【S級部隊 11話】ターニャ:隻眼竜の探し物〜無情なる黒炎〜
「へぇ……こいつがなぁ……! ぐははは! こりゃ全滅もするわな」
第六師団本部隊舎近くの、だだっ広い荒野——。
エルドレッドと対峙したゲイルが、ニヤリと笑みを浮かべる。
「ゲイル様、くれぐれも刺激するような真似は——」
「わーってるよ! 前に立てば大体わかんだよ、そいつがどれだけのもんかってのはよ」
——輪廻教第六支部での用事を終えた私たちは、一度ゲイルの元へ戻って来ていた。
そしてここまでの顛末を報告した結果——。
当然、 『ならそのエルドレッドってのに会わせろ』という話になり……こうして引き合わせるハメになった。
「〝S級指定〟なんて遭遇したこともねぇからよ! しょーもないレベルなら叩き斬ってやろうと思ってたが……これならわかった、兵隊4000以上の価値は大いにある」
「——ありがとうございます」
下手にミクスに手を出さないところといい……危険察知能力とでもいうのかしら?
ただの脳筋と思いきや、こういった勘定についてはよく出来ているのよね。
(とりあえず……ここまでは大丈夫そうね。あとは——)
「大変お手数かとは思いますが……先ほど申し上げた〝総長直属の入隊希望者〟については、ご案内してよろしいでしょうか?」
「おー、そうだな。まとめて面倒見てやるよ。しかしどこから引っ張ってきたんだ?」
——部隊の全滅については、さほど言及されなかった。
もちろん、エルドレッドという収穫もあるけど……この〝もう一つの手土産〟が効いたわね。
「管理区内で迫害されていた輪廻教の信徒たちです。ゲイル様なら、お守り頂けるかと——」
支部から隊舎へ戻る際に、信徒をざっと100名ほど一緒に連れて来た。
輪廻教には『今後のさらなる友好の証として』ということになっている。
「がははは! そうか、任せておけ」
……そんな嬉しそうにしているのも、全員女性信徒だからでしょう?
さすが【猿王】ね。
でもね……別にこれは友好の証でもなければ、兵の補充でもないし、迫害されていたわけでもないの。
その狙いはもっと別のところにあるのよ。
あなたみたいな〝お猿さん〟では、気づきもしないでしょうけど——。
「今回……私には、部隊を壊滅させた責任があります。しばらくは各地を回って兵士の補充任務に専念したいのですが……よろしいでしょうか?」
「ん? んなこたぁ……」
——今までは考えられないことだったものね。
自分の欲が最優先のこの男は、いつ何が起きてもいいように、常に手の届く範囲に私を置きたがった。
(なら……私が今後自由に動くには、こうして別に女をあてがう他ない——)
「まぁお前が言うのなら必要なんだろうな、安心して行って来い」
——どの口が言っているのかしら?
今までだって、兵数に関する進言は腐るほどにしてきたのだけど?
大体、安心も何も好きになさいな。
いつまで経っても勘違いしているようだけど、別にあなたがどこの女に手を出そうがどうでもいいの。
(でもまぁ計算通り……目新しい女に興味津々のようで、とやかく言ってこなかったわね——)
100人も用意したんだもの……さすがにしばらくは持つわよね?
ついでにいいところを見せようとして、迎撃任務も頑張ってくれるはず——。
あぁ……やっぱり私、天才かもしれないわ。
「了解! じゃね、ターニャちゃん」
ユージーンが寄せた馬にゲイルが跨り、二人はそのまま隊舎に戻っていった。
『——ありがとう、エルドレッド』
『——フン。しかし今の男は中々のモノだな。あれは相当強いだろう』
『あら? あなたから見てもそうなの?』
やっぱり、私の目の付け所は間違ってなかったのかしら。
『まぁ〝人間にしては〟というだけだ。——それよりどうする? もう終わりでいいのか? なら我は——』
『ごめんなさい、ちょっと送って行って欲しい場所があるの』
『よかろう。乗るがいい』
(とりあえず……一旦本部に行きたいわ。もしかしたらシヴァが来ているかもしれない——)
私はエルドレッドを誘導して、輪廻教アーレウス本部へ向かった。
『——想像以上に速いわね。この分ならもう着いちゃいそう』
『舐めるなよ小娘が。その気になればハルメニアでもサンテレシアでもすぐに着くわ』
——久々に魔力が戻って、やっぱりまだ機嫌がいいのかしら?
ふふっ、伝説の隻眼竜ともあろう黒竜がね——。
こうして空を飛んでいるだけで気分がいいなんて、かわいいところもあるじゃない。
『……ん? なんだあれは?』
『あら、どうしたの——』
エルドレッドの首が動いた方角に目を向けると……見たこともない物体が空を飛んでいる。
『何かしら……? 私も見たことのないモノだわ』
白い……船? 遠くてよく見えないけど——。
翼が生えているのは、ああやって鳥のように空を飛ぶためなのかしら?
どういった構造なのかは、まったくわからないけど。
『そうなのか? どちらにしろあれは桁違いだぞ。お前たち人間では〝古代兵器〟でも使わなければあれほどの魔圧は出せん。そして——』
——〝古代兵器〟? 一体何のことを言っているのかしら?
まぁなんにせよ……そんな代物を所持しているのなんて〝字持ち〟以外に居るわけないんだから、今はお関わりにはなれないわね。
『あら、そう。やっぱり長く生きてきただけあって、詳しいのね』
『グワハハハ! こんなに早く見つかるとはな! 我の……〝探し物〟である——!』
『……えっ? ちょっ——!』
——バサァッ!
エルドレッドが急旋回し、空飛ぶ船へと軌道を変える。
『お願い待って! 今はダメなの! お願い!』
『約束を忘れたのか!? 〝探し物〟が最優先だと言った!』
——マズい!
今〝字持ち〟と事を構えれば、 【六神盾】での立ち位置はおろか……エルドレッドの存在まで公になってしまう!
(どうしてこう次から次へと……! 全てが無駄になる——!)
『エルドレッド!』
『うるさいぞ! もう次いつ邂逅できるかわからんのだ!』
——グオオオオオァァァァッッ!
物凄いスピードで船に近づいたエルドレッドが、口を大きく開いた。
(まさか……あれを撃つの——!?)
——ダメ! 本当に取り返しのつかないことになる!
『約束する! 必ずひと月以内にまたその時が来るから! それが叶わなかったら私を殺しても構わない! お願いだから今は堪えて!』
カッ————。
『……ちょっ——』
…………ズオオオオオオオオオォォォッ!
私の想いは届くことなく……エルドレッドの大きく開いたその口から、容赦なく黒炎が放たれた。
読んで頂きありがとうございます。
「面白い」 「続きが読みたい」
「まぁまぁかな」 「イマイチ」
など、素直なお気持ちで構いませんので、下にある☆☆☆☆☆から評価をして頂けると幸いです。
ブックマークも頂けますと、より一層励みになります。
どうかよろしくお願い致します。




