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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第20話 勇者は将来を想像する

 昼食後、準備を進めた僕達は、日没と共に村を出発した。

 夜の森の中を、最低限ながら舗装された道を辿って進んでいく。


 僕は荷物を満載した馬車を曳く。

 荷物のほとんどが、村の不要な物品だ。

 この機会に街で売り払って資金にしようと思ったのである。

 置いておけば使う時が来るかもしれないが、いずれも無くて困るものではなかった。

 必要ならその時にまた買い直せばいい。

 今は資金を調達して、必要なものを買い揃える方が優先だろう。

 村中を回って掻き集めた金があるものの、そこまで余裕はない。


 積み上がった荷物の間では、仮眠を取るエマの姿があった。

 マリーはその隣で感知魔術を発動している。

 敵襲に備えて集中しているのだ。


 警戒は僕がやるので大丈夫と行ったのだが、本人がやると言ったので好きにさせている。

 役に立ちたいというのと、魔術の練習をしたいのだろう。

 なんとも熱心であった。


 出発にこのような時間帯を選んだのは、闇に紛れることができるからだった。

 それに加えてエマとマリーの訓練にもなる。

 この先の人生で、夜間に旅をすることもあるだろう。

 今のうちにその感覚や立ち回りを学んだ方がいい。

 そういった技能は必ず活かす場面が来る。


 我ながら随分とお節介を焼くようになってしまった。

 このような一面があったとは自分でも驚きである。

 どうしてこれだけ世話をしているのか、原因は分かっている。


 僕は自らの人生を深く後悔していた。

 守りたいものを守れず、救ったはずの世界も腐敗した。

 勇者という肩書きすら、理想とかけ離れた状態へと変貌した。

 その過程と結果に満足していなかった。


 それに対してエマとマリーは、まだ挽回できる段階にある。

 ここから輝かしい人生を歩むこともできるだろう。


 僕は、彼女達を後押ししたい。

 自分の代わりに幸せを掴んでほしいと考えていた。

 そうすれば、僕の努力も意味があったことになる。


 現状、僕は何もかもを無駄にしていた。

 その事実に気付きながら、尚も必死に足掻いているのだ。

 死園もその一環であった。


 僕はもう手遅れな領域に踏み込んでいる。

 エマとマリーを巻き込んでいることに、申し訳なさを感じていた。

 一人前の魔術師になり次第、彼女達を追い出すべきかもしれない。

 本人達には言えないものの、真面目に検討した方がいい。


(その時、僕は何をしているのだろうな……)


 馬車を曳きながら、僕はふと思う。

 失敗と絶望を辿り続けて現在に至ったが、ここからさらに道を間違え続けることになる。


 暫し思考を巡らせるも、曖昧な想像しかできない。

 明確な未来は思い浮かばなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >僕はもう手遅れな領域に踏み込んでいる。 ああ……やはり自覚はしてたのか……。 しかしながら、 >僕は自らの人生を深く後悔していた。 >守りたいものを守れず、救ったはずの世界も腐敗…
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