怪獣になって街を壊すVRMMOのβテストに参加してみた
「ほう、面白そうだな。やってみるか」
俺、都村映司(つむらえいじ)。ゲームが趣味なフツメンだ。
趣味と言っても、金と時間を惜しみなくつぎ込むわけじゃない。当然、腕前もそれなり。いわゆるヌルゲーマーってやつだ。
そんな俺だが、少し前、思い切ってVRMMO用の機材一式をそろえちまった。
理由は単純。ツレの家で試しにやったら超面白かったからだ。
その場で迷わずポチったね。
でも、想像以上に飽きるのが速かった。
だってさ、みんなマジで時間かけてるんだもん。もちろん、ツレもそう。
そんなの、付いていけるわけないじゃん。
あっさり引退したよ。
でも、せっかく買った機材は使いたい。俺、貧乏性なのかな?
それで、俺みたいにパッとやってパッと止める人間でもできそうなゲームを探してたんだ。
そしたら見つけたよ。
『怪獣になろう』ってタイトル。
怪獣になって街を壊す。それだけのゲーム。今はβテスト中だから無料で遊べる。
これはやってみるっきゃないっしょ。
クライアントを落として仮垢を作ってヘッドセットを着けて、さあ、ゲーム開始だ。
まずはキャラ設定から。
最初に怪獣のタイプを決めるのか。
えーっと、地底怪獣、宇宙怪獣、冷凍怪獣、火炎怪獣から選ぶのか。種類が少ないのは、無料βだからかな?
この中だと、宇宙怪獣だな。
次は能力を付けるのか。
えーと、宇宙怪獣は飛行が固定能力か。確かに、飛べなきゃ地球に来れないもんな。
選べるのは、角からレーザー、口から破壊光線のどちらかか。
これは破壊光線だな。転んで運悪く角が折れたら、武器がなくなっちゃうもんな。
次は…弱点!?
なんでそんなものがあるんだ? 少しだけど、ク○ゲー臭がしてきたぞ。
まあいい。とりあえず選ぶか。
えーっと、角、しっぽ、翼か。これ、レーザー選んでたら二択だったな…。
これは角だな。一番小さいから、やられにくいだろう。
最後は…PvPの可否か。
なるほど、プレイヤー同士で大怪獣バトルができるのか。それで弱点が…。うん、納得した。
これはOKだな。
よし、設定完了。
ゲームスタート。
派手に街を壊すぞ!
ん?
もうゲーム始まってるよね?
俺、真っ暗で狭い場所に押し込められてるんですけど…?
…。
ハッ! まさか…?
俺は腕を動かしてみた。
腕が重い。動きが明らかに遅い。身長40メートル体重2万トンだと、こんなにスローモーなのか。
続けて足、尻尾と動かしてみる。ものすごく新鮮な感覚だ。
機材を買ってよかったと、購入日ぶりに思った。
感覚の違いは把握した。
それじゃ、ここから脱出だ。
俺は拳を握り、勢い良く前に突き出す。
バリッ。
何かが割れる音がして、そこから光が差し込んだ。
うわっ! やっぱりだよ。
このゲーム、卵を割るところから始まるのかよ…。
俺は卵から出て、周りを見る。
……。
…ここ、宇宙じゃん。
しかも、地球がどこにあるのか、全然サッパリわからない件。
そりゃあさ、地球で生まれる宇宙怪獣はいないと思うよ。でもさ、そんなところにこだわらなくてもいいじゃん。
俺はログアウトし、攻略フォーラムを見た。
……。
…これ、アカンやろ…。
各タイプのスタート位置
地底怪獣:地下3千メートルで場所はランダム。海の下だと悲惨。
宇宙怪獣:上空2万メートル。地球が見えなくなるバグ多発中。回避推奨。
冷凍怪獣:氷山内部。稀に凍死の恐れあり。全力で脱出すること。
火炎怪獣:火山地帯。溶岩でダメージを受けるので注意すること。
これさぁ、バグが無くても、街に着くまでメチャメチャ大変だよね?
建物を壊しながらの大怪獣バトルなんて、まずできないよね?
…いや、廃人と呼ばれる人たちなら、やっちゃうんだろうなぁ…。
俺は『怪獣になろう』を見切り、他のゲームを探すことにした…。
思いついたので書いてみた。少し反省している。