【巫女日記1】アテナ~アルのばか~
アルのばか。
女心の『お』の字も知らない。
アルのばか。
私が一番じゃないと嫌!
アルのばか。
今くらい、いいよね————?
今日も大きな戦闘を見て、溜息ついて思うこと。
アーレウスもアズリアも結局のところ、さして大きく変わらない。
どこもかしこも戦争ばかり。一体何が楽しいの?
その先に何があるか知ってる? 真っ白。なんにもないんだよ?
別に綺麗事を言ってるんじゃない、本当に何にもなくなるの。
巡り巡って夜の丘、今日も今日とて何もない。
寝床もなければ夢もない。あるのは浮かぶ、お月様。
いつもこうして踊ってばかり。一体いつまで続けるの?
この後に何があるか知ってる? 真っ黒。なんにもないんでしょう?
別に夢を見ていたんじゃない、振り向いたらあなたが居たの。
奇跡ってあるんだね、こんなにも偶然に。
でもこれはきっと必然に、私とあなたを繋げたの。
傷つき疲れ果てたあなたの、髪をそっと掻き上げたら……やっぱり涙が止まらない。
私がわからないのね、こんなにも当然に。
私は絶対許さない、私とあなたを分かつもの。
必ずやり遂げてみせるから、お願いどこにも行かないで……やっぱり私は最低ね。
でも私を忘れた罰として。選ばなかった、罰として。
2話
——やっぱりアルの記憶は無くなってた。
〝黒穴〟を経由した、他のアズリア人と一緒ね。
そのおかげで結局、またアーレウスでも苦労したみたいだけど。もう大丈夫だよ。
私が居るから。もう心配しないで。
3話
昔のアルに戻ってる。出逢ったばかりの、ぶっきらぼう。
てゆーか男女比って何? もう、意味わかんない、ばか。
二人がいいっていうのは嬉しかったけど、 『変な声』には傷ついた。
あと、ずっと淋しかったの。今だけは甘えさせて、お願い。
4話
早く《無限魔力》が作用しないことを教えてあげたい。
その分私はちょっときつくなるけど……。
〝反逆の牙〟を使えるのは、今のところ私とあなただけ。
いつかその説明はする……けど今は、余計なことは考えずにそれに慣れてね。
ここで真実を知らせたら、あなたは受け取らないと思うから——。
5話
街が近くなってきたみたい、顔を隠さないと……とりあえずフードを深く被ろう。
えっ? 可愛い……? って、残念って何よ! ばか。
どうやらアルは、私がふてくされてると思ってるみたい……ふふっ。
せっかくだからそういうことにしとこ。そしたら優しく、してくれるかな?
6話
——えっ? アル、お酒飲むの? やめよ? ねっ?
絶対いいことないもん。でも……前に進もうとしてるんだよね、わかってる。
隊長さんの話には、特にめぼしい情報はなさそうね……って、指輪——。
……ダメ、今ここに居れない。アルの顔、見れない。やっぱり私、最低だ。
7話
アルったら、お酒のペース早すぎない? また酒乱が出ちゃう、私嫌だよ?
〝黒穴〟の原理はわからない……でも、 〝発生条件〟はわかってる。
ファミリアでは、難民を受け入れてくれているのね……本当は私がお礼を言わないといけないのに——。
アルに膝枕してあげるなんて、いつぶりかしら。ふふっ、明日は二日酔いね。
8話
ほら、案の定へろへろじゃない。だからほどほどにねって言ったのに。
小さい〝約束〟でも絶対守ろうとするところ、変わんないね。破ったの、一回だけだもんね。
ってスターク! やめてよ! 私とアルはそんなんじゃ……そんなんじゃ——。
眼鏡、似合ってるって言ってくれた。ふふっ、嬉しい。アルからもらった、大事なもの。
9話
今頃隊長さんと何してるのかしら? まさか……女絡みじゃないわよね?
——あーん! 気になって集中できない! 輪廻教の情報を集めなきゃいけないのに!
しかしこの街は本当にアズリア人が多いわね……それに皆笑顔。本当に感謝しなきゃ。
ってこの魔圧は……〝リベリオン〟!? アルに何かあったの!? 急がなきゃ!
10話
ここは……詰め所じゃない! まさかあの隊長……くそっ!
輪廻教の人間と話している時点でもっと警戒するべきだった! アル……アル……っ!
——って……えっ? も、模擬戦……? 私もしかして……きゃー!
ごめんなさいごめんなさい! でもこんなところで——アルも悪いもんばかぁ! とりあえず逃げよっ。
11話
アルは今日もチャンさんのところへ行くみたい。そうよね、楽しいよね。嬉しいよね。
でも、あまりここに長居するわけには——って、えっ? うそ、そんなに顔に出てた?
気を遣わせちゃったよね。でもこうなったらアルは聞かないし……うん、やっぱり早く出た方がいい。黒装束……眼鏡眼鏡っと。
皆さようなら。アルと仲良くしてくれてありがとう。どうか、何事もありませんように——。
12話
チャンさん……そうだよね。いきなり過ぎるよね。私のせいで、ごめんなさい。
アルも苦しいね。でも行こう、ここに居たら、きっともっと辛い思いするから。
『俺から話しかける』なんて——ふふっ。まるで子供の成長を見てるみたい。懐かしいな……私は、居たことはないけど。
なのに残念だったね。私目がいいの。向こうに見えるの、いつものアフロだよ。
なっちゃんのご飯は、本当に美味しい……なっ、何!? いきなり可愛いとか——ばか。
ほら! またスタークがちゃちゃ入れてきたじゃない! しかもなんかいつも以上に震えてるし……って、えっ——? うそ?
13話
やっぱりこうなった。もっと早く街を出るべきだった。
アル、私がなんて呼ばれてるか知ってる? 知らないよね。
どうしよう、私のせいで皆が……! 怖いよ、苦しいよ——ダメだよアル、反則だよ。今そんな風に抱き締められたら、我慢できなくなっちゃう。こんな顔、見せたくないのに——。
無理だよ、動けない。今の私が行ったところで——なっちゃん……おつうちゃん……。
そうだよね、私のせいだもん。私がなんとかしないと。どこ? 2人ともどこに居るの——!?
——良かった! 二人とも無事みたい! 二人ともえらいね、頑張ったね。……ごめんね。
14話
やっぱりきつい。アルと契約している状態では、すぐに魔力が枯渇しちゃう。
でも今の優先順位はなっちゃんだよね。アルは強いもん、私が出れなくても大丈夫だよね。
——やっぱりアルは強いね。そうやってチャンさんと並んでると、アズリアに居た時のこと思い出しちゃう。
やっぱりアルはそうでなくっちゃ。でも、だからこそよく考えて。
もう誰も、失いたくないよね。
15話
横にならせてもらったけど、全然寝れない。身体が熱い。ちょっと無理し過ぎたみたい。
——えっ? 報酬? それは行っておかないとね! せっかくだもの。それに旅するにもお金は必要だしね。
これが【地壁】……この人、相当強いわね。で、報酬の内容は——へっ!? 1000万!?
それがあればしばらくは安泰よ! お願いだから、向こうの気が変わらないウチに素直に受け取ってちょうだいね……。
16話
あっ、本当にお金がたくさん入ってる。アルは何か考え込んでるみたいだけど……って、えええ!? 『いらん』て何!? どういうこと!?
——ん? ちょ、こんな時に何ユリさんと見つめ合ってるのよばか!
あっ、チャンさんが欲しかったの? そっ、そうならそうと早く言ってよもう! ばかぁ。
こうなったらもうアルは退かないわね。団長さん、ご愁傷様。
17話
チャンさん……。アル、おめでとう。良かったね、良かったね。
えっ? 1000人? それはかなりの戦力に——! ってまぁそうよね、うん、大丈夫。アルのペースでいきましょう。
あっ、ちょっ、おつうちゃんったら。甘えたい年頃なのはわかるけど、私より先にくっつくのはやめ——って、なっちゃん? どうしたのかな~? あれぇ~? そういう感じじゃ、なかったよね?
どうしよう、そういうことなの? なんかざわざわしてきた……とりあえずこのアフロに当たっとこう。——ふふっ、凄くいいリアクションしてる。
なっちゃんに少し問い詰めたら、なんか言い合いになっちゃった。
これってもう、そういうことよね?
18話
なっちゃんがあまりにも真剣過ぎて、 『好きにすれば』って言っちゃった。どうしよう、マズいかな?
しかしオルカスタ……都に行くのはもう少し先になりそう。まぁ少しぐらいなら、大丈夫よね。
えっ、アル? なにその外套、かっこいいんですけど? 今日からそれ着るの? えっ、無理かも。
——って、はぁ? アルカ様ぁ~? 何を言ってるのこのツインテメイドは?
アルもさっさと断りなさい、変な希望は持たせちゃダメ。若いコはすぐ勘違いしちゃうんだか……ら? うそ? いいの?
——ばか。ばか。アルのばか。気づいたらこんなに遠くまで来ちゃったじゃない、しかも放っておき過ぎだし。
……ふんっ、いまさら声掛けてきたって知らない! ——えっ? 可愛い? てゆーかちょっとってなに?
どうせご機嫌取りなんでしょう? なっちゃんみたいに可愛くて、素直で、慕ってくれるコの方がいいんでしょう? わかってるもん、知ってるもん! 本当にそう思ってるならもっとはっきり言ってよ!
全部可愛い? 嘘……変な声って言ったもん、覚えてるもん。それはどう説明するの?
……えっ、好き? じゃあ私の勘違いだったってこと? なにそればかぁ! あんな言い方されたらそう思うに決まってるじゃん! ばか。
でも……許してあげる。私ももうちょっと素直にならないとね。
でもなっちゃんと同じやり方はしないよ。私は私の、やり方で——。
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