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お話画廊シリーズ

5作目テワナ衣装の自画像

作者: はちす

精一杯優しく振舞おうとしている様子が指先から伝わってくる。


ベッドの上には、私とあなたしかいないから時間は十分にあるの。


囁けない代わりにゆっくりと目を閉じてそう伝えた。

私より色の黒いごつごつとした指先がぎこちなく動き、

白い花弁のような衣装を掴む。

あなたのことを知っているからこそ、

不似合いなその優しさが偽りと分かるからおかしかった。

音を立てないよう、クスクスと笑い、悪戯にあなたを見上げた。

下から見上げるあなたの顔は少しの焦燥を滲ませている。

愛おしいあなたの顔を優しく撫でてあげましょうかと手を伸ばすが、

私の腕が動かない事に再び気がついた。


私の腕にも、白いレースを施した衣装が拘束するように巻きつく。

それは美しく、私の好きな花や異国の模様が丁寧に編みこまれていて、

まるで私自身をそのまま編みこんだようなレースであった。

このままこの白く綺麗な衣装が

私の皮膚になり、私自身になってしまったらいいのに。

頭上から快楽からではない荒い吐息が響く。

あなたが、絶望の片鱗を感じ、悲壮を漂わせながら

尚も白い花弁のような衣装を優しく捲くる音を聞きながら、

私は待つことしか出来なかったことを思い出した。


視線は一向に会わないが、一枚、一枚と白い花弁を捲るあなたに身を委ねる。

いつまで続くか分からない行為に目を静かに閉じるとちくりと痛みを感じた。

不思議に思い、痛みのする場所に視線を移すと、

白い衣装がべったりと赤い色で染まり、

自身が束の間の夢想に耽っていた事を痛みと共に思い出した。

声にならない叫びを上げ、

あなたの瞳をやめてと見つめるも、その瞳に私は決して映らなかった。


羽毛のような白い花弁を捲って。


その先にあなたが見たいものが待っているから。


クスクスと笑いながらそう言い、あなたを何回抱きしめただろうか。


ここには、あなたと私しかいないの。


そう伝えるすべが私にはなく、

私は、私を象徴する白い衣装をただ、毟り取られ続けた。

あなたが、私を毟ってもその先に私以外の何もいないのに。

苦しみに顔を歪ませるあなたの瞳に、私は決して映らなかった。

せめて、手が動かせれば

苦しそうなあなたを優しく慰めてあげることができるのに。


あなたの瞳に映るあなた自身を私は見つめながら、

再び夢想に耽れるよう目を閉じた。



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