第53話 勇者は一撃を見舞う
その後も僕は次々と武器を投擲していく。
いずれも盗賊団に命中し、そのたびに何人もの死者が出た。
断末魔が響き渡り、大地に鮮血が塗りたくられていく。
投擲だけで既に五十人は殺していた。
こちらの損害はないので、戦果としては上々だろう。
よくやった方ではないか。
接敵するまでに削るつもりだったが、ここまで上手くいくとは思わなかった。
ただし、安心はできない。
投擲による蹂躙はそろそろ通用しなくなる。
向こうも馬鹿ではない。
すぐに対策を打ってくるはずだ。
そう考えたのも束の間、盗賊団が左右に広がった陣形へと切り替わった。
なるべく仲間同士で重ならず、被害を抑える方向にしたようだ。
彼らは仲間の屍を踏み越えて突き進んでくる。
乱れかけた統率は復活していた。
後方で魔力の高まりを感じる。
詳しくは分からないが、おそらくは精神魔術辺りではないだろうか。
それによって盗賊団全体の動揺を誤魔化したのである。
戦場ではそう珍しくない光景だった。
盗賊団の中で魔術師が暗躍しているようだ。
手慣れた雰囲気があるので、彼らの中では常套手段なのだろう。
距離を詰めたことで、盗賊達も反撃を開始した。
号令に合わせて魔術と矢が飛んでくる。
雨のように降ってくるそれらを、僕は一本の武器で弾いていった。
後方にも魔術が炸裂している。
まだ結界に届く距離ではない。
たとえ届いたとしても、破壊されることはないだろう。
とても頑丈な結界なので心配する必要はない。
盗賊団に接近されようが、しばらくは時間稼ぎが可能だった。
もちろん、そのような展開は阻止するつもりである。
僕は片手で馬車を掴むと、力任せに引きずって走り出した。
盗賊達はかなり接近している。
もう投擲が間に合わない。
こちらからも突進し、陣形を乱すのが一番だろう。
変わらず矢と魔術が迫るも、片手に保持した剣で防御した。
いつもなら平然と受けるところだが、今回は相手がかなり多い。
実力者も紛れているので、なるべく負傷は避けるべきだろう。
やがて互いの表情がよく分かる距離まで至った。
盗賊達は血走った目をしている。
やはり魔術で冷静さを失わせているらしい。
そうでもしなければ動けないからだ。
(すぐに終わらせてやる)
僕は大地を強く蹴って跳躍した。
盗賊達を見下ろす位置に到達すると、すぐに落下が始まる。
掴んだままの馬車を掲げて、彼らに向かって叩き付けた。




