表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/100

54話 仁王再来~特S任務、その内容~

「よし、全員居るな」


「おにぃ……眠い」


 リズからの依頼内容を聞くため、俺たちは動けないチャンの元に集まった。

 幼女はいつも通り、俺の膝の上でうとうとしている。。



「はい! 全員居ますアルカ様っ」

「わははは! 抜かりはありませんっ」

「う……気持ち悪い——」

「ごめんアル、聞いてるから進めちゃって。ちょっと疲れちゃった」

「ははは……俺も」



 二階に寝かされていたユリは、ナツキとエリィが担いで連れて来たようだ。

 無理やり叩き起こされたせいか、早くも二日酔いの様相(ようそう)(てい)している。

 治癒術を使ったアテナは、相変わらず消耗している様子で……チャンはまだ万全ではないようだ。


「わかった。じゃあリズ、始めてくれ——」


「……ちょっおっ——と待ったああああああ!」


 物件の方から、大きな声が響き渡る。


「ん?」


 全員の視線が、その声の方に注がれる。

 そしてそこから……ゆっくりと、見慣れた(シルエット)が近づいて来る。


「おいエリィ、抜かりはないんじゃなかったのか?」


「わははは! ちょっと抜かってましたっ。何してたんですかスタークさん?」


 大した話じゃないから良かったものの……やはり杜撰(ずさん)なところがあるな、エリィ(こいつ)は。


「ひどいでっさ! 旦那に吹っ飛ばされてそこの壁に——」


 スタークが指差した先に、崩れ落ちた壁が見える。


「あぁ、めり込んでたんですね! わはははは」


 誰か気づいてやれよ……と言おうと思ったが——。

 かくいう俺も人のことは言えないので、黙っておく。



「賑やかね」


 アフろんと家出娘の漫才を目の当たりにしても、リズは相変わらずの無表情だ。


「ははっ、まぁいつものことだ。——じゃあリズ、改めて頼む」


 俺と視線を重ねたリズが、静かに頷く。


「今回協力して欲しいのは〝捕虜奪還任務〟……非正規だけど、ランクで言うと【S】に相当する」


 そういえば——。

 部隊を立ち上げたはいいものの、正式な形で任務を受けたことはなかったな。

 ランクで言われても、それがどのレベルを差すのかイマイチわからん。


「【Sランク】……どれぐらいだ? チャン」


 チャンは俺の視線を受け、ゆっくりと身体を起こした。


「対〝字持ち(ネームド)〟が確定している戦場への参戦が【特S】だから——。この間の迎撃戦に、 【地斬(ジーク)】が居ないぐらい……かな?」


 相手が〝字持ち〟じゃないなら、と思ったが——。

 あの時は、味方にオルカスタ軍一万以上が居た。


(そういえば()()()()には、どれだけの兵力が用意出来るんだろうな——)

 

「……なるほど。なんとかなるような、ならないような——」


 俺はゆっくりと、リズに視線を戻す。


「——結論から言うと、ハルメニアの前線基地に一緒に来て欲しい」


 ……前線基地だと? なぜわざわざ小隊で行こうとする?

 その規模は大小あるにせよ……当然、そこには守備隊が常駐しているはずだ。


「それなら大軍で行った方がいいんじゃないのか?」


「それはダメ。過去にそのやり方で失敗してる。戦闘には勝った、けどあと一歩のところで……目的に気づいた敵軍に、捕虜は全員殺された」


 あくまで目的は捕虜の奪還で、制圧や突破じゃない——。

 それはそれで勝手が違ってくるということか。


「なるほど……捕虜を殺されちゃ本末転倒ってわけだな。それで今回は、少数で潜入して()(さら)う、と——」


「ええ。仮にスマートにいかなかったとしても……こちらが少数であれば、向こうも血迷って捕虜を殺すような真似はしないはず」


「なぜだ?」


「そもそもが、捕虜は殺さない方針だから。ハルメニアは、昔から捕虜をビジネスに用いる。自国に優位な条件で売るなり交換するなりして、今まで上手くやってきた」


 情報を聞き出すだけじゃなく、そういった使い道もあるのか。

 簡単に殺されないだけマシ……なのか?


「なるほど……でも引っ掛かるな。お前ほどの地位に居れば、こんな回りくどいことはせず〝字持ち(ネームド)〟に直談判するなりして、作戦立案すれば良かったんじゃないのか? 少数精鋭ならなおさらだと思うんだが——」


 そもそも〝字持ち〟こそ、一騎当千と言われる最強の戦士たちだ。

 俺も実際、この眼で何人か見てきたし……その実力は本物だった。

 今回の任務にはまさに適任だし、一人確保するだけでこの問題は解決するように思える。


 そんなのが周りに十人も居るんだ、一人ぐらい手伝ってくれるヤツも居るんじゃないのか?

 ブルースやハクツルなんか、この手の誘いならすんなり受けてくれそうだが——。


「〝字持ち〟は顔が割れてる。例え一人連れて行っても、それは大軍を引き連れていくのと同じ。捕虜は殺される」


 ……考えてみればそうか。

 一般の兵士なら、あんなのが突っ込んできたら——。

 千……下手したら万の大軍より、恐ろしいと思うのかもしれない。


「それはそうかもな。でもそれなら捕虜交換とか、領土の割譲……金で解決するとか、色々あるだろう?」


「簡単に言うと、この国(アーレウス)は実力至上主義。そもそも軍人として、掴まるようなヤツが悪いということになる。だからこちらも、敵国の捕縛兵は情報を吐かせ次第……どこの部隊もすぐに始末するのが一般的。——よって、捕虜交換の線はここで消える」


「それが君主様(ミクス)の方針、か——」


「ええ。そんな人だから……もちろん領土を割る気もないし、お金を出す気もない」


 ここまでどこか淡々と話していたリズだったが……ここに来て、その語尾が少し強まった。

 やがて俺から視線を外したリズは、どこか逃げるように俯いた。


(やっと感情が表に出てきたな——)


「まさか……それでミクスと揉めたのか?」


 下を向いたまま、リズが小さく頷く。


(にしても……相手が相手だ。ミクス(それ)に喧嘩を売るほどとなると——)


「そこまでして……助けたいヤツがいるのか?」


「——ええ。別に頼まれたわけでもないし、勝手だとは思うけど……助けたい。多分本人は、怒ると思うけど」


 その気持ちは……今の俺なら理解できる。

 こいつらがもし敵軍に捕まるようなことがあれば、迷うことなく助けに行くだろう。

 例えミクス(アーレウス)を敵に回すことになっても、だ——。


「どこに居るのか、わかってるのか? さすがに片っ端から潰していく訳にもいかないだろう?」


「ビジネスにしてるぐらいだから、ハルメニアは定期的に捕虜名簿を送って来る。今期送られてきた名簿に、記載があったから。あと——」



 ——チャキッ。



()()で、近くまで行けばある程度()()()の〝相棒〟の居場所がわかる。だから私なら、最短距離で行ける」


 自分の身体に立て掛けていた愛剣を手に取ったリズは、それを俺たちに見えるように突き出した。


(剣で居場所が……? リベリオンとアテナみたいなものか? いや、それより——)


「その()って……まさか女なのか?」



「「——っ!」」



 幼女以外の女性陣の視線が、なぜか俺に突き刺さる。


(な、なんだ……?)


 まぁこいつらのことはさて置き——。

 捕虜になるということは、その女は最前線に居たということになる。

 リズはもちろんのこと、ミクスにアイネ……逢ったことはないが、第二師団(バーンブレイズ)のエルザ——。


(……どいつもこいつも(たくま)しいな、この国(アーレウス)の女は——)


「ええ。 【鬼姫(おにひめ)】ミリー……聞いたことない?」


「【B特】……[オニヒメ]か!? 壊滅したとは聞いていたが……隊長は生きていたのか——」


 ここまで黙って聞いていたチャンが、驚いた様子で後ろから割って入った。


「ん? 誰だ?」


「ほら、前にちらっと話した〝もう一つのB特〟、そこの隊長だよ。俺も詳しくは知らないけど……〝呪われた刀〟を持つと聞く。一度その刀(それ)を抜くと、まるで人が変わったように血を求めて戦い続けるらしい」


 血を求めて……か。

 かなりの戦闘狂のようだな。


「——()()は同じ鍛冶師が作ったもので、一定の範囲内で共鳴する。以前ハルメニアの……そのまた向こうのサンテレシアで、一緒に譲り受けた」


 リズは一瞬剣を見つめると、抱き締めるように抱えて瞳を閉じた。


「お願い、力を貸して欲しい。隊舎(あれ)だけじゃ足りないなら、()()()()をあげてもいい」


 ——リズはもう一度ゆっくりと眼を開け、その金眼で俺を射抜いた。


(……本気の眼だ、俺の苦手な——)



 ——ゾクッ。



 背後から急に、物凄い寒気が襲って来た。


(……なんだ!? 殺気——)



 振り返るとそこには——。



 いつか見た仁王が立っていた。

 読んで頂きありがとうございます。


「面白い」 「続きが読みたい」


「まぁまぁかな」 「イマイチ」


 など、素直なお気持ちで構いませんので、下にある☆☆☆☆☆から評価をして頂けると幸いです。


ブックマークも頂けますと、より一層励みになります。


どうかよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ