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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第76話 勇者は真価を発揮する

 異形が片腕に備えられた骨の刃を振り下ろす。

 刹那、斬撃が唸りを上げて射出された。

 突風を伴って迫ってくる。


 方向からして狙いはネネだった。

 僕は彼女の前に立ちはだかると、不可視の斬撃に合わせて剣を当てる。


 剣と斬撃が衝突した。

 吹き飛ばされそうになるも、踏ん張ることで耐える。

 僕は強烈な腕の痺れを知覚する。


(かなりの威力だな……)


 剣も刃こぼれしていた。

 満足に受け流せなかったのもあるが、相当な破壊力である。

 きっと人体すら容易に引き裂けるだろう。

 正面から防ぐのは悪手かもしれない。


 そのやり取りの間に、近衛部隊が一斉に黒衣を脱ぎ捨てた。

 六人はいずれも人体の一部が歪に変貌していた。

 腕や足の数が不自然に多かったり、皮膚の一部だけが毛や鱗に覆われている。

 無数の目が埋め込まれている者もいた。


 辛うじて分かる顔には見覚えがあった。

 彼らはやはり近衛部隊だ。

 どういう経緯かは不明だが、異形の集団となってしまったらしい。


 姿を披露した彼らは一気に襲いかかってくる。

 即座に僕は対抗した。

 叩き込まれる攻撃をいなしながら反撃する。


 短期決着が望ましいが、そう簡単にはいかない。

 六人は見事な連携を駆使し、僕の攻撃を避けながら攻め立ててくる。

 焦ることなく、堅実な動きを意識しているようだった。


 一方、呑気に佇む国王は解説する。


「禁術による人体改造だ。近衛部隊の者達に魔物の肉体を移植した」


 右方から骨の粒が発射された。

 胴体に穴の開いた異形の仕業だ。


 僕は斬撃で弾くも、一部が四肢や頭部を貫通した。

 損傷は少なく、すぐに再生できた。


「理性が薄れて容姿も醜くなったが、凄まじい力を獲得している。代償としては些細なものではないか」


 渾身の斬撃が、頭部の肥大化した異形に止められる。

 額を中心に鱗に覆われていた。

 おそらく竜種のものだろう。

 それが強力な防刃性能を発揮しているようだ。


 さらに血走った眼が熱線を放ってきた。

 僕は肩を焼かれながらも退避する。


「盗賊団を壊滅させたのも、能力検証が主な目的だった。結果は大成功と言えよう」


 半透明の触手が僕の膝に絡み付く。

 激痛と共に白煙が上がった。

 溶解液を分泌しているのだ。


 僕は剣で触手を切り払う。

 骨の露出した脚を確かめつつ、追撃の触手を躱した。


 エマとマリーはネネを保護して、防御魔術を固めている。

 異形の近衛部隊は、彼女達には攻撃しない。

 六人全員が僕に殺到している。


 誰が一番の脅威なのか理解しているのだ。

 だから真っ先に倒そうとしている。


(それでいい。僕だけを攻撃するんだ)


 異形と化した近衛部隊はかなりの強敵であった。

 現在の僕には、彼女達を守るだけの余裕がない。

 数の上で不利であり、能力的にも厄介極まりなかった。

 敵の戦力が分散すれば、対処のしようがない。


 しかし、僕だって怪物だ。

 それも彼らに劣らないほどの力を秘めている。

 かつて世界を救った勇者であると同時に、新たな惨劇を生み出す墓守なのだ。


(ここで負けるわけにはいかない)


 迫る六体の異形を前に、僕は強化魔術を発動する。

 全身が仄かに発光し始めた。

 続けて効力の一部を剣へと反映させる。


 その状態で地を蹴り、異形達へと接近した。

 彼らの見切れない速度で疾走しながら、翻って剣を振るう。


 剣の軌跡に従って上がる血飛沫。

 一瞬遅れて、六つの異形の首が刎ね飛ばされた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしも主人公の眼の前にいる「国王」が本物ならば、 追い詰められて禁術に手を出したパターンかな。 主人公は二百人以上の騎士を返り討ちにしているから、 この「国王」の国が小国ならば、国が…
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