【S級部隊 4話】ターニャ:S級会合~集結、国家最高戦力の十人〜
「おいターニャ~、そんなにプリプリすんなって~。お肌に悪いぜぇ?」
「うるさいわよ! 話しかけないで!」
〝S級会合〟に参加するため、ゼクスの都に入った。
道中、ゲイルの乗る馬車の後ろを、それぞれ馬に乗りユージーンと追従している。
「いいじゃねぇか、勝ったんだからよぉ」
——勝った? どの口が言ってるの?
1万の敵兵に対して3万で迎撃して、2万まで減らすような能無しは黙ってなさい。
やはり間違いない、こいつら二人は腕は立つけど、指揮官としての才はこれっぽっちもないわ。
お願いだから、今はそのヘラヘラと危機感のないゴミのような面を、私の視界に入れないで。
あといい加減、そのうっとおしい襟足を切りなさい。
みっともない。
「ここまで部隊を大きくするのに、私がどれだけ苦労したか……本当にわかってるの?」
そうこの馬鹿に言い放って前を向く。
しかし目に入ったこの馬車の中には、もう一人の無能が乗っている。
あぁ、なんて可哀そうな私……怒りの行き場がないわ。
「シシシ、なーに言ってんだターニャ! 苦労したのはお前じゃなく、 《魔力吸収》の坊やだろ?」
「————っ!」
「おーこわ! 冗談だよ冗談。そんなに睨むなよ、なっ?」
珍しく、お調子者のユージーンが怯んだように距離を取った。
(何……? 私、そんなに酷い顔してた?)
——とにかくもう嫌。
早くこの馬鹿共から解放されたい。
それもまだ、どうしても先になってしまうのだけど——。
——会場である〝レーヴァ神殿〟の門をくぐる。
こんな調子でこれから会合なんて……はぁ。
前にも後ろにも、もはや不安しかない。
「第六師団[アイオーン]、ご到着です!」
——ドドンッ!
ズラリと整列した門兵たちが開いた右手を一斉に前に突き出し、ギュッと握り締めると同時に胸の中央へ拳を引き寄せた。
(アーレウス軍独特の敬礼……いつ見ても仰々しい)
ゲイルが馬車から降りると、一人の女が出迎える。
「長旅ご苦労様です。ここからは最大三名様まででお願い致します」
第一師団[ベルブリッツ]副長、 【光脚】ルクレツィア・スノー。
【光妃】ミクスの側近で、戦闘では一切の武器を使わず、その細くてしなやかな脚からは想像もできないような足技だけで戦場を駆け抜けるという。
しかしその長い髪……相変わらず先端付近で結わいているけど、蹴る時邪魔にならないのかしら?
綺麗なアクアブルーだとは、思うけど。
「おールクレツィア、今日も美しいな!」
「ゲイル殿も相変わらずお上手で。どうぞこちらへ」
ルクレツィアの案内で神殿を進んでいく。
聖なる神殿としてアーレウスの象徴であり続けたこの場所は、代々最大戦力である第一師団の長である〝君主〟が所有権を持つ。
つまり今代では[ベルブリッツ]の本部でもある。
——しばらく進んでいき、最上階の〝戦神の間〟に辿り着いた。
会合はいつも、この場所で行われる。
「失礼致します。 第六師団の皆さんをお連れしました」
「随分遅かったじゃねぇかぁ! 偉くなったもんだなぁゲイル!」
第二師団[バーンブレイズ]総帥 【闇炎】エルザ・ハーティア。
根っからの戦闘狂で、まさに女版ゲイル。
そのゲイルが認める数少ない強者で、実力は本物。
実は結構いい歳のくせに、金髪縦ロールを両側から引っ提げているのが痛い気もするけど……そこまで身長も高くないしまぁまぁ童顔だから、これはこれでいいのかしら。
「まぁまぁエルザ、ちゃんと来てくれたんだからいいじゃないか。少しぐらい」
第三師団[アイシームーン]軍長、 【氷絶】ランバウル・ブルース。
このことなかれ主義の優男はいつもこんな感じで、曲者揃いのこの集団においてはかかせない調整者……いや、ミクスとエルザの犬と言った方が正しいかしら。
(大規模な戦闘でも大抵は支援行動だから、いまいち強さがわからないのよね……)
前髪のV字が好みじゃないけど……その青い髪は綺麗だし、色々と勿体ないわね。
「あぁ? 仕方ねぇだろう! ちょうどハルメニアの雑魚共が攻めてきやがったんだからよぉ!」
その雑魚に一万も兵を削られたのはどこの誰なの?
はぁ……また嫌なこと思い出しちゃったわ。
「うるさい! ちゃっちゃと始めるわよ。ルクレツィア」
(そして——)
第一師団[ベルブリッツ]君主、 【光妃】ミクス・ティア・クロード。
この国の頂点であり、唯我独尊、単騎無双……〝最強にして最悪〟の女。
エルザより小さな身体、さらに幼い顔に薄い蒼銀のサイドテール。
仮に彼女を知らない人間が居たとして、相対すれば、実際ただの幼女にしか見えないだろう。
……私も初見では、そうだった。
けど、一度その戦闘を目にすればわかる。
どうしてもこれが倒れているところ……誰かに敗けるなんてことは、想像できない。
だからこのアーレウスでは、誰も逆らわない。
「おーおーそうだなミクス様よぉ。じゃっ、始めようぜ~」
あのゲイルですら、こうして黙って席に着く。
——こうして、 【六神盾】各隊のトップ6名が着席し……それ以外の者はそれぞれの後ろに立ち、全員が円卓を囲む形になった。
(【光妃】ミクス……その白い軍帽を脱げば、普通の幼女に戻ってくれたりはしない……わよね——)
「では、S級会合を始めます。まず先月度の各管理区の魔獣出現率についてですが————」
いつも通りルクレツィアが進行し、それに基づいて各師団がデータ、戦績を発表していく。
面子はいつも通り……第一、第二、第三師団はトップ二名。
アイネとハクツルはお供を連れず、一人で参加。
ウチは今回で三回目の参加だけど——恐らくこの陣容はもう変わらないわね。
アイオーンは上二人の頭が足りないから、こうして私が来るハメになっているわけだけど……おかげで直接情報を把握出来ているし、そこは逆に感謝だわ。
「——以上のことから、依然としてハルメニアの侵攻は続いているものの、各師団の奮戦もあり、当面の間は問題ないかと思われます」
それももちろんあるけど、ハルメニアはサンテレシアとの国境も気にしないといけないもの……アーレウスみたいに一つの国境だけ抑えておけばいいわけじゃない。
しかしこちらに攻め込みきれない理由がそれだけじゃないことには……まぁ気づかないわよね。
「続きましてこちら、ハルメニア軍から送られてきた捕虜の名簿の最新版になります。現状では——」
んん~、捕虜ねぇ……。
サンテレシアが結構簡単に交渉に応じちゃうから、ハルメニアでは一種のビジネスになってしまっているんでしょうけど——。
手っ取り早いのはお金だけど、この人たちのことだから……まず出さないでしょうね。
あとは領土の割譲——は以ての外だし、残るは捕虜交換ぐらいだけど……どこの師団も捕虜を抱えてるって話は聞いたことないものね。
そもそもが殲滅主義のところばかりだし、抱えてるとしたら第三と第五ぐらいだと思うけど……ハクツルはそのまま面倒見るか、隠れて帰しているまであるし、ブルースのとこには【氷識】ロベルト・リーンがいる……。
ふふふっ、拷問やら人体実験やらしてたりしてね。
どちらにしろアーレウスと捕虜でビジネスするのは無理ね。
この国で生まれ、兵士になった以上、捕まったおバカさんたちが悪いということで、諦めるしかないわね。
「続きまして、ここ数ヶ月取り上げられてる輪廻教についてですが……一部の過激派は未だ武力行使を続けており、各地で被害が報告されています——」
(……きたわね)
ハクツルは——特に口を開く様子も無さそう。
この間のことをいちいちここで言うつもりは無さそうね。
(お願いだから、面倒事はやめて頂戴ね——)
「ああああもうっ! なんか面白い話はないの!? 退屈よ! 毎回毎回」
——ふふふっ。
やはり〝君主〟とはいえ、そういうところは見た目通り幼いわね。
でも残念だけど無駄……どうせ皆早く帰りたいもの、誰も何も——。
「——いいか? ミクス殿」
(——っ! ハクツル!)
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