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聖なる森と月の乙女  作者: 小春日和
聖なる森と月の乙女
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公爵令嬢と作戦会議③

「ルナマリア嬢の推測が正しいのであれば、その占い師は精神に作用する術を使うということだな?」


しばらく考え込んでいたアルフレッドが、厳しい顔のままルナマリア様に確認する。


「恐らくは。占い師といえば聞こえはいいですが、大抵の者は呪いも得意とします。あの王女の占い師であるゲイルも呪術に秀でているため、王女に重宝されているのではないかと。

私も断定できる確証は持ち合わせていないのですが、我が国で王女の振る舞いに苦言を呈した重鎮が、あくる日突然自死しました。何かに怯えるような死に顔だったと聞きます。それからです、王女がゲイルを側に置くようになったのは。

私は、ゲイルが王女の信頼を得るために、見せしめとして呪術でその重鎮を殺したのではないかと考えています。」


とてもヘビーな内容に、思わずごくりと唾を飲み込んだ。

もうそれは、我が儘で癇癪持ちというレベルを軽く超えているのでは?

そして、そんな危険な人物に目をつけられているということに、今更ながら恐ろしさを感じる。

いやいや、でも、私が死んだらそれこそ王女の思うツボ。

アルフレッドの幸せを守るためにも、殺されるわけにはいかないのだ。

ふん!と鼻息荒く決意を固める私を不安そうに見ながら、お兄様が恐る恐るルナマリア様に切り出した。


「えぇっと、つまり、占い師は呪術を使って人を害することが可能だけど、リーゼはその呪術の発動を感じることができるってことだよな?それはつまり、呪術を受けるのを未然に回避できる可能性があるってことで良いのか?」


お兄様!なんて冴えてるの!

そうね、目に見えない呪術を感知できるなら、対抗できるはずよね!


「そう考えていいと思います。

それにもう一つ気になる点が。

あの占い師を引き連れた王女がこちらに入国した後、何も皇太子殿下に術を仕掛けていないとは考えにくい。ですが、皇太子殿下は気が触れるでもなく、王女に傾倒するわけでもない。

皇太子殿下ご本人が、退魔の力を授かっているか、誰かにその恩恵を授けられているかのどちらかではないでしょうか。何か心当たりはありますか?」


すでに対抗しているのではという、ルナマリア様の言葉に驚くことしかできない。

その時、お兄様がはっとしたように私を見つめた。


「リーゼ、お前、あのポプリに魔除けの効果のある薬草を入れたと言っていたな。そして、月の光を浴びさせて、月の加護も得ていると。」

「え、えぇ。」

「そして、アルフレッドはそれを肌身離さず持っている。」


お兄様が確認するようにアルフレッドを見つめ、アルフレッドはそれにあぁ、と頷き返した。

思わぬところで、アルフレッドが私の作ったポプリを常に持ち歩いていることを知り、胸が温かくなる。

優しいアルフレッドだから、無下には扱わないだろうとは思っていたが、本当に大事にしてくれているんだということが分かると、とても嬉しいものだ。


「そして、極めつけのラフィールを使った疲労回復薬と言ったところか。」


本当、怖いくらいの執念だよなぁ、とお兄様が感心したように私を見つめる。


「それは、私褒められていますの?それとも貶されていますの?」


半目で睨むようにお兄様を見つめると、慌てたように誉めてるんだよ!と付け加える。


そのやり取りにルナマリア様はクスクスと笑う。


「ラフィールを使った疲労回復薬ですか。それはもしかすると、身体異常だけではなく精神異常も回復してくれているのかもしれないですね。個人的にとても興味があります。」


そういうルナマリア様の言葉に、婚約者のことを思っているのだと察せられる。


「そして恐らく、それはティアリーゼ様が作ったものだからこその効果でしょう。」

「え…?それは、どうしてですの?」


思わずルナマリア様に問いかける。

調合方法さえ習得してしまえば、誰が作っても同じではないのか。


「先程、古には悪いものを感知する能力がある者がいたらしいというお話をしましたね?その者の能力には、まだ続きがあるのです。

それは、癒しと退魔の力です。」


私は、ルナマリア様の想像を超えた話に、ただただポカンと驚くしかなかった。


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