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聖なる森と月の乙女  作者: 小春日和
聖なる森と月の乙女
28/62

皇太子殿下の側近と怒れる皇太子殿下①

たくさんのブックマークと評価、感想をありがとうございます(*^^*)

とても嬉しいです。

「ティアが…いない?」


現在、夜の22時を回ったところだ。

俺の隣で呟くアルフレッドの声は、聞いてるだけで背筋が凍りそうなほど、怜悧な響きをしている。

ティアリーゼが大臣たちの話を聞き、いつになく落ち込んでいるという報告は、その直後に直接ティアリーゼの侍女であるリリーから報告がされていた。

それが15時頃だっただろうか。

本人の望むように誰一人部屋に近づけなかったが、主の様子を心配したリリーが20時頃部屋を訪れたときには、部屋はもぬけの殻だったという。

着用していたドレスは乱雑に脱がれ、クローゼットから薬草を触るとき用のワンピースが1着なくなっていたという。

周囲に悟られぬよう王宮内を探し回って、やはりいないということで、今の報告になったようだ。


「王女か、王女に心酔して王女を皇太子妃にと望むバカな貴族が拐ったか?

それとも、その部屋の状況だと自ら出て行った可能性もあるな。」


ポツリと呟く俺に、アルフレッドの肩がピクリと動く。

ビリビリと威圧感を発するアルフレッドに報告に来ていたリリーが続きを話すべく口を開く。

ここで、気を失わないのは流石、アルフレッドが直々にティアリーゼのために選んだ精鋭というとろこだろう。

ティアリーゼは何も疑わず、公爵家が用意した侍女だと思っているようだが、実は違う。

彼女、リリーは、情報収集や相手を殺傷する能力に長けた、いわゆる暗部に身を置く存在である。


「皇太子宮の護衛が、新しく宮に入った者はいなかったが、一人侍女が出て行ったと申しておりました。護衛は、それが私であると思っていたようですが、私は退室した後、暗部が使う通路を用いて殿下に報告に上がったため、護衛には見られておりません。恐らく、ティアリーゼ様が侍女に扮して部屋を出られたのではないかと。」

「…やっぱり王女殿下がアルの月の乙女だったのね。アルが幸せなら、私はここを出て辺境伯のところへ行くわーなんて…って、うぉ!」


間一髪のところで投げられたナイフを避ける。

ビーンと深く壁にめり込むナイフを見て、背中を冷たい汗が流れる。

うんうん、ティアリーゼならあり得ると思えて焦ったんだよな。

別に俺の口を物理的に塞ごうなんて物騒なこと考えて投げたんじゃないよな?

俺、将来の義兄だぜ?


「冗談でもそんなこと口にするな。殺すぞ。」


冷徹な瞳で睨み据えられ、俺は大人しく口を閉じる。


「誰かに拐われたのではなく、自ら出て行っていた方が今は安心だ。出て行った理由は連れ戻してからたっぷり聞くとしよう。」


物騒なことを後半言いながら、アルフレッドはリリーへ鋭い視線を投げる。


「どちらにしても、今回はお前たちの落ち度だ。死ぬ気で探せ。そして、無事に私のもとへ返せ。くれぐれも王女やバカな貴族たちに勘づかれるようなヘマはするなよ。」


御意、と応えると、リリーは音もなく姿を消す。


「エマ、さっきの失言は忘れてやる。徹底的に王女を探れ。多少汚い手を使っても構わない。」


皇太子然とした振る舞いに、自然と頭を垂れる。


「全ては我が主と妹のために。」


ーーーーー


ダンっと力の限り机を叩く。

すぐに探しに行けない自分の身が煩わしい。

しかし、ここで私が直接動けば王女に悟られ、逆にティアリーゼの身を危険に晒すことになる。


気持ちを伝え合って安心しきっていた。

振り返れば、ここのところ忙しさにかまけて、ティアリーゼと過ごす時間が全くなかった。

会いに行くのはティアリーゼが寝静まった後。

寝顔を見て、近くにティアリーゼがいることに満足していた。

朝はすぐに執務や奇病のことに取りかかっていたため、ティアリーゼにしてみれば、放っとかれたと思っても仕方がない状況だった。

寂しい思いをさせてしまったんだろうか。

ティアリーゼと毎日言葉を交わしていれば、こんなことにはならなかったのではないか。

考えれば考えるほど、後悔や不安が胸に押し寄せて来る。


「どこにいる、ティア!」


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