28話 激戦! 一騎打ち~大地を斬る男~
「一騎打ちだ! 誰も手ぇ出すんじゃねぇぞおおお!」
ジークの怒声が、戦場にこだまする。
戦闘を中断する者。
一定の範囲外へ離脱する者。
鍔迫り合いの中でこちらに目を向ける者……と、反応は様々だ。
これも宣伝と思えば一興。
だがこの状況は同時に……俺の退路が断たれたことを意味する。
「ははっ。ご親切にどうも」
「礼には及ばねぇよ……行くぞオラァ!」
(————っ!)
鋭い踏み込みで、一瞬にしてジークに間合いを詰められる。
「《大地割撃》!」
大剣から眩い緑光が放たれると同時に、そのまま思い切りこちらに振り下ろされる。
受けてみろと言わんばかりの、圧倒的素直な太刀筋。
(だが——これは厳しいな!)
俺は思い切り横に飛び退く。
——ズアァッッッ!
間一髪のところで避け切って転がった俺は、受け身を取って立ち上がる。
——ドゴオオオォッ!
「ぎゃあああああ!」
「ぐわあああああ!」
「……なっ——!」
凄まじい衝撃音と、多数の悲鳴。
その発生源に向けて振り返ると、大地は一直線にめくれ上がり……敵味方問わず多数の兵士が宙を舞っている。
「おいおい、プレゼントのお返しだぜ? 受け取ってくれよ……なぁっ!」
ジークはそのまま片手で大剣を操り、俺に向かって横薙ぎに振り抜く。
(ダメだ間に合わねぇ——!)
ガキィィィィン————!
俺は上体を横に倒しながら、双剣を振り上げて大剣の軌道を上へ逸らした。
避け切るつもりが、完全に見立てが甘かった。
お互い態勢を整え、再度向かい合う。
「ほう……やるじゃねぇか」
「そいつはどうも」
——このまま受けに回っていては分が悪いな。
攻め抜いた方が良さそうだ。
(ありったけ……リベリオンに魔力を!)
「〝字持ち〟ってのは、めちゃくちゃ強いんだってな?」
——ブワァァァン……。
もっと、もっとだ。
どうせこんな状況は長くは持たない。
……やるか、やられるかだ。
思いっきり魔力を流し込め——!
「だははは! どうした? 改まって」
(——よし、ここまで魔力をぶち込んだのは初めてだ……自分でもどうなるか……全くわからねぇ——!)
「いや……なら遠慮することはねぇよな? と思ってよ」
ジークは終始、薄ら笑いを浮かべている。
「だははは! 俺はまだ遠慮してるぜ?」
なら、その間に終わらせるまでだ——!
「ははっ……そうか……よ——っ!」
今度はこちらから踏み込んで間合いを詰め、ジークの眼前で飛び上がり、身体を思い切り左に捻る。
ジークは余裕そうに片手で大剣を構え、防御の態勢に入った。
「おおおおおおお!」
そのまま高速で回転し、その勢いのまま右上段から二本とも、斜めに平行に打ち下ろす。
——ガッ!
大剣と接触する瞬間、剣速を殺さないように、滑らせるように斬り抜く。
ズッ——!
チャンの時と同じように、物質に刃が通る感触が伝わる。
「——っ!? ぐおおおおおおお!」
ジークの顔から笑みが消え、瞬時に魔圧が高まる。
(そう簡単にはいかないか——!)
さすがは歴戦の〝字持ち〟。
瞬時に両手で大剣を持ち直し、俺の双剣がいなされる。
だが——。
「まだまだあああああ!」
間髪入れず懐に潜り込み、絶え間ない剣撃を加える。
——しかし、その大剣の防御はもちろん、それでカバーできないところは地属性魔法による小さな砂の盾が瞬時に発現し、防御される。
(これでも抜けない……なら——!)
——トッ。
俺はジークの大剣の腹を蹴った反動で後方に飛び退き、空中で回転しながら双剣を背の鞘に納める。
そしてもう一度、その名を呼ぶ——。
「〝リベリオン〟——」
着地と同時にリベリオンを左腰に据え直し、再度思い切り魔力を流し込む。
「なんだぁ? もう終わり……ん——!」
態勢を立て直したジークが咄嗟に深く構え、その足元から緑光の魔法陣が展開される。
「ああ……終わってくれていいぜ! 【抜刀一刀流】——、 《風切》!」
ブワァン————ッ!
「————! ぬおおおっ!?」
刹那一閃。
居合によって放たれた紫光の斬撃が、眼前のジークを切り裂いた。
ジークは大剣を横に構えたまま、ピクリとも動かない。
(どうだ……!? これでダメなら——)
「……くっ、がはぁっ! はぁ……はぁ……! 参ったなぁ! これほどとは! お前実は〝字持ち〟かぁ!?」
……多少のダメージは負ってはいるようだが、その程度がいまいちわからないな——。
少しリベリオンに魔力を流し込んでおきたい……話に付き合ってみるか。
「ははっ……硬すぎるぞ! 【聖騎士】でもないくせに。そして俺は〝字〟など持っていない」
「だはは、そうか。ならその武器に仕掛けがあるな? 大方……俺たち〝字持ち〟が備えてる〝超魔門〟みたいなもんが、それに積まれてるんだろう。どうだ!? 当たりか!?」
いや、そういえばその辺のことは俺もまだ詳しく聞いてないんだが……。
そして〝字持ち〟の? 〝超魔門〟?
(一体何のことやらさっぱりだが……上手く話を合わせられれば何か聞き出せるか?)
「——まぁそんなところだな。疑似的なものだが……」
「やはりそうか! だが腑に落ちねぇところもあるな……。それだけ魔力を喰いそうな戦い方してりゃ、 〝精霊の加護〟を受けない常人ならとっくにぶっ倒れてるはずだが——どんなカラクリだ? 〝精霊契約〟……の線は薄いか。何か特異体質とかか? となると《魔力吸収》系か」
「——っ!」
ただの戦闘狂に見えて……意外と勘が鋭いなこいつ——!
だがアテナの話だと《魔力吸収》は封じられているはず————。
『光の精霊、嵐の精霊の仲介の元に——』
——確かに、精霊がどうとか言ってたな。
ここにその答えがありそうだが——。
『この契約に関する一切を、誰にも口外しないこと』
俺にそのつもりが無くても、話の流れの中で下手をすれば……。
(ここの条件に引っかかる可能性がある、か——)
まぁこの辺りはいつか本人に確認すればいい。
今は話題を変えるべきだな。
「ははっ。かく言うお前も、そいつは特異体質じゃないのか? 俺の剣撃をガードしてた砂の盾は〝常時全方位発動型〟だろう?」
「だははは! 確かに自動で発動してるが、あれは【地】を拝命する者なら皆に備わる基本恩恵だ。残念だが体質とかじゃない」
……何が残念なものか。
本当に残念なのは俺のような——。
いや、これで良かったのかもしれない。
そうだ、これで良かったんだ。
おかげでアテナと……皆と出逢えて、こうしてここまで来れたんだ。
俺はもうこの体質を、呪いだとかお荷物だなんて思わない。
その名の通り、ここからその〝無限の可能性〟を掴み取るんだ……!
(だから当然、ここでお前も斬り伏せる——!)
「まぁいい! とにかく、俺にこうして傷をつけたのはもちろん……両手を使わされたことすら【嵐殺】以来だったんだぜ……!? 余計な芽は潰しておくに限る!」
ジークは両手で剣を握ると、そのまま大きく横に倒し、剣先を後ろに構え、深く腰を落とした。
両手の甲からは緑光が発せられ、ここから見える左側の甲には【地】の文字が浮かび上がっている。
ブワッ————!
(これが……本気の【地斬】——!)
さらに凄まじく高まったジークの魔圧が、俺の全身を乱暴に殴りつける。
「どこの誰だか知らないから何とも言えんが……その〝字持ち〟もご愁傷様なこった。こんな化け物を怒らせちまったんならな。 〝リベリオン〟——!」
俺はもう一度、左腰のリベリオンに手を掛ける。
「悪く思うなよアルカ……! これが戦争だ!」
「そのセリフ……そのまま返すぜ! 【抜刀一刀流】————」
これで……決め————。
ズアァァァッ————!
「「————っ!」」
なんだこのさらに凄まじく、禍々しい魔圧は……!?
(ジークのものではない……新手か————!?)
「伏せろアルカあああああ!」
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