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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第12話 勇者は過去を振り返る

 勇者と言えば聞こえはいい。

 周りからそう呼ばれ始めた時、僕は誇らしい気分になった。

 大いなる使命を背負えることを嬉しく思ったものだ。


 人類の希望として、誰もが僕達を肯定する。

 そして悪を討って救いをもたらす。

 迷いなく正義を進めるのだと歓喜した。


 しかし実際の道のりは、地獄と形容するに足るものであった。

 各地で魔族と殺し合う日々は精神を蝕む。

 死ぬような目に何度も遭った。


 理想と乖離していたのだ。

 華々しい英雄譚とは程遠かった。

 それでも止めることはできない。

 勇者の肩書きが、もはや呪いに近かった。


 何より辛かったのが仲間の死である。

 僕を信じて付き従ってくれた彼らの命は、道半ばで散っていった。

 世界の命運を僕に託して死んでいった。


 彼らの犠牲の上に僕は生き残り、魔王討伐を為した。

 しかし、その後に続くのが現在の状況だ。

 冷静に振り返るほど、心が引き裂かれそうになる。


(一体、何をしているんだ……)


 僕は自嘲気味に笑う。

 こんな気分は久しぶりだった。

 傷付かないようにしてきたというのに、鈍った心が人間らしさを取り戻そうとしている。


 僕は大きくため息を洩らした。

 わざとらしく笑いながらエマに話しかける。


「情けないだろう? 勇者なんて名乗れたものじゃない」


『そんなことはない』


 エマはすぐさま否定する。

 いつになく鋭い眼差しだった。

 僕は言い返せずに怯む。


『あなたの功績は知っている』


 エマは毅然とした態度で指を動かした。

 喋ることができない彼女が、そうすることで言葉を伝えてくる。


『世界を救った』


「代わりに人間同士が争うようになった」


『それはあなたの責任ではない』


 エマが詰め寄ってくる。

 ぶつかりそうな距離だった。

 僕は無意識に後ずさろうとして、エマに腕を引っ張られた。

 彼女は、両目を涙で潤ませていた。


『過去の正義を否定しないで』


「……ははっ」


 僕は肩を落として笑う。

 ふらつきながらエマから離れると、疲れを隠さずに尋ねた。


「随分と庇ってくれるね。心境の変化でもあったのかい?」


『あなたを利用したいだけ。元気を出してくれないと困る』


 エマは憮然とした顔になって言う。

 直前の真剣さはどこへ行ってしまったのか。

 苦笑した僕は思わず非難する。


「はっきり言うじゃないか。もう少し励ましてくれよ」


『マリーに頼んで』


 近寄ってきたエマが淡々と反論する。

 僕は、肩をすくめるしかなかった。

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