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聖なる森と月の乙女  作者: 小春日和
月が消えるとき迫り来る闇
61/62

更新が遅くなり申し訳ありません(汗)

待っていただいていた方、ありがとうございますm(_ _)m

善は急げとばかりに、私はアルフレッドの首に腕を回して膝の上で器用に半周し、アルフレッドと向き合う姿勢になった。


私のすっきりした顔を見たアルフレッドは、何故か盛大に口元を引き攣らせている。

いつもは、仕方ないなという風に困ったような顔をするのに、今日はアルフレッドの初めてが多い日らしい。


「どうしたの、アル?」


「…ねぇ、ティア。今、何か良からぬことを考えたね?」


「そんなことないわよ?

ただ、アルの運命の相手が私じゃないとしたら、私にとってもアルじゃない別の方が運命の相手なんだわと気付いたの。

それでね、アルが他の方を好きになったら、それはとてもとてもショックだけど、そしたらその後、私は私で私の運命の相手に出会えるのよね、きっと。

そう考えたら、アルの運命の相手に意地悪したいとか思わないと思うの。

そしてね、側室を迎えるってなった場合なんだけど、もし私より側室の方を好きになって私を疎ましく思うようになったら、正直に言ってほしいの。私の下に通ってなんて来ないのに、毎日アルの訪れを期待して、只管待つだけなんて考えただけで悲しくて涙が出てくるわ。

そうなったら、潔くアルの訪れを期待できないくらい離れて、離宮やその領地で新しい生活をした方がいいと思うのよ。

そうなった場合、私が運命の方と結ばれることはできないけれど、もしかしたら王宮を出てから一緒に過ごすくらいはできる…っんむ!?」


頭の中に次々と閃いてくる考えが殊更妙案な気がして、私が話す間アルフレッドが何も口を挟まないのをいいことに流れるように言葉を紡いでいた私の唇を、突然柔らかいものが塞いだ。

そして、目の前にあるはアルフレッドの長い睫毛。


「んん!?」


驚いて唇を塞がれたまま声を上げる私を、アルフレッドが薄く瞼を開いて見つめたかと思いきや、私の後頭部をアルフレッドの大きな手が包み込んで、キスが更に深くなる。


アルフレッドの肩を押して、何とか距離を作ろうと思っても、頭をしっかり押さえられてピクリとも動かせない。


いつもの優しい仕草とは真逆の強引さに、混乱と驚きでどうしていいか分からない私を、アルフレッドがふわりと抱き上げる。


「っ!」


いきなりのことに、思わずアルフレッドの首に手を回す私に、キスの合間にアルフレッドがふっと吐息を溢した。

こんなときにその色っぽさは反則な気がするのは気のせいではないはず。


そんな私を、アルフレッドは乱暴に、だけど痛くないようにドサリと柔らかい場所に下ろす。


「まさか私の相手を危惧するだけでなく、自分の相手も私以外にいるという発想になるとはね」


漸く離された唇にほっとしたのもつかの間、下りてきたのはアルフレッドの激情を隠した静かな声だった。


「も、もしもの話よ?」


うふふ、と取り繕うように笑ってみるけど、全く和まない雰囲気に冷や汗が伝う。


「もしも?もしもなんて、私たちの間にあるはずもない。

私のティアに対する思いがそんなに軽いものだと思われているとは、とても心外だよ。

言葉で言っても分かってもらえないなら、もう二度と馬鹿なことは考えないように、やっぱり体に教え込まないといけないかな?」


「ア、アル!?」


「…何?」


「そ、そういうのは結婚してからの方が…」


「そう思って我慢していたのに、ふざけた妄想で逃げられそうになったんだけど?

それだったら、我慢なんてせずに強引にでも囲いこんだ方がマシだよね」


「それは…」


「あぁ、そうだ、ティア。

これもちゃんと言っておかないとね。

君が私以外に心を許した瞬間、私はその者を間違いなく殺すよ?

そもそも、君が私以外に心を移すことを私がみすみす許すわけがないだろう?

もちろんそうなったら、ティアも私以外のことが考える余裕がないくらい毎日抱き潰すことになるだろうけど」


今みたいに、と囁くとまた乱暴に唇を塞がれる。

アルフレッドの言葉に更に顔中に熱が集まるのを感じる。

乱暴だけど優しく、どこか焦燥さえ感じさせるキス。


いつも私ばかり他の女性の存在にヤキモキしてたけど、今アルフレッドは存在もしていない相手に嫉妬をしてるんだと思うと、少し胸がスッとする気もする。


ふふっと笑う私を、アルフレッドが怪訝そうに見下ろす。


「こんなの時に、笑うなんて余裕だね?」


「そんなことないわ。愛されてるなぁって思ったら嬉しくて」


「本当に君は…」


アルフレッドはそれだけ呟くと、軽く息を吐いて私の隣にゴロリと寝転んだ。


「私が怖くないの?ティアを襲おうとしてたんだけど?」


「どうして怖がると思うの?アルは私の嫌がることは絶対にしないって知ってるもの。

それに…」


「その信頼も男としては複雑だけど。

うん、それに?」


少し脱力したように告げるアルフレッドが、私の言葉の続きを促す。


「………アルにだったら襲われてもいいわ」


そう言った刹那、隣から痛いくらいに抱き締められた。


「全くティアは…。

私の理性を試しているの?」


弱りきったように呟くアルフレッドにくすくすと笑いが漏れる。

そして、お返しとばかりに私もアルフレッドの背中に手を回して抱き締める。


「愛してるよ、私の唯一。

何があっても絶対に離さないから」


「私も、愛してるわ。

やっぱりね、アルフレッドの幸せが私の幸せなの」


結局行き着くところは変わらない。

幼い頃からずっと。

それは何があっても、誰が現れても。

変わらない、唯一の人。

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