せわしないモズ
ある豊かで平和な森にとりわけ狩りが上手なモズがやってきた。
モズは森の虫を手当たり次第に狩っては縄張りの木に刺して早贄にする。
「目の前にいたら狩らずにはいられない性分でね。簡単に狩られる方が悪いのさ」
あまりに獲りすぎるので困った他の鳥たちが抗議するが、先に獲らないのが悪いとモズは言う。
「欲しいなら他の食べ物と交換してやるよ。僕が納得すればの話だけどね」
モズほど狩りが上手くない森の鳥たちは虫を食べるのを我慢するしかなかった。
モズが狩りすぎたために虫は地上に出なくなってしまった。
モズは自らの空腹を満たすために早贄を少しずつ食べるが、数が多すぎてほとんど減らなかった。
そのうち、余った早贄は腐ったり他の生き物に美味しい部分を盗られたりしてしまって、誰も見向きしなくなった。
森の鳥たちは虫に頼らない食生活に切り替えて、まだ熟していないが採りやすい木の実を埋めておいて冬に備えた。
冬になるとモズは空腹と寒さを凌ぐために暖かい地域へ避難した。
冬の間に森の鳥たちは集まって、食べ物に困らないで済む方法を考えていた。
春になってモズが森に帰ってくると、あれほどたくさんいた虫は見かけないようになっていた。
「この森は全然魅力的じゃないね。また楽な狩り場を探しに行かなきゃ」
簡単に狩れた虫はその森からすっかり姿を消してしまっていたのでモズは去っていった。
モズが去ってからしばらくすると、森の鳥たちが埋めておいた木の実のいくつかは掘り返されなかったので芽を出していた。
森の鳥たちは知らず知らずのうちに実のなる木の世話をしていたのだった。
芽吹いた新たな命は次の世代のために、また数年後の森の鳥たちのためにたくさんの実をつけることだろう。
そして虫も完全にいなくなったわけではなかった。
どの種類の虫もモズに狩られないよう木の中、土の中、草の中に身を潜めて暮らすようになっていた。
森の鳥たちはそれぞれ自分の得意な方法で、生きるのに必要な分だけ木の実と隠れている虫を取って食べるようにした。
慎ましく用心深いこの森に再びモズがやってきたとしても居場所はどこにもないだろう。