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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第21話 勇者は苦労を語る

 将来を考えながら進んでいると、後ろからマリーが話しかけてきた。


「どうしてそんなに力持ちなの? 魔術じゃないよね?」


「ああ、魔術とは別物だよ」


 そういえば説明したことがなかった。

 常人と変わらない見た目で馬車を軽々と曳いているので、魔術と思ってしまうのは当然だろう。


 巨人族の末裔などはそういった体質があるかもしれないが、僕の出自は至って平凡である。

 英雄らしさなんて何もない。

 本当にただの人間だった。


 僕の怪力は、傷付いた肉体が進化し続けた結果だ。

 再生するたびに強靭になっていくのである。


 魔王を倒した後、僕は単独で人間の領土へ戻った。

 その帰路で無数の魔族と戦闘を繰り返した。

 もはや自殺に近いような行動で、何度も致命傷を負うことになった。

 怪力はその際に習得した能力だ。

 本気を出せば、身の丈を超えるような魔物でも凌駕する。


 さらに再生能力と併用することで、強烈な反撃が可能だった。

 相手の攻撃をあえて受けて最適な間合いを確保し、回避や防御を考慮しない絶好の一撃を返せるのだ。

 僕が人間性を捨てた戦い方をするのは、このような実利的な部分も理由にあった。


 怪力に関する経緯をマリーに説明すると、彼女は何かを思案する。

 そして重ねて質問をしてきた。


「怪我をしても痛くないの?」


「もちろん痛いさ。でも慣れたんだ」


 本来なら死ぬほどの傷だ。

 当初は悶絶したものだが、何をどうやっても死なず。すぐに再生してしまった。

 そのうち諦めて、強烈な痛みで正気を保つようになった。

 現在も辛うじて理性を失わず、こうして勇者の名に縋り付けるのは、ある種の達観と開き直りによるものだ。

 知性すら捨てて真の怪物と成り果てるのは、さすがの僕でも躊躇いがあった。


「何でも治っちゃうってことは、お爺さんにもならないの?」


「……どうだろう。考えたことがなかったな」


 老いは再生しているのだろうか。

 再生能力を得てからたった三年なので実感はない。

 あと十年くらい経てば、はっきりとしそうだ。

 もし老化すらも再生能力で打ち消していた場合、僕はほぼ完全な不死身となる。

 今後の人生について、改めて考えた方がいいだろう。


 そこから場に沈黙が訪れた。

 マリーが急に無言になったためだ。

 索敵に集中しているといった雰囲気でもない。


 気になって振り返ると、彼女は真剣に悩んでいた。

 夜闇の中でも分かるほどの表情だ。

 やがてマリーは拳を握り締めると、僕に向けて力強く宣言する。


「一人になったら寂しいと思うから、その時は私も長生きできるように頑張る!」


「ははは、ありがとう。嬉しいよ」


 僕は笑って応じる。

 善意と優しさからの発言であった。

 マリーの気持ちはありがたいものの、僕はそれを望まない。

 彼女とエマには、平凡ながらも幸せな人生を歩んでほしかった。

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