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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第15話 勇者は激闘を思い出す

 脳裏を過ぎるのは三年前の出来事の数々だ。

 世界が闇に呑まれる寸前で、同時に勇者としての絶頂期でもあった。


 僕達はたった六人で魔王討伐に赴いた。

 各国の軍隊が陽動となる間に、各地を巡って魔王の居場所を暴き、そして最終決戦へと向かった。

 非常に過酷な道のりで、心身が休まる暇など滅多になかった。

 いつどこで殺し合いが始まるか分からなかったのだ。

 よくも耐えられたものだと今になって思う。


 そのような状況の中、僕はいくつかの技能を仲間達から学んだ。

 少しでも皆の役に立ちたかったのだ。

 今回、村に施した結界術もその一つである。


 僕の魔術知識は偏っている。

 専門の魔術師に比べれば素人同然で、技能も同じように偏っていた。

 適性の都合上、一般的な術が使えないのだ。

 魔力はそれなりに保有しているものの、火球の一つも飛ばせない。

 詠唱も頻繁に失敗するため、戦闘ではとても使える精度ではなかった。


 そんな僕のために、仲間達はいくつかの術を開発してくれた。

 具体的には、適性に依存しない特殊な系統の術である。

 いずれも瘴気の蔓延する地域での生存術だ。


 経緯の都合上、用途が限定的なものばかりで、性能も本来の魔術に比べれば劣っている。

 それでも何もできないよりは良かった。

 実際、何度も命を救われているし、こうして現在も活用できている。

 皆には感謝しなくてはならない。


(それにしても、妙な勇者になってしまったな……)


 僕は自らを振り返って苦笑する。

 幼い頃に夢見た英雄とは随分と違う姿だった。

 厳密に言うと、不死身の肉体は魔王討伐後に得たし、魔族をも凌駕する怪力は再生能力の副産物だ。

 それらを抜きにしても、正統派の勇者ではないだろう。


 唯一、英雄らしい能力と言えば強化魔術くらいか。

 触れた武具や肉体の力を引き上げる術で、汎用性の高い魔術として挙げられる。

 基礎中の基礎とも言える術であった。


 僕の場合、この術の出力が異常に高かった。

 なぜか一般的な魔術師の数十倍の効果を発揮するのだ。

 その代わりに瞬間的にしか使えないものの、その一瞬に限っては誰にも負けない。


 この特性こそ、僕が勇者になれた所以であった。

 正真正銘の切り札で、魔王を筆頭に様々な強敵を打ち倒してきた。


 魔王討伐までは、一日に一度の使用が限界だった。

 しかし再生能力を得た現在では、連続で発動できる。

 肉体の崩壊を無視すれば持続させることも可能だ。

 純粋な戦闘能力だけで言えば、現在が全盛期であった。


 もっとも、今となっては無意味な能力に過ぎない。

 使う機会にも恵まれず、ずっと燻っている始末である。

 この術を再び発動する日は、果たして訪れるのか。

 死に物狂いで戦った当時を思い出して、僕は少し寂しくなった。

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