに敵兵が吹き飛んでいく。


(あらかた散ったか……よし——)


 俺は【抜刀一刀流(ソニックブレイド)】を一度解除し、リベリオンを背に戻す。



 ダッ——。



 そのまま踏み込み、敵軍に向かって一気に駆ける。



「〝白狼〟だ……〝白狼〟が生きてるぞー!」

「人間だと思うな……! 死ぬ気でかかれえええ!」



 俺に気づいていなかった兵たちも、続々とこちらに振り返り始める。


「そうだ……こっちに来い! 【双剣形態(ツインソード)】——、 《舞風(まいかぜ)》!」


 背から引き抜いた両の持ち手に、紫光の刀身が具現化する。

 


 一人、二人、五人……十人——。

 向かってくる敵を斬っては走り、また斬り伏せる。



 ドゴォ……ドゴォ……ドゴォ……!



 ——戦線のさらに奥の方で、複数の大岩がせり上がる。


(チャン、もうすぐだ……! なんとか持ちこたえてくれよ——!)


「うおおおおおおぉぉぉ!」



 ズパッ、ズパッ、ズパァッ——!



 戦場を駆けながらさらに斬り続け——。

 ミリーを置いてきた辺りからは、それなりに遠ざかった。

 敵軍も隊列こそ崩してはいるが……なんとか波打って、俺を追って来ている。



『お掃除感謝です、アルカ様! 目標(ミリーさん)を回収しますっ』


(頼むぜスターク……上手くやってくれよ——!)


『あぁ任せた! 回収したらそのまま上がってくれ! 俺はチャンと合流する!』


『了解です! お任せをっ』



 ……ゴオォォォ——!



 ——ナツキの言葉通り、ブランシュルーヴの音が近づいてくる。



「くそっ! さっきからちょこまかと——!」

「空飛ぶ船が降りてくるぞ! 撃ち落とせー!」



 それに気づいた敵兵たちの意識が、俺から(むこう)に移り始める。


「……させるかよ! 【抜刀一刀流】——、 《風切(かざきり)》!」



 ブワァン————ッ!



「ぐわああああっ」

「ぎゃああああ」



 一閃、二閃、三閃——。

 俺は視界に映る敵兵の集団に向かって、斬撃を放ち続ける。

 その合間……こちらからミリーを隠すように、ようやくブランシュルーヴが着陸した。


(……よし、それでいい! 急げよ——!)


 ミリーの回収が済むことは、後方の(うれ)いが無くなると同時に……実質的な任務完了を意味する。

 そうすればなにせ、残すは両翼の二人との合流だけだ。

 この程度の敵の練度では……あの化物連中が落とされるなど、万に一つもあり得ない。


(もうすぐ終わる……早く来い! ヴァン、リズ——!)



『アルカ様! どういうことですか!?』


 ——突然、ナツキからの伝心が入る。

 特に何かを話していたわけでもない……何について聞かれているのか、さっぱりわからない。


『何言ってるんだナツキ! 早く上がれ!』


()()()()()()()んです! しかも『旦那様と〝約束〟したので』って……どういうことなんですか!? お洋服までひん剥いてからに!』


 旦那様……? そういえばさっきそんなことを言っていたな。

 それはまぁさて置き——。




『もう一度だけ言っておく。俺が戻るまで、そこから動くなよ——』




(〝約束〟って……くそっ——!)


 見失うことを恐れると同時に、動かれたら守れないと思った。

 だから()えて二度言ったんだ、ミリーもそう簡単には動かないだろう。

 いくらナツキたちが『アルカ(おれ)の指示だ』と伝えたとしても——。


(……こうして考えている間にも、どんどん危険は増すばかりかー)


 もはや直接、俺が行くしか無さそうだ。


『すぐに戻る!』



 ダッ——!



 俺は前線から一度離脱し、全速力で船に戻る。


(……あらかた敵は片づけた、そう簡単に追撃は無いはずだ——!)


『ぐすっ……聞いてるんですかアルカ様! 旦那様って何ですか!? まーた(たら)し込んだんですか!? なぜひん剥いたのですか!?』


『何でぐずってんだ!? 〝旦那様(それ)〟はよくわからねぇが……そもそもひん剥いてねぇ! ひん剥かれてたんだ!』




 バシュッ……バシュッ……バシュッ——!




 ——背を向けた敵軍の方から、何かが射出されたような音が聞こえた。


「何の音……まさか——!」


『アルカ様! 後ろ!』


 振り返った先、上空——。

 三つの火球が、俺の頭上を通り越そうとしている。


(この軌道、狙いは……ブランシュルーヴか——!)


「……くそっ! 《風切》……三連!」



 ブワァンッ、ブワァン————ッ!



(くそっ……体勢が——!)



 ブワァン————ッ!



 俺は三つの火球に対して、合わせるように斬撃を放った。



 ドォンッ、ドォンッ——!



 内二発は命中し、上空で相殺される……が、最後の一発は命中せず、そのまま(くう)を斬る。

 残った一発の火球がカクッと高度を下げ、一気にブランシュルーヴ目掛けて落ちていく。


(もう一度……いや、もう間に合わない!)


 ——例え命中したとしても、一緒に爆風に巻き込んでしまう距離。

 万が一()れれば……そのまま俺の斬撃が、船を割ってしまう可能性もある。


『マズい……ナツキ! 一発撃ち漏らした! 全員伏せろ!』


『アルカ様——!』



 ズドオオォォン……ッ!



 火球はそのまま船に直撃し……辺りに砂塵が巻き上がった。


『なっ……、ナツキ! 大丈夫か!? 返事しろ! ナツキ——』


 ……くそっ! 俺が失敗したばっかりに——!

 あそこにはアテナが! ナツキが!

 ユリが! おつうが! スタークが!

 

 ミリーが——!


『————様! 聞こえてますかアルカ様!』


 ……ナツキ? 大丈夫なのか!?

 直撃したはずだろう!?


『無事なのか!? 皆は——』


『大丈夫です! それより早く、この破廉恥(はれんち)女を何とかしてください! 本当に言うこと聞かなくて……もー! 早く乗ってー!』


『わ、わかった! すぐに行く——』


 船は目と鼻の先……あと数歩踏み込めば、ミリーの居る側に回れる。


(……何故無事だったんだ? 一体何が——)


 ……段々と晴れてきた砂塵、その向こう側——。

 揺らめく蒼球(そうきゅう)に包まれた、ブランシュルーヴの姿が映し出される。


『……()()()()! あいつめ——! あとで褒めてやると言っとけ!』



 バシャァンッ!



 次の瞬間——。

 俺の言葉を聞き届けるかのように、役目を終えた蒼球が爆散する。


『……ダメです! エリィさんは力尽きましたっ』


 いつになく活躍していたからな……仕方ないだろう。

 だが充分だ、本当によくやってくれた!

 あとは——。



 ザッ!



 やっとのことで、俺はブランシュルーヴの裏手に回り込む。


「ミリー!」

 

 ちょうど(ハッチ)の辺り、俺の視界には——。



「もうっ! いい加減入んなさいよ……! てか()()脱いで——」

「もう無理……疲れました——」

「この破廉恥女っ……力……強過ぎぃ——」



 アテナ、ユリ、ナツキ……俺の外套を引っ張る三人の女と——。



「何度言えばわかるのです……! (わたくし)には旦那様との約束が——」



 その外套を羽織ったまま対峙する、ミリーの姿が飛び込んで来た。

 どうやら〝中に入る入らない〟での、押し合いへし合いの格闘中らしい。


「早く乗れ! ミリー! こいつらは味方だ!」


「——はっ! 旦那様っ」


 俺を視認したミリーが、力を抜いた瞬間——。



「ぎゃんっ!」

「ひゃんっ!」

「きゃんっ!」



 乙女三人が後ろへ吹っ飛び……(ハッチ)の中へと消えていった。



 ドゴォ……。



(う、うわぁ……)


 そのあと響いた音が何だったのかは……正直、知らないままで生きていきたい。



「凄かったですわ、旦那様! ——そして(わたくし)も、ちゃんと約束を守りましたわっ」


 駆け寄ってきたミリーが、両手を合わせて俺を見上げる。


「あ、あぁ……だがとにかく、今は中に入れ。あいつらを困らせるんじゃない」


「嫌ですわ! あの()たちからは、何か邪気のようなものを感じますの」


 ……邪気? 何を言ってるんだ?

 お前もどこかの家出娘と同じく、占いが趣味の(たぐい)か?


「なっ……! 頼む、時間がないんだ! こうしている間にも——」


「じゃあ————と呼んでください」


 ミリーの発言が一部分……ボソッと(しぼ)んで、聞き取れなかった。


「……は? 何だって?」


「私のことは〝みるちー〟と呼んでください……そうすれば、一旦言うことを聞きますわ」


 ミリーは両手を後ろ手に組んだまま、右に左にと上半身を回転させながら——。

 チラチラとこちらに眼をやってくる。


(……はて、前にもこんなことがあったような——)


 ——まぁいい、もう時間が無い。

 そんなことでいいなら、さっさと済ませてしまおう。



「いったぁーい……! もう許さないんだから——」

「ぐすっ……もう嫌ぁ——」

「……あはっ、手加減は終わりですよ? 破廉恥女——」


「わかった。中に入ってくれ〝みるちー〟」



「「「——っ!」」」



 ちょうど中から出てきた三人の視線が、俺に突き刺さる。


「……ん、何だ? お前らも仲良くしろ——」


「はいっ、旦那様っ! ミルは大人しく中に入りますわぁ」


 ミリーはそう言って、ニコニコと笑みを浮かべながら扉に向かう。

 そしてすれ違った三人に、 『ごめんあそばせ』と捨て台詞を吐き……中に消えていった。



「あんのアマァ~……!」

「……クスッ、上等です——」

「……あはっ、あはは」



 何に……かはわからないが、三人が怒っているのはよくわかる。


(こういう時は……面倒に巻き込まれる前に、退散するに限る——)


「皆ありがとう、あとはまた指示を出すまで向こうで待機しててくれ」


 俺は戦場に向かうために、三人に背を向ける。



 ……バタッ——。



(何の音……いや、ここは振り向くまい——)


「ちょっと待って、アル!」


 ——が、アテナが後ろから俺を呼び止める。


(……頼む巫女様、文句があるならあとにしてくれ——)


 俺は恐る恐る振り向く……が、そこにアテナの姿は見えない。


「何だ? こんなことしてる場合じゃ——」



 バサァッ——。


 

 次の瞬間——。

 視界の中で、白い何かが宙を舞い……俺の手元に落ちてきた。

 

(これは……俺の外套(がいとう)——)


 もう一度扉の方に眼をやると——。

『これがないと締まらないでしょう』と言わんばかりの顔で、巫女様がお得意の仁王立ちをかましている。


「色々気になることはあるけど……あとで聞くわ! ——気をつけてね、アル」


 隣の二人もいつの間にか、その表情は和らぎ……真っすぐに俺を見つめている。


「……あぁ、行ってくる!」



 バサッ——!



 俺は外套を羽織り……三人の元をあとにした。

 読んで頂きありがとうございます。


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